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森の神による非人道的無制限緑化計画  作者: 赤森蛍石
2-6 →過去→現在→
320/359

竜5

 ルキウスは予定にない状況で、直感的に最善の行動を選択した。


「久しぶりだな。じゃあ仕事があるから」


 彼はすみやかにドアへ向きなおり、殴られた。重い銃のフルスイングでガツンと顔面だ。バレルは鋭くないせいか、いつもほど効きはしない。彼は返す顔の全面を輝かせてさわやかに言った。


「スカーレット! なんてことだ! ずっと君を待ってた。どれだけ君の麗しきとげのある銃声が聞きたかったことか。また会えるなんて最高にうれしいよ」

「誰でもわかるうそはやめて」


 きっぱりのきっぱりだ。


「とんでもない!」彼は勢いを失わない。「君のためのとっておきの連鎖罠を考案したんだ。最高に弾けてから、どん底になるやつさ。もちろんここには無いが、今すぐ作ろうじゃないか。ぜひ楽しんでいってくれ」


 スカーレットは非常に訓練された熟達の笑顔になった。


「百回死にますか?」

「そんな暇はない」彼は意に介さない。「そう、今は忙しいから……とっておきの妖精のアイスクリームがあるからあげよう。ではでは、取りにいくから」

「いらない」スカーレットが首を回した。「よくその調子でいられるものね」


「パープルメレンゲにする?」彼はおおいに譲歩した。

「泡状爆薬じゃないの」


「【来世の幸甚】だな」ルキウスが時間稼ぎで結論に到達した。


「さすがね」スカーレットは少しばかり得意になる。


「メニューが開けないなら、特殊な魔術や奇跡以外では、唯一の転生アイテムを使うしかない」

「二度目ともなると、耐性ができるのかな」


 スカーレットは彼の知る人格から変化しているが、不思議と知っているような感覚で、合わせられている感覚もある。


「こっちは初めてだ」

「メッセージを受けとっていれば同じことよ」


「だが、この偶然はいろいろと過ぎる」

「偶然なんて。逃げたものよね」


「わからんな」

「転生する種族は選べる。あの集落が〔復元者/レストーラー〕の血筋なのは接触して知ってた。その初期の〔魔族・秩序の手/ナイトメア・ロウミニオン〕の濃い血筋なんてまずいない。必ずあそこで生まれる」


「そこに私が来るとは限らん」

「来るのよ」断定中の断定。「不自然に広がる森があるって聞いただけで、ああ、よ。ちょっと探したけど居れば騒ぎになってる、むだなことをやった」そこそこの後悔。「とにかく、死んだ後か先かなんてどうでもいい。遭遇するのよ」


「根拠ってもの――」

「それより質問よ、あれは?」


 スカーレットは首振りでドアを示した。


「監視者であり、介入者だ」


 誰かが作った状況、最初から監視の可能性はあった。その場合、神の視点を持った完全な覗き魔を想定していた。


 だが、マウタリへの強引な介入。


 ここからは、アトラスのルールの超えた存在は許容されないと読んだ。万能なら、人の意識に干渉するとかいくらでもやりようはある。


 万能の力を行使できるのは惑星そのものだけで、それは意志を有さない。


 これはアトラスの運営そのものが完全にAIへ移管されたことと無関係ではない。完全自動化と、この生物の生来の資質はきっと相性がいい。


 物理法則は異質だが、歴史は自然な流れだ。

 誰かが直接操作していたら、この汚染された世界の状況は考えにくい。


 そして重要な事。別人だ。ウリコとマウタリの接続者は違う。

 エヴィエーネの情報から予想したあらゆる人格プロファイルパターンからずれている。あっちは戦士であり演技派だ。意図的な軽さに老練した感覚があった。


 こっちは頭を下げるでもない頼み事だった。そこには背景があり、ルキウスには予測できるものではない。印象は、燃え尽きた灰のようでありながらどこか幼い。


 何人いるのか、三人以上なことは確かだ。

 そして、これが共通の目的を持っているのかわからないことが、彼を迷わせている。


「それの目的は?」

「気が長い連中の考える事なんて知るものか。人間なら、世界が滅んでは困るとは思っているはずだが。いろいろとお知らせしたいにしては遠因すぎる。意図をくむべきか、潰すべきかわからん。

