妖精ダンジョンかっこわらい
ダンジョンが完成して数日後、ダンジョンの入口付近は妖精の住み処となっていた。ポイント云々の説明はどうやら全く理解されていなかったようだ。
かつては草原であったそこには元の住み処から持ってきた花や木等が植えられ、成長促進の魔法によって既に周囲100m程が人々には妖精の森と呼ばれる環境へと変貌しつつあった。
マスターが仲間と認識しているせいで妖精にはトラップが反応せず、魔物も襲いかからない為ダンジョン内は妖精が安心して眠れる寝床として運用され、宝石は涙を流しながら入口周辺の土地をダンジョンの領域に。
頻繁にポイントをお菓子に変換され続けながらも滞在する妖精から少しずつポイントをかき集めてなんとか黒字を維持していた。
「クウィーちゃんすっごい!」
「さいきょー!」
「すごー!!」
一方マスターは宝石とダンジョンを自慢してご近所妖精界で超すーぱーすたーとなっていた。名前はクウィーというらしい、宝石はマスターの名前を今知った。本人も自分の名前を今思い出した。
最低限の家すら滅多に作らず基本的にはいい感じの木の中で暮らしている妖精からすると、地下のダンジョンというのは作るのが滅茶苦茶難しそうな豪邸なのだ。更に最奥には綺麗なカットを施された身の丈ほどもある巨大な宝石、いつでも食べられる美味しいお菓子、時々ドヤ顔で宝石を自慢したり、お菓子を皆にばら蒔くだけで最早最強である。
「クウィーちゃんばんざい!」
「うぃーちゃんばんざぃ!」
「キラキラ!すごい!」
「これうまし!」
宝石を眺める妖精にお菓子を食べ続ける妖精、通路に葉っぱをばら蒔いてベッドを作って眠る妖精など様々な妖精がダンジョンで暮らしている。
「クウィーちゃぁぁぁん!すっごいよぉ!」
「セスちゃぁぁぁん!えへへへへへ……」
先程から名前を呼びまくっているのはセスという名の妖精でクウィーの親友妖精である。
パステルカラーな虹色の髪が特徴的で、原色の髪ばかりな妖精の中で真っ白な髪のクウィーと並ぶとすごく目立つので元から二人はそこそこ有名ではあった。
幼い妖精は自由気ままに過ごしている事とそもそもの記憶力の低さによって友達という関係性は珍しいのだが、妖精としてはトップクラスの知性を持つ二人は幼いながらも明確にお互いを記憶していた。
宝石にぺちぺちと触れているクウィーと遠慮がちに触れてキラキラと目を輝かせているセス。
「あたしのだからセスちゃんのだしもっときがるにぺちぺちするの、えんりょはなし」
『個体名:セス をサブマスター登録しますか?』
「あいっ!」
『双方の同意を確認、登録を実行します。宝石に触れてください』
「えっと、あー……、うん!」
セスが宝石に触れると宝石から虹色の光が放たれ、セスの元に一冊の本が発生していた。
本を開くと中には子供向けの絵本のように大きな文字と挿し絵で分かりやすく、ダンジョンに必要な物事や、ダンジョンの所持ポイント、ダンジョンマスターやサブマスターのステータス、ダンジョンの情報等が書き記されていた。
「これでかんぺき、超すーぱーぱーふぇくと!」
「おおぉぉぉ、すっごい!」
「ふっふっふ、おそろいっ!」
クウィーの手元にも本が出現し、ドヤ顔で見せびらかすクウィー。黙々と本のページをめくって読み進めるセス。なんとなく楽しくなって踊り出す妖精たち。その場のノリで光りだす宝石。カオス極まりない光景がそこにあった。
そして一週間ほど時は流れ、数十人の人間がダンジョンの前に訪れていた。