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温泉回ですね 

 かっぽーん。


 湯気がほわほわと立ち昇り夜空へ消えていく。


 頭に乗せたタオルが少しヒヤリと冷たくなってきているが体は芯から温まっている。周囲にはプカプカと浮かぶまあるいお乳がひとつふたつみっつ……。おぅっ、鼻血が……。


 でっかいおっぱいが三人前。最高の景色のだ。蓮ちゃんにきららちゃんと鈴ちゃん。カメ子と忍術婆さんは……まぁ、うん。


 今までなぜこのような最高の作戦を思いつかなかったのかと過去の自分に問いかけたい。わたしの性別は女属性だ、あとは分かるね?


 そう! おっぱいを見たければ一緒にお風呂に入ればいいじゃない!!


 そうして敢行した温泉旅行二泊三日。たっぷりとお風呂に入りまくって好きなだけ天国に入れるのだ。


 ふんふんふん、蓮ちゃんはパッツパツにハリがあって鳩胸タイプだな、上を向いておりお湯に浮かんでいる。きららちゃんはロケットの様に突き出しており破壊力抜群だ……。あれは世の男共を魅了してやまない魔乳と言う奴なのかッ!


 鈴ちゃんは柔らかさで母性を感じさせる魅力がある、包まれるような感覚はそのまま昇天させられる……! と言うか抱き締められておっぱいを押し当てられているのでそのまま寝てしまいそうだ。これが母性ッ!?


 カメ子は慎ましやかで安心する。それでもわたしよりあるなんて……。ッチ!


 頭をグリグリと動かして更なる境地へと至る。背後から艶やかな声が聞こえるがわたしは何も悪くない。最近ちょっと頑張り過ぎたので自分へのご褒美だ。ぐへへへ。


 鼻に血が溜まって来たのでこっそりと沈静魔術を掛ける。これ、毛細血管を指定したりして少し難しいんだよな。


「えるしぃちゃんのぼせたんかいな? ほら、こっちに来てもええんやで?」


「何言ってるんですか? 私の方が居心地良いですよ! 蓮ちゃんより大きいので」


 フラフラと移動しそうになるも鈴ちゃんの足がわたしの腰に巻き付いているので移動することが出来ない……クッ。これが、贅沢な選択というやつかッ!


「あらあら、お嬢さんを取り合いなんて初々しいわねぇ」


「はわぁ……でっかいですねぇ。――えるしぃちゃんよりおっきいからまだ大丈夫です!」


 鈴ちゃんは会話に加わらないがギッチギチに足でホールドされている。これがだいしゅきホールドと言う奴か……。カメ子も忍術婆ものほほんとしているなぁ。だが、わたしと乳比べをするなんて貴様、命が惜しくないようだな。


 ぷかぷかと浮かべている日本酒を手に取ると鈴ちゃんに奪い取られてお酌をしてくれる。お猪口に溢れそうになるのを口で塞ぎちびちびと飲み干していく。


 喉を通る酒精が胃に流れて行くと身体がぽかぽかになっていく。本当は温泉でお酒を飲むのはあまり身体に良くないらしいのだがたまにはいいだろう。


「んう~。美味しいねぇ~。鈴ちゃんも飲む?」


「飲むアル。入れてくれるネ……?」


 おうふ。勘違いしそうになるがグッと堪えて渡したお猪口にトクトクと注いでいく。わたしと違って日本酒を飲む仕草が様になっているな。柔らかな唇がお猪口で変形するさまはどこか背徳的だ。


 酒精を吐く息と口元の黒子が色気を放ち、伏せがちなまつ毛がつやつやしている。色気が一番多い選手権では鈴ちゃんがダントツで一位だな。


 おっとっと。


 お酌をするために離れている隙に蓮ちゃんに抱き締められてしまった。この中では一番背が高いので小さなわたしの身長ではすっぽりと腕の中におさまってしまう。


「えるしぃちゃんはウチのもんや。ほら、腕の中にぴったしおさまるやろ? つまり正妻や」


「なにが正妻アル。妾で十分ネ」


「私は側室でいいですよ? 程々に愛してくれて長く一緒に居る方が家庭円満の秘訣だと聞いたことがありますし」


 あの、握手会の一件で蓮ちゃんのわたしに対する依存度が急激に上昇した気がする。きららちゃんと鈴ちゃんは相変わらずだけどどこまで本当なのかわかんないや。


 う~ん。蓮ちゃんの感触は母性的と言うよりも、こう、脳髄に甘い蜜を感じるようで官能的だな。かつて存在したオスを呼び覚ますというかなんというか――ヤバイな。スルリと蓮ちゃんの胸から抜け出して後頭部をきららちゃんへ押し付けて行く。