 とにかく、彼らが我々を知るには目がいる。これはアトラスの神々が信者の祈りで情報を得るのと近い。そっちは近くに誰かいなかったのか?」


「私には、整備なんかのバックアップチームぐらいね」

「機神教の前身か」


「そうね。魔法は私の体の維持に必要だった」

「あの世で誰かと会わなかったのか? 今ここにいるなら、向こうで粘ったはず」


「記憶はない。復活者が死後を覚えていないのと同じ」

「そうか……君は役割を終えた」ルキウスが神妙そうにみけんにしわを作り「どうか成仏してくれ」


「悪霊みたいに言わないで。私の役割はあんたを野放しにしないことよ」


 噴火しない。彼の知るスカーレットより冷静だ。


「そいつは誰かの望みとは矛盾する。誰かはプレイヤーがその能力を行使することをお望みだ」

「ないって。介入者さんだって同じ考えじゃないの? それで口をはさんだの」


 ルキウスが体を軽く揺すりつつ考え


「あれは緑野君と呼んだ。知り合いの可能性がある。でも部長とかではなさそうだ。心当たりは?」

「日本人なの?」

「……くんは日本語だった気がするが、どうかな」


 すべてが終わらせかねない脅威にくわえ、ウリコを失うリスクが最大化された局面だった。ウリコを人質にしているなら、あえて首を飛ばすのが物語から逃れる道筋かとも思った。口元まで意識がおよばない。


「あなたの信者ではなさそうね」

「そんなもんいない」

「大統領には大勢いるのよ」

「他人の話だ」

「でも本人を知っているとなると、仕事やめてからの交友層でしょ。大統領は大権力者で報酬も多いから」


 妻が知らないなら、もう手がかりはない。ただ、大権力者に対する呼びかけでもなかった。感覚的に、緑野茂が認めていただろう相手だ。ならば、直接的な面識がありそうだ。


 しかし、彼が認めるのは偉大にして愉快な人間だけだ。時代柄、宇宙探検家みたいな職業だろう。思い当たる人物はいない。


「そもそも大統領は何やってるんだ?」

「主に外部と関係ある重要案件の管理と、一部の決済確認だけでAI任せよ。現実のあなたは人類研究家になった」

「なんだそれは?」

「こっちのせりふですけど」


 彼女の言いようからして、その後の緑野茂の話はやぶへびと思われた。


「そっちで介入はなかったのか?」

「いいえ、なにも。そもそも、世の中の陰謀は全部あなたのせいよ」


「あれを見てから言うのか?」

「言っとくけど、炎系の弾は徹底して温存してるから、ほら」


 最大限に開いたインベには、三つの銃カバーと弾薬と弾薬ケースが多数あった。銃カバーの一つは空だ。


「なんでだよ。というか、厳重な占術よけだな」


 むき出しの道具は一つもない。すべてが魔法の付与された入れ物に入っている。入れ物だけで、数十億ヘラは使っている。


「ピンポイント探知ならかかったと思うけど、知らないものね」

「私は大統領さんじゃない」


「文句が言えないなんて大損。実験だあって事件起こしまくってるのよ。それで収監もされたの。その中からも事件起こすし、警察がやめさせてくれって泣きついてくるし」

「俺は入ってない。そんなへまはやらん」


「これから入るのよ」彼女は自信に満ちていた。「なんなら私が今から入れてやるってのよ」

「できるものかね。ちなみに何やったんだ?」


「世間に出たのは、喜劇型宇宙人大実験とか。観光衛星行きの巡洋艦を仕立てて乗員乗客の意識を飛ばし、こっそり宇宙基地の隔離空間に入れて、『あなたは宇宙人に拉致されました。我々が面白いと判断した人間だけ生かす』で、ナンセンスなゲームに強制参加させた」

「面白そうじゃん。状況を受け入れかけたぐらいが最高だ」


 スカーレットはうんざりを通り越した顔をした。


「重傷者でてんのよ。でも、これは起訴されなかった。前もって親族友人に金を回して法的には無意味な許可を取りつけ、被害者に旅行券を贈らせて共犯にしたて、報酬まで払う。さらにゲームにかこつけて何かの機密を得たようだし、乗客の地球市民権問題からバーナード星系の独立派までまきこんで、地球圏の法律を適応させるのは危険な情勢にしてた。もう! 悪辣」

「誰も問題にしなかったなら、問題ないんだ」


(政治的爆弾のほうが本命だろうが、現状にはつながらないか)


