入学5
思いのほか長くなってしまいました。(普通の作品の1話分くらい?)
書きたいシーンを書けてすごく嬉しい1話です!!!
康介と光輝は前にいる集団がはけるのを待っていたが、痺れを切らした康介はトイレに行くと言って廊下を戻っていった。
一人になった光輝はぼんやりしていると、不意に後ろから肩を叩かれた。
その後、康介が戻ってきて二人は学校を出た。
「横沢先生のことどう思った?」校門をでるあたりで光輝が康介に聞いた。
「ん。まだわからないこと多いけど、実績はえぐかった。」康介が言う。
「やっぱりそこだよなぁ。あれクラス単位でみたら北海道四大帝国高校も超える実績だよな。なんで私立札幌帝国にいるんだろ。過去に引き抜きあっただろ。」
「ちょっと。待て。忘れかけてた。光輝主席ってどういうことよ。聞いてないぞ。しかも北帝国大の医学部。医学科。ってたしか東京帝国の理科3類志望だったよな。」
康介は急に思い出し、言っていた。
「うん。ドッキリしようと思ってな。でも俺も首席通知きたの昨日。そう怒んなって。東京帝国は札幌南帝高に合格したら行きたいって思ってたけど、私立になっちゃったからさ。」康介は最後の方の光輝の声のトーンが落ちているように感じた。
「康介こそ。総合理系って逃げようとしてたやんか。」
「うっせよ。俺は19位だぞ。医学部なんて言えないだろ。でも光輝は主席なんだから堂々と言えばよかったのに。前回の首席の人も東京帝国大学行ってたんだしさ。」
「まぁまぁ。いいんだよ。とりあえず二人とも医科行こうぜ。」光輝は話を誤魔化した。
「ごめん。言い過ぎたよ。」と康介は呟くように言った。
「いいんだよ。康介が変なとこで熱籠ること慣れっこだし、すぐに謝ってくれるし、そういうとこいい奴だよな。」
「うっせ。」康介は若干の照れ隠しのために下を向きながら光輝の腰を突いた。
康介と光輝は家が隣同士の幼馴染であり、小、中とずっと一緒にいた。喧嘩してる時でさえ口は聞かないものの、一緒に学校に行くようなほど仲がいい。
たわいも無い会話を続けながら歩いていていると、二人組の女子生徒が追い越したと思うと、つま先を回転させ、康介と光輝の前に立ち塞がった。
黒髪で肩程の長さの清楚系の女子生徒と焦げ茶色でショートカットの明るい印象を受ける、正反対なイメージをもつ二人だ。焦げ茶色の髪の女子生徒は康介と光輝の元中である桐谷菜央だ。
「なしたの。」康介が驚いていると光輝が言った。
「康介は私のおニューなスタイルにビックリって顔丸出しね。」菜央が笑顔で言う。
「そりゃイメージ変えすぎでしょ。中学のと…」
「康介君。中学の話は厳禁よ。」指を口の前に立てながら言う。
「はい…」
菜央は基本名前を呼び捨てにするが、君付けしてきた時は注意しなければならない。小学の頃から一緒に遊んだりしていた康介、光輝、菜央だから分かることだ。中学の時に康介と光輝が君付けされてもちょっかいを続けると一週間は無視されたことがある。それ以来君付けの後は必ず止めることを康介と光輝は決めていた。
「そんなことより、こちら3組の田畠由希さんです。」菜央の表情はまた笑顔に戻り連れ添っていた女子生徒を紹介した。
康介は田畠の話になると、光輝の腰を押し前に出させてから隠れるように後ろに回った。
不意をつかれた光輝は困った顔したように見えたが、すぐに笑顔に戻っていた。
「それで菜央。なんの用だい。」
「頑張って。」菜央は光輝の言葉を無視して、下を向いていた田畠に声をかけた。
「えっと。3組の田畠由希です。副島くん。SNS…なんかやってないですか。出来れば教えて欲しいです…」田畠は話すときは光輝を見たものの、恥ずかしさからすぐに下を向いてしまった。
「うん。やってるよ。Lineでいいかな。」光輝は慣れてるように見える。
「はいっ。」田畠の顔は笑顔が溢れそうなほどだった。
光輝と田畠は順調に連絡先を交換し終えていた。
用件が済んだ田畠と菜央は「ありがとう」とだけ言い残し去っていったが、田畠は跳ねるのように歩いていた。
「流石光輝って言ったとこだな。」康介は田畠と菜央が見えなくなってから光輝に言う。
「ある程度はね。康介も髪の毛で顔隠さないでセットすればいいのにな。」
「俺は関係ないだろ。」康介は不服そうに言う。
「いや、ある。勿体ないっていう俺の思いが晴らされん。康介も高校デビューすればいいのに。菜央みたいにさ。」
「菜央の変化は凄かったな。」