「あ、何逃げとんねん……そんなウチが嫌なんか?」


「あーあ、蓮ちゃん重たい女みたいな発言ですね。私みたいに噛めば噛むほど深みのある女が丁度いいんですよ?」


 蓮ちゃんのセリフの知らんぷりする。きっとこれは答えても答えなくても面倒くさい奴だって増刊ダンディズムで言っていたもん。(四百五十円税込み)


 むむっ! きららちゃんのロケットが大きすぎで逆に居心地が悪いぞ……。後頭部がトランポリンの様に跳ね返ってしまう。


 再び鈴ちゃんの胸元に原点回帰する。うん。一番居心地がいいぞ。


 口から魂が出るほどの間抜けな声を出していたのだろう、クスクスと皆に笑われてしまった。わたしの銀髪が見える長い耳がふんにゃりと下向きになっている。


 やっぱり殺伐とした雰囲気よりもこうやってみんなでまったりしているのが大好きだな。物騒な連中はみんな見習うと良いぞ?


 ごくろうさまですね大社長? とふざけながら蓮ちゃんときららちゃんがわたしの両足を揉んでくれている。――ふにゃぁ……。眠たくなってきた。


 足を揉む際に持ち上げられてふにょりと柔らかな感触が足の指先に伝わって来る。まさにここは桃源郷。わたしの幸せはここに――


「あ、えるしぃちゃん寝てもうたやん。抱っこして連れて行ったるか」


「いや、わたしが運ぶアル。正妻の仕事ネ」


「まだ、言ってるんですか。早くしないとのぼせちゃって危ないですよ?」


「む、まあええわ。今回は譲ったる」


「ふふふ。勝ったアル」


「喧嘩しない。ほら、早く早く」


 薄れゆく意識の中顔面がなにか柔らかい物で塞がれる。ちょっと息が苦しいけどなんか――いいな。







 ふと目を覚ますと真っ暗な部屋の中にいた。んむ? 甘い香りがする。周囲を見渡すと右には鈴ちゃん左には蓮ちゃん、腰元にはきららちゃんが抱き着いてきている。


「――ッ! (ヤバイ。甘い匂いで頭がクラクラしちゃう)」  


 温泉では日本酒を飲んだ勢いでベタベタしていたが、酒精が冷めるととっても緊張する。


 急に耳元に生暖かくてねっとりした感触が……。


「(目を覚ましたの? 悪い子ね。でもこうしてそばに入られるのは幸せね)」


 鈴ちゃんが右側からわたしの耳たぶをハムハムしながら喋りかけてくる。吐息がくすぐったいものの甘噛みの気持ち良さの方に軍配が上がる。チロリと舌を出してくるあたり確信犯であろう。あと、標準語になっているのは態となのだろうか?


 ちょっと心臓が限界に来そうなのでそっと左の蓮ちゃんの方を向いた。しかし――


 蓮ちゃんにキスをされてしまった。どこか怒ったような拗ねたような顔をしており、再びわたしの唇に向けて突くようなバードキスをした。


 一瞬だが暖かくて柔らかな感触は忘れられないだろう。こう見えて三百三十五年も誰ともキスをしたことないのだから。


 今度は鈴ちゃんに顔を掴まれると無理やり舌を捻じ込んでくるようなキスをかまされた。――あばばばばばば。


 咥内を蹂躙され意識が朦朧としてくる。


「もう、二人してまた喧嘩してるんですか? せっかく、えるしぃちゃんの匂いを堪能していたのに暴れちゃってゆっくりできないじゃないですか?」


 きららちゃんの言葉で現実に引き戻される。この部屋にはこの四人だけであり、カメ子や忍術婆からは『ごゆっくり』とだけ言われこの部屋へ放り込まれた。


 もちろん男共は別室だ。


「せっかく仲良く寝とったのに鈴がえるしぃちゃんといちゃついとるんやで? そら、奪い取らな思うやん?」


「何言ってるの? えるしぃちゃんの初めてのキスを奪ったメス猫め。死にさらせッ!!」


「え、ちょ! えるしぃちゃん始めてやったん? ウチも……多分初めてやで? つか、鈴、標準語なってるで?」


 眼を逸らして誤魔化そう。多分生まれのおっかさんとのスキンシップ以外は……ないな。悲しい事に。


「嘘つきの顔をしているな。恐らく女子高で野獣の様に女を貪り食ったのだろう。この妾め」


「なんでや。そないなことあるわけないやん――いつものように語尾に『アル』とか『ヨ』をつけるんや。それ、えるしぃちゃんに受け良くなかったからな。そのまま嫌われてな」


