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僕の青空  作者: 彼方遥陽
僕の青空
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1.俊哉





高校に入学したばかりの4月の出来事だった。


学校からの帰り道、青信号に変わったばかりの横断歩道を渡っていた。

自分の信号と並行した車道も青信号で、車が横を通っていく。

ごくごく普通の日常の一コマでしかないそれは狂気に変わった。


ガッシャン、と大きな音。

振り返ると黒い普通自動車がシルバーの車に接触した。


事故だ。


そう思った瞬間、ギュルンと車のタイヤが絡まるような音と共に黒い車は車体を急速にバックさせた。

ガッシャン、とまた車体がぶつかる音がした。

事故のせいで止まっていた後続車一台にぶつかったのだ。


ギューンとセルが回る音。

そして、車体は自分の方に進行してきた。


時間はほんの短い時間だったのだろう。

だけど、体感としては凄くゆっくりで、隣で自分と同じようにびっくりした表情で足を止めてしまっている少年を咄嗟に自分は突き飛ばした。


ドンと身体に大きな衝撃。


次の瞬間に再びガッシャンと今までで一番大きな音を耳に意識を失った。


目が覚めたのは病院のベッドの上だった。


あぁ、生きてるんだ。


それが第一声だったという。

この時の事を実はイマイチ覚えていない。

全く見えない右側の視界。

思うように動かせない右手と右足。

自分は一体どんな状態にあるのか全くわからなかった。


その時いたのはついていたのだろう母と面会に来ていたらしい一つ下の弟と幼なじみ。

譫言のように少年は大丈夫か、と問えば何のことかを察した幼なじみが手の骨折だけで命に別状はないと教えてくれた。


幼なじみの噓偽りのない微笑みに満足し、また意識を手放した。




この事件は、死者1名、負傷者8名を出す大事故となった。

原因は黒い車に乗っていた男の薬物使用で、男はこの事故で亡くなった。

犯人死亡でとどまったこの事件はある意味良かったのかもしれない。

だが、自分には死んだ方が良かったと思えるほど過酷な日々が待ち受けていた。



右目を失明し、左右のバランスを取れるようになるまでにかなり苦労を強いられた。

それに右手足の骨折。

特に酷いのは右手で、神経が何本かいかれてしまったらしく、時折引き攣って細かな作業が向かなくなり利き手を持ち替えることとなった。


苦行にも近いリハビリ。

肉体にも精神にも苦痛を感じた。

面会にくる人も始めこそ多かったが相手をする気も起きずすぐに返す日々。

それゆえに面会者は次第に少なくなり、襲ってくるのは孤独感。




気付けば空ばかり見上げていた。


この頃の記憶で残るのは不思議と全て青空の情景で、雨や曇り空の印象は残っていない。

青い空が不思議と空虚だった。

けれど、何故かそれが自分の中でホッとする色だった。




繰り返しになる。


この事件は高校を入学したばかりの4月の出来事だった。

僕はリハビリの日々で高校生活の一年を全て失った。

理由が理由のために留年をしなくてもいいような特別処置はあったが、留年をすることを選んだ。

かなり躍起になって勉強した時期もあったけれど、全てを網羅することは勿論できない。

僕は勉強の為にそれを選ぶしか道がなかった。


一つ下の弟と幼なじみと同じ学年になるなんて、これほどの苦痛を選びたくて選ぶ人間なんていないだろう。


僕は弟と幼なじみと同級生になり、高校生活のリスタートを切ることとなった。






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