ギリギリダメそうな異種間交流
ダンジョンの前には数十人の人間とそれと対峙する百匹程の妖精、そしてそれを楽しそうに眺める数百匹の妖精が存在した。
この地は既に、いわば家賃無料のタワーマンション。少し伸びる方向が上下逆ではあるが噂で集まってきた妖精が多数住み着いていた。
対話しようにも言語が違う両者。なんとかジェスチャーで意志疎通しようとする者、なんとか言語を覚えようとするもの、そして何故か日本語でラップバトルを仕掛けてコミュニケーションに成功する混じっていた国王。ダンジョン前は混迷を極めていた。
妖精と国王、真っ黒な髪の二人は一通りラップバトルを楽しんだ後切り株の椅子に座って真面目な話し合いをちぇけらっていた。
「で、気がついたら木の上で妖精になってたってワケよ、最初はなんつぅデカい世界に来ちまったんだと思ったが蓋を開けてみれば自分が縮んでたと、笑えるよな」
「こっちなんて親の乳の目の前で前世の記憶戻ったんだぞ、急に目の前に乳とかビビるわ」
「ちぇけらー?」
「けらけら!」
「で、嫁さんも転生者だって? 意外と多いのか?」
「そう思って日本語と英語で求人とか告知出してるけど読めるやつが全く現れないんだよねぇ、技術者とか見つかったら最高なんだけど」
「ちぇけらっ!」
「ちぇけらっ?!」
ちぇけらの語感が気に入った妖精がちぇけらちぇけらと周りを飛び回ってる中でも情報交換をする元日本人な妖精と国王。そして理解が追い付かずにぽかんとした表情で佇む兵士と限界を迎えて意識を失う兵士。
「んで、街の拡張予定の土地に急に森ができたから調査に来て、そしたら妖精がダンジョン作ってたと……」
「そうそう、とりあえず敵対とか追い出すとかそういうつもりは無いから責任者と顔合わせと今後のすり合わせとかすませときたいんだけど、君がここのトップでいいの?」
「いやぁトップはオレじゃねぇけど……、そういう真面目な話は多分無理だぜ?」
「そうなの?」
「妖精だから見た目は少女くらいだけど、ここの持ち主人間換算だいたい二歳くらいのガキだぞ?旨い菓子食ってドヤ顔するくらいしかできねぇよ」
「マジかぁ……」
とりあえず首脳会談っぽいものを行おうとしたら相手がほぼ赤ちゃん、大人になるまで待つと数百年。その事実を認識してしまった国王はSANチェックに失敗。これもうどうしようと遠い目で空を仰いでいた。
言語どうしようと悩みながら到着し、偶然妖精にも前世のダチがいて言語の壁を乗り越え、幸先が良いと喜んでいた直後にこれでメンタルダメージもひとしお。
「涙ぁ、ちょちょきれますよ……」
「元気だせよ、ほらこれタケノコのチョコ、懐かしいだろ?」
「は?そこはキノコだろ」
「は???」
バチバチと火花を散らしている国王と妖精、顔面蒼白な兵士たち、新しいお菓子とジュースがダンジョンから運ばれてきて楽しそうにパーティーを始める妖精たち。色々諦めて妖精のパーティーに混ざって楽しむ一部の兵士たち。ダンジョン前は変わらず混迷を極めていた。