「! え、えるしぃちゃん!? 本当に? この語尾がアニメでは人気だと言っていたのですが……」


「…………きららちゃんあっちで一緒に寝よ?」


「ふわぁっ! 側室が大勝利! うんうん、えるしぃちゃん一緒に寝ましょうね~ほ~らおいで~」


「うん……」


 よっこいしょと持ち上げられ部屋のスミの布団へと二人で包まった。ふかふかのお胸様に包まれて丁度いい抱き枕加減だ。甘いにミルクの様な香りが幼児退行させて来る。


 さすがに騒いでいたらわたしにそっぽ向かれると学習したのか、そっと背中にくっついてきた。先程目を覚ました時の態勢で場所を入れ替わっただけの状態だ。


 異世界からここに帰還する目的は不純なものであったが、こうして三人に囲まれて抱き締められるのはなんか――幸せだな。こういう関係がずっと、ずっと続くと良いな。







 えるしぃちゃんが目を覚ます頃には他のみんなも目を覚めしていた。今日は山の方へ有名な神社へお参りに行って色々と散歩をする予定だ。もう、紅葉の季節は過ぎているので肌寒いが帰って来て再び温泉に入ればいいやと思っている。


「ふわぁ~。なんか気持ちよく眠れたなぁ」


「おはようさん朝風呂でも入るか?」


「う~ん。先にごはんがたべたいなぁ……。朝食いつだろ?」


 どうやら旅館の従業員にお願いをしたら朝食を運び込んでくれるとのこと。朝食は地元の魚を焼いたものや特産品の品物が彩られて出てきた。じゅるりと涎を垂らしたエルフは殿様の様に鈴ちゃんの膝に乗せられて食べさせられる。


 三人がじゃんけんをして鈴が勝利をもぎ取ったようだ。今回の温泉旅行では鈴の勝利確率が二人よりも高いようだ。


 ちやほやされているエルフはぶっちゃけこの三人の誰でも幸せなのでいつでもウェルカムなのだ。







 石段を登り地元で有名な神社へ参拝へ訪れる。この地球は不思議な事で溢れている。この神社に奉られている神は様々な逸話を残しているようだ。


 家の食べ物が減ったと思えば身体が軽くなった。家の家具が無くなったと思ったら玄関にどんぐりが置いてあった。家族がいなくなったと思ったら帰って来た、だけど年齢が合わなくなったなど。 


 随分手癖が悪い神様だなと思う。対価を支払っているのならばいいが、人を攫ったのは寂しかったからなのか?