桐谷菜央。中学のころは髪の毛がすごく長く、下ばっかり見ているような静かな読書家で勉強に熱心な女子生徒を演じていた。基本的には人当たりがよいが、男子女子問わず誰とでも一定の距離を置いているようだった。康介と光輝は菜央にとって小学からの付き合いであり、親同士も仲が良いことも相まって素の姿を見せている。素の菜央は勉強や読書なんかより運動がしていたいタイプだった。小学校低学年のときに鬼ごっこをやると、康介と光輝の体力がなくなっても菜央だけはピンピンしていた。しかし、菜央の父親が医師であり、娘にも医師の道を歩んでほしいという願望が強いようで、小学校中学年あたりから菜央は素の姿を隠すようになっていった。
そんな菜央が高校に入ると髪をバッサリと切ってしまい、おそらく初対面の子を連れて康介と光輝の元に来たのである。康介と光輝は久しぶりにみた菜央の明るい姿は新鮮味があり、大人になった気がしていた。
「まさか初日から一人に声掛けられるなんて驚きだわ。」康介が光輝に言う。
「まさかのまさかで実はもう一人から声掛けられてたんよ。」光輝が笑いながら言う。
「えっマジかよ。誰だよ。」
「誰だと思う?」
「いや。知らん。殆どの生徒が初対面だわ。」
「それがね、実は康介が既に知ってる人からなのよ。」
「え。クラスメイト?俺だけ連絡先交換してない感じ?初日からハブられた?」
「そんなわけないだろ。俺ら先に出てきちゃったからクラスメイトとは誰とも交換出来てないな。」光輝は当ててほしいようだが康介は全く分からなかった。
「正解はね若松さん。2組の。」光輝は盛大に言ったようが、康介は誰だかわかっていない。
「え。誰。」
「まじかよ。朝の可愛い二人組。入試成績5位の人。」光輝は不服そうに言った。
「あー、なんとなくわかった。すごいなぁ。あの人って受け身って感じだったけど意外と能動なんだな。って言うより光輝のイケメンが高校初日に美女を射止めたのかもな。それで、いつよ。そんな時間なかっただろ。」と康介は真面目な表情で言った。
「康介がトイレに行った時だよ」
康介がトイレに行ってしまい光輝はぼんやりしながら、壁に掛けてある絵を見ていた。すると、不意に肩を叩かれた。
「おい。康介。随分と早かった…え。」光輝が振り向くと目の前には凛とした雰囲気をもち、姿勢がよく周りの男を虜にしそうな雰囲気をもつ女子生徒と、周りにアニメのエフェクトがかかりそうなほど透き通っている印象をもつ、おそらく今学校の新1年生の中で最も注目を集めている二人の女子生徒がいた。
「あっ。えっと。どうしたの。」女子の扱いには慣れているはずの光輝でさえS級美女を二人も前にするとたじろいでいる。
「2組の若松果蓮です。あなたは今回の入試首席の副島さんで間違いないでしょうか。」特に抵抗なく話しかけていた。
「は、はい。」
「実は連絡先を教えてほしいです。」果蓮は一瞬目を背けたように見えたがすぐに光輝を見ていた。
「あっ。うん。いいよ。あ、でも今この状況で交換しちゃうと周りがなんて思うかわからないよ。」光輝は顔を上げ周りを見ると、今にも光輝の目の前にいる女子生徒の連絡先を知りたいと願う男子生徒たちからの視線があった。
「私は特に構いませんが。」果蓮ははっきりと言った。
「わかったよ。」
光輝はポケットから携帯を取り出しLineを教える。果蓮も同じようにして、交換を済ませた。
「私、Line使いわけてるので、できれば他人には広めないでほしいです。」と言いながら携帯の画面を見せてきた。そこには二つのLineがあり、一つは通知が3桁を遥かに超える数字であり、もう一つは数件程度。
「わかった。これは僕は数件の方に選ばれたのかな。」
「ご想像にお任せします。」果蓮はチラッと悪戯な笑みを浮かべ、もう一人の女子生徒綾瀬さんとその場を離れた。
光輝は終始、綾瀬さんと目が合うことはなく、綾瀬さんはずっと果蓮の後ろにいた。
「なるほどな。俺がトイレに行ったタイミングはナイス過ぎたのか。」光輝が先にあったことを康介に話し終えると康介が言った。
「なんで、そうなる。康介も若松さんと連絡先交換できるチャンスだったのにな。」
「いや。俺は高校ではクラスメイトとしか、連絡先は交換しないぞ。」康介はどこか誇らしげに見えたので、光輝はくだらねぇと腰を突っついた。
康介と光輝が話しながら歩いていると、すぐに家に着いた。家は隣なので最後の最後まで一緒である。
「じゃぁな。」康介が言った。
「おう。じゃぁな」と光輝も返して、二人とも家に入っていった。
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次話投稿も頑張ります!!
今回もやっぱり吉田しか勝たんっ!!!ってとこですかね!
坊主はいいかもしれませんね(何事……www)