第1章 幼なじみの転生は気付けない(9) SIDE ケイン
SIDE ケイン
「お屋敷から召喚状が届いています」
すっかり日課になったギルドへの毎朝訪問で、受付嬢から一枚の羊皮紙を見せられた。
「お屋敷って?」
「テレジア公爵家のお屋敷ですね。ほら、勇者さんが召喚されたところです」
「え? なんで? 定期報告しろとか?」
「うーん、どうでしょう? 今までの勇者さんにそういった義務を課されたという話は聞いたことがないですが……あっ!」
受付嬢さんの顔が瞬時に曇った。
「召喚理由がマリー様への謁見になっていますね……」
「マリー様って、公爵令嬢の?」
神妙な顔で頷いた受付嬢は、カウンター越しに顔を近づけてきた。
前のめりになった胸元が大きく開き、その谷間に目が吸い寄せられる。
「気をつけてくださいね。マリー様に呼ばれて帰ってこなかった人、結構いますから」
美人のささやきに耳がこそばゆくなる。
「最悪、返り討ちにして逃げますから大丈夫ですよ」
「そんなことしたら一生お尋ね者ですよ」
「大丈夫ですって」
一度死んだせいなのかはわからないが、どうもへんな度胸がついた気がする。
そうでなければ、いくら強くなったと言っても、魔獣なんかと戦えはしなかっただろう。
「ちゃんと帰ってきてくださいね」
受付嬢が心配そうな顔でオレをまっすく見つめてくる。
まさかこれってラ――
「勇者さんはこのギルドの稼ぎがしらになりつつあるんですから」
打算全開だった!
いいけどね!
仕事できるってことだからね!
「このギルドをもっと盛り上げていくんですから、絶対帰ってきますよ!」
「でも活躍すると、この街から旅立っちゃうですけどね」
なんでそこでさらりと水をさすの!?
これが照れ隠しならドキリとするところだが、笑顔でさらりである。
べ、べつにいいんだけどね!
オレにはマリとの思い出があるもんね!
高校生までのだけど!
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