入学
一週間それも休みのものというのは瞬く間に過ぎ行くものだ。1日はアリシアの買い物に付き合って街に繰り出したり、他の日はクソジジイに模擬戦の相手をさせられたり大変な日もあったが大半は寝て過ごしてしまったそんなこんなで擬装の装着も終わり、荷物を整えて入学の日を迎えたのだった。
「アリシア、アカデミーってどうやって行くんだ?」
アリシアをレリックの肩に乗せやって来たのは基地の防壁の直ぐそばにある平原だ。
「えっとねこのペンで囲った範囲の中にある物がアカデミーに転送されるみたい」
そう言って彼女は招待状からペンを取り出す。
俺はレリックから飛び降りペンを受け取るとペンを床に突きながら愛機の周りをぐるりと一周した。描いた円に俺が入ると円が光り出した。すると突然声が響く。
「登録名アリシア・ヴァーグ、クロウを確認これより転送シークエンスに入ります。関係ない方は円より離れてください。また両名は円から出ないでください」
「これでいいのか?」
「うん!忘れ物はないね?」
「大丈夫だ」
俺達はまばゆい光に包まれ巨大な施設の内部に転送された。
周りには数十人の同世代の男女がおりレリックと一緒なのはその内の2割ほどであった。そして周りを見渡している間にも続々と光に包まれ新入生達が到着していた。新入生の数が200人に達した所で静粛にと大きな声が響く。
「諸君!今年の新入生の教頭を務める!ゴライアスである!是非愛を込めてゴリ先生と呼んでくれ!」
前方のステージの中央に巨漢が立っていた。その両脇には老人と女性が控えている。
「そして私の隣にいるオバ、ゲフン!お姉さんがパイロット科主任のキャサリン先生!」
隣の女性はゴリ先生を睨みながら挨拶した。
「ご紹介にあずかりました。キャサリンでございます。パイロット科の皆様を戦場で生き残れる様、精一杯指導させていただきます。」
「そしてこちらのご老体がメカニック科主任!エイブラハム先生である!」
老人は杖をつきながら一歩前へ出ると拡声器を受け取った。
「フォッフォ皆よろしく。エイブラハムじゃ。中にはレリックに関わるのが初めてで不安な者も居ろう、じゃが諸君には才がある。しっかり指導を受ければ一流になれる安心せい。」
隣のアリシアが小声で話しかけてくる。
「キャーエイブラハム先生よ!30年前の彼の論文!レリックの駆動と磁気の影響の軽減!知らないの?歴史に残る名著よ!」
彼女はかなり興奮している。こういう時はそっとしておくのが正解だ。俺は女性の先生を観察する。彼女は間違いない。こっち側の人間だ。“これまでに戦場で数百人の敵を屠っている”彼女と不意に目が合う。どうやら同族の気配を感じたのだろう。目を合わせて微笑んでいる。アカデミーなんてつまらない物だと思っていたがどうやら楽しくなりそうだ。
人物解説・キャサリン
アカデミーの教師。5年前の連邦と共和国との間に起こったカマウ峠の戦役に於いて公式には記録されていないが280機撃墜のスコアを残す。その腕前が認められアカデミー教師に招聘された。