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無属性魔剣士の聖戦記  作者: バナナ―ド
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ハードアタック

魔力だけあって何もできない少年が、無属性魔法に目覚め、多くの能力を獲得して強くなっていく物語。徐々に物語はスケールを増して、神や天使との戦いに発展していく。良かったらご閲覧お願いします。

過去にない厳しい攻撃が始まろうとしていた。


前聖戦の遺恨を払拭するように、天界からの使者が絶対的な戦力をもって攻めてくるのだ。


遺恨とは、前聖戦で封じられた堕天使の魂が解放されたことにより生まれ、その魂に呼応してその力となった一人の大天使が火に油を注いだ事が原因であった。


神も悪魔も人間も準備はできていない。


準備ができる前に災いの種を摘み取ろうとする、その動きの中ですでに聖戦の攻防戦は始まっていたのだ。


その数日前から、朝は暗く夜は薄明るい不気味な毎日が続いている。音もせず天には黒い雲が懸かり絶えず雷光が走っている。


「ついに来るのか・・・」


エリアの顔を見つめて、つぶやく。


「エリア・・・絶対に僕から離れないでね。これからは何があっても一緒だ。」


それから眠りについているエリアの中の大天使にも一言告げる。


「もしも僕の手に余るようなら、ゼロはエリアと全力で逃げてくれ。」


「馬鹿にするな。」


エリアの口を借りて凛としたゼロの声が一言だけ響いた。


今回、天界が報復に現れる話はほかの者にはしていない。


わざとアルカテイル自治領の塔には、ほかの仲間は近づけていなかったのだ。


今の状態で神に対抗できるのは、自分とゼロの憑依したエリアくらいだろう。


それ以外の戦士が戦闘に参加しても残念ながら屍を積み重ねるだけであろうと推定したのだ。


実質たった二人の戦いが始まろうとしていた。


どこからともなく、ラッパの音が天から降り注いでくる。


2条の大きな光の柱が天から降りてくる。


そのあとを追うように無数の天使たちがその光に伴われて降りてくる。


聖戦の前哨戦が、確かに始まったのだ。


**********


砦から外に出て動きやすいように、自由な空間を確保する。


エリアはエルシードの左腕に抱き着いている。


エルシードの空間防御はゆうに二人が動ける範囲に展開されている。


いよいよ2筋の光が二人の頭上に近づいてきて止まる。


「我が名は、ナルザエル、天界12天使の一人にして先鋒を務める。」


「我はルザリエル天界12天使の一人・・・力なきものは我にひれ伏せ・・・」


ナルザエルが右手を挙げて総攻撃の指示を下す。


「来る」


並行詠唱『空間障壁』『身体強化』『エンチャント空間切断』・・・気を練り上げる。


その間にも刻々と天使の軍勢は近付いてくる。できるだけひきつける。


エリアはすでに10本にも及ぶ魔法構成を重ねて状態を保持・・・どこで、どのような攻撃があっても、跳ね返せるだけの準備を怠らない。


近付いてくる・・・


『閃空刃!!!』


一気に2筋の空間の刃が敵陣を駆け抜けていく。


一撃で天使の軍勢の半数が切断され地上に落下していく。


『空間転移!』天使軍の中央に2人は出現する。


空中浮遊で位置を保ちながら、満を持してエリアは特大の聖属性魔法を放つ。


「インテグラル・セイントアロー!!」


広範囲に降り注ぐ光の矢が、見渡す限りの広範囲で降り注ぐ。


「全滅だ」天使軍は地上に落ちていくもの、後ろを向いて逃げ出す者、天界軍勢はチリジリにその形を失っていく。


これは勝てるのか?気が緩んだ瞬間、エルシードの体もまた左足が切断され、胸には心臓に届くほどの深く大きな斬撃の傷がつけられている。


あまりに一瞬の攻撃に、痛みだけ遅れてやってくる。


「ぎゃぁぁぁぁぅぅっ」エルシードの悲鳴。


エリアは何が起こっているのかわからない。


エルシードに無詠唱で最強の回復魔法を放つが引き離されてしまい回復魔法は空を切る。


「これはナルザエルの時間停止だ。お前もはまらないように奴に技を放つ時間を与えるな。時間停止を使えるまでには一定の時間がかかる。効果範囲は狭い。」


ゼロがエリアの頭の中に話しかける。


「よし、ナルザエルは私たちで倒すよ」


再びゼロはエリアに話しかける。


「でも、エルが・・・」心配そうに落ちていった婚約者を見つめる。


「ここで、奴から目をはなしたら、こちらの負けだ!!」ゼロはひかない。


「早く倒す、こいつ瞬殺する。」エリアの目に怒涛のような怒りが沸き上がる。


『空間転移!!』敵の正面近接距離から大魔法を放つ。


「インフィニティ・バーストフレア!」


エリアを中心に全方位に向けて高密度高火力のエネルギー放出魔法が放たれる。


大天使の展開した魔力障壁を破壊してなおエネルギー放出は終わらない。


さすがに逃げ切れずナルザエルは半身を焼かれ落下していく。


エリアは瞬時に追う。


時間をかければこちらがやられてしまうのだ。


間に合わない!時間が止まる。


天使の放った風の刃がエリアに迫る。


「やられた、、、」と思った瞬間・・・エリアは、満身創痍のエルシードが遠隔から放った「空間転移」を受ける。


エリアは風刃を回避して、落下中のラザナエルの背中に瞬間移動。


落下中のラザナエルに超高速の冷気の矢を放つ。


「フリージング・ラピッド・ストライク!!」


突き刺さった冷気はラザナエルの体を瞬時に凍らせた。


地面にたたきつけられ、ラザナエルは粉々に砕け散る。文字通り瞬殺であった。


*****


ルザリエルはエルシードに止めを刺すべく急接近する。


エルシードには、回避するだけの余力はない。


「死ね!!アブソリュートデス!」ルザリエルは致死攻撃に特化した大天使であった。


生命あるもののすべてはこの天使に従うしかない。


エルシードは、受けた技が致死攻撃であった亊を悟る。


あきらめない。


『空間転移!!』最後の力を振り絞ってルザリエルの正面に転移。


心臓が止まって意識を失うまでの2秒間を使って魔剣アルシオンで、ルザリエルの首を凪ぐ。


天使の血がほとばしる。


まさか血流が途絶えてから意識を失う2秒間で反撃を狙うとは思ってもいなかったのだろう。


抵抗する隙もなく、ルザリエルも息絶えた。


閃くような短時間の勝負だった。


*****


心臓の止まったエルシードは大地に横たわっていた。


駆けつけたエリアは、あまりの有り様に、動揺が隠せないが、それでも泣きながら巨大な魔力構成をくみ上げる。


最高難易度の蘇生魔法だ。致死から時間が経過し過ぎると効果がない。


「間に合え!リザレクション!!!」


蘇生に何とか間に合った。


「リプロダクション(再生)」「クリティカルヒール(完全回復)」


立て続けに大魔法を連発する。


「俺、生きてるのか?」


エリアが泣きながら抱き着く。


「助けてくれてありがとう・・・エルがナルザエルの時間停止から助けてくれなかったら私終わってた。」


「よかった、怪我なかったんだね。よかったぁ」エルシードは安心したと同時に意識を失う。血が足りないのだ。


「うん、上出来だ。あの面倒な大天使2柱をこの早い段階で葬れたのは大きい。もう300年くらいは復活できないだろう。」ゼロは嬉しそうに言う。


結果は完全勝利だった。


出来ましたら、ご意見・応援などいただければ幸いです。

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