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チャイナ服って横のスリットがえちちだよね

 撮影スタジオ付きのセキュリティの高い物件を数件ほど内見する、えるしぃ、蓮、きららの事務所の創設メンバー三人。


 家賃相場は場所により上下するが巨大企業にするつもりもないので、過ごしやすくえるしぃちゃんの占いによって良縁がありそうな物件をパパッと決定した。


 本来であれば周辺環境や居住性、管理会社との兼ね合いも時間をかけて選定するのだが“縁”という見えないものが見える人物が、代表取締役であるのでスムーズに物事が進むのであった。


 事務関係や備品の選定、内装のデザイン関係は蓮ちゃんときららちゃんが自信を持って請け負うと豪語している。


 なぜ、この場所にきららちゃんがいるかと言えば、蓮ちゃんを迎えに行ったところ、すでにきららちゃんがえるしぃちゃんを手ぐすね引いて待ち構えていたからだ。


 まだまだ、仲良くなれておらず緊張してゲロを吐きそうになっていたコミュ障エルフだったのだが、それを前もって予想していた蓮ちゃんが車の運転を無理やり代わって移動を開始。


 後部座席に座ったえるしぃちゃんは移動の間、きららちゃんにずっとちやほやされて陥落してしまう。


 背は低いがきららちゃんも十分な美少女ボインちゃんであり、母性的な女性が大好きなよわよわなエルフちゃんは、ぐへへ、と涎を垂らしながらだらしない顔で抱き締められていた。

 

 きららちゃんはやや茶系の髪質でサラサラのセミロング、服装は清楚な白を基調としたレースのワンピースにデニム生地のジャケットを羽織った、お嬢様系女子大生であったのだ。ワンポイントの肩掛けバックは高級感溢れる品質であったため本当のお嬢様の可能性が高い(えるしぃちゃん調べ)


 ショートの黒髪でダイナマイトバディな蓮ちゃんとは、異なったタイプの美少女である。そのような、美女と美少女を両手に引きつれ練り歩くえるしぃちゃんは、大層ご満悦なのであった。


 内見の間、女傑二人に手を引かれポテポテと子供の様に後ろをついて行き、テキトーに占っているだけBOTと化したえるしぃちゃん。


 占いと言う仕事を終えたBOTエルフは珍しく気を利かせ、どこかにお茶をしに行こうと提案。


 今は駐車場が併設されている『コメツキバッタ珈琲店』で美味しそうなケーキセットにカフェオレを頼んで三人で仲良くお茶をしている所だ。


 小さなお口でビターな風味のガトーショコラをうまうまと美味しそうに食べるえるしぃちゃん。


 蓮ちゃんときららちゃんはその姿を見て微笑ましそうに笑顔を浮かべている。


「えるしぃちゃんはやっぱりえるしぃちゃんだね、ふふふ、可愛いなぁ。あんなにカッコよく私を助けてくれたのに今の姿からは想像できないや~」


「それ言うんならウチもやで? きららちゃんも知っとると思うけど大妖怪の封印の生贄にされるとこやったんよ。それを颯爽と王子様みたいにカッコよう助けに来てくれたのがえるしぃちゃんや! ――あん時は、キラキラと後光が差しとったわ」


「へぇ~。私達、えるしぃちゃんに助けられた者同士って事ね。これからも仲良くできそうだわ」


「ほぅ、せやな。――仲良うしてな?」


 長いエルフ耳をピクピク動かしながら、褒められていることにむず痒くなり頬が少し赤くなってしまう。照れている顔を見られないよう少しだけ俯いた。


 ――でも何でだろう、女性二人の間に紫電が走っている気がするのだが。と、首を傾げながら再びケーキを食べ始めた。


「事務関係の手続き自体は終わっとんねん、事務所にする物件もサクサク決まってしまったからなぁ~。後は撮影や編集の器材関係と、事務用品やな。一応、電子機器に強い知り合いおるから目途付いとるけど――この後家具とか見に行かへん?」


 蓮ちゃんに新しく会社用の銀行口座と開業の為の資本金を振り込んでおり、事務所の家賃や人件費、備品関係は纏めてそこから出金する予定だ。


 法務関係も蓮ちゃんの“知り合い”と言うパワーワードで一挙解決だ。


 実はそこに退魔士協会関係のゴマ擦りがえるしぃちゃんと蓮ちゃんに発生しているのだが、彼女らは利用できるものは利用してしまえの精神で、割り切って頼らせてもらっている。


 それと、内装の変更はそこまで行わないために、自分たち用に可愛い物を選んじゃおうね! と、女子会の様な会話をする。


 開業準備の資金だけでも三千万以上の金額がぶっ飛んでいるのだが、経費として精算しなければ、とんでもない金額の投げ銭を放り込まれたえるしぃちゃんは、税金でごっそり持っていかれてしまうのだ。