 境内の中に足を踏み入れた瞬間膜に触れたような感触を感じた。訪れた四人とも同じように感じたようで周囲をキョロキョロと見回す。


『おうおうおうおう! 誰に断って儂の縄張りにはいっちょる!? ああーん?』


 神社の本殿の上には数十メートルもの巨大な狐が乗っていた。その巨体の重量を支えるにはいささか建物の耐久性が足りていないように見えるが……。


「我の後ろに下がれ。――どうやら小物のようじゃのう。これでは足しにもならんか」


 すぐさま闘神と化したえるしぃちゃんの指示に他の三人は素直に従う。前回の様に守られて彼女に怪我を負われるなんてまっぴらごめんだと意見の合う女傑三人。


 腕を組みながらも視界の中に巨大な狐を入れていない。どこか違う場所を睨みつけているようだが……。


『ッ!? 儂はおっきいんじゃぞ!? 怖いんだぞ!? ぶ、ぶっ飛ばされたくないならいますぐ帰れ!』


 じゅるり。舌なめずりを闘神がすると、ビクリと震え始める巨大な狐。何だか狐が小物に見えてくる女傑達。


「あ゛?」


『ひぅっ! ――ご、ごごごご』


「ハッキリ喋れ」


『は、はひッ!』


 見上げる程巨大な狐は本殿の上で器用に縮こまってる。もう格付けは済んでいるようだ。その怯える姿は小物中の小物にしか見えず、背後の三人は少しだけ安心する。


 巨大な姿は段々と萎んでいくと石畳の上には小さな子狐が額をゴリゴリと擦り付けていた。


『ご、ごめんなさい! 殺さないで!! と、とっても強い力を感じたから威嚇しちゃたの! 本当だよ!? ――ぴぃっ、食べないで~!』


 ビクビク震えるその姿は庇護欲を誘う。くりくりしたおめめにモコモコの尻尾。猫ちゃん犬ちゃん派閥の闘争に狐ちゃんが乱入するほどの可愛さを秘めていた。


 それを――蹴り飛ばし、神社の鳥居をブチ折った。


「こやつ、こんな成りして人間なぞ軽く数万人殺せる大妖怪じゃぞ? うちの社員はもちろん分かっておったな? まさか見た目が可愛いからと侮る様なアホゥはおらんよな?」


 三人娘は闘神と目を合わせない。内心可愛いから持って帰ってペットにしたいと思っていたからだ。


「微弱に神威を纏っておることから神として祀られ、生き永らえた、大妖怪以上神未満……といったところかのう――死んだふりするならば本当に殺してしまえばいいのかの?」


 シュバババ。と闘神の足を舐め始める典型的な小物の行動を取り始めた。先程のぶりっ子な態度はまさに化けの皮を被っていたようだ。


 その舐めてくる頭を踵でグリグリと踏みつけながら宣言する。


「隷属せよ。さすれば生きる機会を与えよう。栄誉であろう? 木っ端であろうとも我の下僕となれるのだから」


 可愛い子狐を踵で地面に擦り付ける絵面はとっても鬼畜にしか見えない。


 それでも小物狐は生き残ることに必死で悪魔の契約に頷いてしまう。


「ふむ。了承とな――汝、永劫の時を我に傅き、平伏し、隷属せよ――≪隷属契約≫」


 闘神の掌から紫色の鎖が飛び出し子狐の心臓を貫いた。四肢にも突き刺さり最後には頭蓋を貫いた。グッと掌をにぎると鎖は子狐の中に取り込まれていき狐の毛先が少しだけ紫の色に変色していた。


「慈愛の術式はほんに凶悪じゃのう。狐よ、貴様は多くの制約が課せられた。もし禁を破れば……ああ、恐ろしいのう。本能で理解しておるようじゃし説明は省くかの」


『けーん! ――か、完全に支配下に置かれてしまったの……。ああ、大好きな食っちゃ寝生活が終わってしまう……』


 この駄狐神社のお供え物を数百年も食ってばかりの堕落した生活を送っていたようだ。隷属の契約は駄狐がどこにいようとも闘神の場所へ引きずり出されてしまう。


 転移とは違いモノとして扱われる。肉を持たない霊体なのでコスパが最高なのだ。


「我が必要な時には呼び出す。それと変化もできるのであろう? ならば我が事務所の雑用係へ任命しよう。――何、不満そうな顔をしとるんじゃ? いっぺん死ぬか?」


『全身全霊を持って拝命いたしますぅぅぅぅ!!』


「我の不利益にならない限り事務所の人間の命令を聞くようにしとるからの。きりきり働くのじゃ」


『そ、そんなぁー!?』


「あ゛?」


『ぴぃっ』


 上下関係がキッチリ叩き込まれたようだ。もう安心していいよね? ね? と視線を闘神に送る阿呆であった娘三人。これに懲りて見た目に騙されないと良いのじゃが……と愚痴る闘神。


「えるしぃちゃん……もう、大丈夫やんな? 決して見た目に騙されていたわけあらへんで?」


 思い切り騙されていた阿呆ナンバーワン。部屋に新しいぬいぐるみとして置けないかな? とも考えていた模様。


「わたしは分かっていたアル。妖魔の類に気を許す方がどうかしてるネ」


 警戒はしていたが可愛さのあまり少しだけ騙されていたなんて言えない阿呆ナンバーツー。次は気を付けようと心に誓っている。


「私は完全に騙されちゃってたな。妖怪って怖いなぁ……」


 完全に騙されていたが非戦闘員なので闘神に唯一仕方ないなと許されている。こういうパターンはまた訪れそうだな……と警戒度をマックスに上げる社員の鏡。


「では、観光しに行こうかの。この神社でお賽銭を投げてもこやつの餌代にしかならぬ。他の温泉でも巡った方が有益じゃて」


「せやな。――ほな子狐ちゃん雑用が必要な時えるしぃちゃんに呼んでもらうな? あ、ウチは蓮っちゅーもんや。よろしゅうな」


 一応、自己紹介をしていく三人。雑用を頼む気満々であった。


『けーん!! もう……仕方ないの……。諦めたの――よろしく、おばさん達!!』


 雑用で徹底的にコキ使われることが決定した瞬間であった。

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