 なるべく質の高いパソコンや周辺機器、レコーディングの関係の機器を一気に揃えてしまおうと蓮ちゃんが税理士と相談して決めたのであった。


 きららちゃんも元々は人気コスプレイヤーでありながら事務所に所属していなかったので、社員として給料を貰いながら撮影やグッズを出して行く事を蓮ちゃんと相談して決めている。


 基本的にはえるしぃちゃんの事務所なのだが、女傑二人はこれからも投げ銭の金額が恐ろしい事になると予想が一致しており。早めにサポートしてくれる人員の確保が急務だと思っている。


 甘い汁を啜るのが目的なのではなく、大好きなえるしぃちゃんを間近でベッタベタに甘やかしてあげたい母性的な感情と、助けられた時に感じた恋愛的な感情がごっちゃになっており、彼女らも良く分からなくなってしまっている。


 取り敢えずこいつはライバルだな、と。共通認識はできており、えるしぃちゃんが全く気付かないうちに女同士の仁義なき戦いがここに始まったのだ。


「――あ? 信頼できる筋の人を事務所に入れてもいい? 気のいい爺さんと婆さんなんだけど」


 えるしぃちゃんが信頼できるなら問題が無いと承諾する二人、すぐさまスマホを取り出してどこかに電話をかけ始めた。


「あ、もしもし~婆さん? 聞きたいことあるんだけど~? ――うんうん、そそ。うん、え? 今、一緒にいるんだ、お願いするよ~」


 それから数分程通話を行い何かを話し合う。


 うんうん、ふんふん、と頷きながらケーキをもぐもぐする姿は本当に子供にしか見えない駄エルフ。


 そして話がまとまったのか通話を終えると二人に決まった内容を話す。


「え~と、非常勤のパートタイムになるけれど、物販、流通関係や映像編集、イベントの際の護衛に、市場調査や広告系に強い、爺さんと婆さんが四人来てくれるんだって? 前に言っていた駄菓子屋の婆さんの友達なんだけどね。剣術家に呪術師に、忍者と元防衛大臣だって――あ、わたしの切り抜きをしているんだって元防衛大臣の爺さん。ビックリしたなぁ~」


 えるしぃちゃんのトンデモな交友関係に絶句する二人、よくもまあそんなイロモノが集まるものだなと感心してしまう。特に元防衛大臣など顔合わせの際に緊張しそうである。


「駄菓子屋の婆さんは『お店があるから働けるわけないだろッ!』って怒られちった。まぁ、多分茶をしばきに来るんだろうけどね~。――でも、戦闘能力なら爺さん婆さん達そこらの退魔士なら一瞬でぶった切れる実力はあるから安心だね!!」


 なにがどう安心なのか分からない。分かりたくない女傑二人。


 そんなに襲撃の多い事務所になるのだろうかと一抹の不安が宿る。


「へ、へぇ~、えるしぃちゃんすんごい人脈やんな。――そういえばツブヤイターの求人どないするん? えるしぃちゃんに選定お願いしとるんやけど、まだ決まっとらへんの?」


「いや、もうすぐ着くと思うよ~?」


 唐突に選定した人間が来ると宣言するえるしぃちゃん。


 それに驚き、唖然とする二人。


 こういうことは事前に伝えておくものなのだが、そのお客さんが普通の人間であれば、だ。 


「ほえ? それマジなん?」


 ――カツン。


 床をヒールの踵で鳴らした瞬間、金糸の刺繍をあしらった赤いチャイナ服の派手な女がいつの間にか視界の中に入って来ていた。


 口元の黒子とぷるりとした唇が艶やかであり、髪型はトップにお団子でまとめてある。スタイルは蓮ちゃんと同等のバツンバツンであり、生唾ものである。


 なにかお香の様な淫靡さを漂わせ、その姿を見た男ならば一瞬で虜にされるだろう色気を伴っていた。


 その、艶やかな黒髪の傾国の美女は、空いていた椅子を勝手に三人の席に置くと無断で座ってきた。


「アイヤー。やっぱり、えるしぃちゃんは気付いてたアルネ。自己紹介は――」


 ――ゾクリ。


「我のパンツを毎日チェックしているストーカーで、ドブみたいな性格のクソ女――じゃろ? 貴様、我が怒らないギリギリを見定めておっただろう? ――余り調子に乗るでないぞ、仙人崩れが」


 両目が真紅になっており異空庫から取り出した軍刀を、チャイナ娘の首筋にいつの間にか添えていた。


 緊迫した状況なのだが、えるしぃちゃんが強固な結界を張っている為、周囲のお客さん達は異変に気付いていない。


 その様子を蓮ちゃんときららちゃんは冷静に見守っている。


 それほどまでにえるしぃちゃんへの信頼と信用は厚いのだ。


 逆にチャイナ娘は予想以上のえるしぃちゃんの沸点の低さに戦々恐々としていた。


 異世界帰りの戦士の殺気は本物であり、あまりの恐怖に股間から現在進行形でじょばじょばと聖水を漏らしている。


 ――ああんっ、ゾクゾクするアル。


 むしろ、その恐怖に支配される快感は初めてであり、エクスタシーすら感じてしまっている本物の変態チャイナ娘であった。

 

 溜まっていたものを全て排泄し、ぶるると震えると恍惚とした表情になり、頬が桃色に染まった。


 そんな、見た目だけは派手な美女のお排泄シーンを見せつけられた三人はドン引きである。


 ――もうこいつ、人間扱いしなくていいんじゃねえかな? と、えるしぃちゃんのコミュ障が珍しく発動しておらず、スムーズに会話が出来そうだ。


 軍刀を異空庫に仕舞うと盛大な溜息を吐き、指パッチンで汚れた床とチャイナ娘を一瞬で浄化する。


「――はぁ、もう、なんと言うかのぉ……こんなんでも我への好意は強烈でな? 全身全霊を持って協力すると本気で思っとるし、情報系に凄まじく強いのじゃ……見た目も能力も高すぎるんじゃが――見ての通りじゃ。人格に目を瞑れば最高な人材……のハズ……はぁ。こやつ、懐に入れて置かんと余計な事しかせんのじゃ。どうか、蓮もきららも納得してくれると嬉しいんじゃが……」


「………………えるしぃちゃんが言うんならそうなんやろ……ちょっと、いや、ちょっとどころじゃないくらいイロモノさんが来てもうたな」


「私はえるしぃさんが決めたことに従います。ですが、この人が働くのは良いのですが、えるしぃちゃんに近づかれるのは辞めて欲しいですね」


 そういうなりチャイナ娘を睨みつけるきららちゃん、どこ吹く風の様に視線を受け止め不敵に笑うおもらし娘。全然カッコが付いていない。


「あんたに、言われる筋合いないアル。大好きなえるしぃちゃんの側はわたしアルネ!! ついでにえるしぃちゃんの住んでいるアパートの隣に引っ越す予定ね……ふふふっ」


 ぴしゃーん、と。蓮ちゃんときららちゃんの背後に雷が落ちた。――その手があったかと。


 ちなみにオーナーの婆さんは、まぁ、あの子を好きなだけだし大丈夫だろ。と、入居の許可を出してしまっている。ボロアパートの入居者は現在も募集中なのであった。


 そこでピコンと閃いた。エルフは入居をオーナーの婆さんが決めてしまったのならしょうがないね、と。だが、あのボロアパートは人気が無く部屋の空き部屋がまだまだ存在する。


 ――この二人が賛成するのならばアパートのリフォームを行って、住んでもらえば夢のハーレム荘が誕生するのではないかッ!! 


 邪な感情百パーセントでぐふふと企んでいる内に、女性三人はやんややんやと罵り合いを始めてしまう。まさに、女三人寄ればかしましいである。


 パンッ! と、手を叩くと女三人がピタリと止まる。


「取り敢えず事務所の家具を見に行かない? チャイナ娘もね? どうせオーナーの婆さんが許可を出してしまって拒否はできないし……協力してくれるんでしょ?」


 闘神様は馬鹿らしいとさっさと引っ込んでおり、ポンコツエルフが場を仕切り始めた。


「もちろんネ! センスのいい家具を選ぶネ。ついでにアパートの部屋の家具も選んでいいアルカ?」


「いいと、思うよ? 自分の部屋じゃないし」


「なら、えるしぃちゃんの部屋の家具も選ぶネ。さすがにあの部屋は無いアルヨ?」


 ――え? そんなにひどいかな……?


 今まではえるしぃちゃんの貧乏差が酷くて、リスナー達は指摘するのが可哀想過ぎて言わなかっただけなのだ。


 ちゃんと、おちんぎんを稼げたのなら、ちゃんとした住まいに引っ越して欲しいとさえ思っている。 


「せやな、それはウチも思うとったわ。めっちゃボロい家具しかないやん」


「そうですね、私もリフォームに協力させて頂きます!」


 後の二人もさすがにアレは無いですね、と。チャイナ娘に賛同する。


 お前らさっきまで言い合いしてたじゃないかと、裏切られたような顔で見つめるえるしぃちゃん。


「え、わたしの部屋はなにもしなくていいん――だけど。はい、言う通りにします」


 三人の圧に負けてしまい早々に敗北宣言をした小物エルフ。いつの時代も女性はとっても強いのだ。

 

 将来的に尻に敷かれている駄エルフが目に見えている。


 強制的に手を引かれ家具を買いに行く四人組。なんだかんだとチャイナ娘は協力的だし時間が解決する問題だな、と。放任主義エルフは思うのであった。

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