 スカーレットが目から火を噴きそうな人相になっている。カウントダウンは早い。彼は話を変えた。


「ところで、部屋の表札を変えないといけないな」

「え?」


 彼女は本格的にとまどい、急劇に警戒した。


「名前だよ。ビラルウ使うの? スカーレットだと機嫌が悪くなるし、なんて書けばいい?」

「……中身がわかってないのね。さっきのはそれか」


 こうならないように、彼は無難な逃げから最大の本題に入ったつもりだった。逃げた敵を追う時こそ無防備になるはずだった。それを外された。


「いやいや、そんなわけないじゃないか」

「じゃあ名前を呼んでよ」

「そんなことよりイジャ対策は?」


 ルキウスは真面目にやろうとしてわずかに早口になった。


「そんなこと? そんなことで済ますつもり」

「今は緊急事態じゃないか。君は役割を果たすべきだ」


 もっともらしい口ぶりが続く。


「緊急事態はあんただけよ」

「違うな。ならばなぜ正体を見せた? ここまで隠れてたくせに」


 ルキウスはここで自信をみなぎらせる。この自信は、人前ならいつでもどこでも出てくる。その勢いのままに顔を彼女に寄せた。


「イジャで大変そうなところにあれで」

「ほれきた!」彼がくるくる回る。「妻よ。イジャに対する切り札を持ってきてくれたんだろ。まずはそいつを知りたい」


「そんなもの無いわ。有るのは銃と弾倉、消費薬。これで全部」

「役立たず! カス!」


「何がよ! イジャが来るなんて知るわけないじゃないの! 空は敵減らしつつ母艦マザーに接近して集中砲火。陸は建築重視で地道に守るのよ」

「いやはや、そんなことだから君はだめなんだ」ルキウスはおおいに失望してみせる。「レベルだってそれほどいってないはずだ。いったいなんの役になら立てるんだ君は?」


「あなたに言われたくないってのよ。そもそも、私の部屋に使える魔道具いくつかあったでしょ」

「あの時も急いでた。回収したのは一部だ。そして消し飛んだ、お金は必要だったが、あまり回収できなかった。普通の箱で底抜けたぞ。あれをちまちまインベに入れるの面倒だし。出すのは金額指定で一瞬だけど」


 スカーレットは久しぶりにじっくり見るインベを確認した。


「手持ちは十億ぐらいあるけど」


 ルキウスが瞬時に優しくスカーレットの手を取った。


「よし! 結婚しよう」

「絶対に嫌」


 彼女は極めて自然で、引き金を引く滑らかさだ。


「ルキウス様、そろそろ会議です」上階からソワラが飛んできた。「売却作業の進展は」そして成長したスカーレットを発見した。


「これはなんですか?」


 彼女は浮いたままで停止した。ルキウスは光速で彼女から離れている。


「ビラルウだよ、プレイヤーだった。友好的というか、妻だ。戦力が増えた」

「はい?」

「元妻よ」スカーレットは厳密性にこだわった。


「何がですか?」ソワラはまだついてきていない。


「いや、私の妻ではないが、妻だった人だ。スカーレットだ。知っているよな?」


 聞いたソワラは、考えたうえで混乱が抜けきれない声を出す。


「結婚などされてませんよね。ええ、するわけがない」


 彼女は自分に言い聞かせるようだ。若干の圧を放ってきている。


「いや、私は独身だが、妻みこみというか」

「この女と婚約したと!?」


 ソワラがばっと背中の翅を開いた。


「違う。遠い昔、妻だったというか。もちろんずっと独身だが」


「転生したのよ」スカーレットが言った。


 ソワラが様々な思考を行い、自動的に何かを悟り始めた。


「……意味がわかりました。プレイヤー同士がいいんですね。それに若い人間がいいのかしら。人の不完全性なのかしら」


 あきらかにソワラの顔がこわばり、ルキウスは内心であわてた。


「違う。これは極めて高度な魔術が交錯したような事態で。つまり我々がこの世界に出現した時と同様の異常が発生したのだ。理解に時を要する」

「そうですかそうですか、そうだったんですね。そうーなんだ」


 ソワラの目がまん丸になっている。そして魔力を帯び始めている。


「いや待て!」


 ルキウスが叫んだが、恐怖は来なかった。ソワラはシュッと高速で上昇し、外まで行ってしまった。

 ルキウスはため息をついた。


「はー、人生いろいろある」

「なにたそがれてんのよ」


「会議だ」彼は歩きだす。「これ以上こじれる前に紹介しないと。ええ、あったはずの未来の副司令官ぐらいで」


 スカーレットは壁にもたれてついてこない。


「また逃げるのね。かわいそう、あの子はああなるように作ったのに」


 ルキウスは部屋の中も認識していたが、ウリコはまた金のことを考えながら作業を再開している。平常運転だった。

 彼はそれにひとりうなずく。


「まあいい。やるべきことはわかった」

「よくないってのよ」


 スカーレットが彼を追ってきて、彼の顔面をホールドした。彼はそんなことは気にせず、すまして言った。


「奥さんまで出てくるなら締め切りだ。もう駒は増えない。そういうことだ」

「また言わないのね」

「またって?」


 身に覚えのないなんらかの罪状が山積みになっていそうだ。


「退屈そうってことよ」


 すぐに今日の現状確認会議となった。ソワラは落ち着いたようだが、それはそれで不気味だ。


「ええと、いろいろ言いたい事がありますが、ヒヤマさんは資金を提供してくださるそうで」


 ヴァルファーが悩みながら進めた。


「使い道ないしね」スカーレットは堂々とイスに座っていた。「機動戦は難しいけど、長距離射撃なら今でもできるから一度試したい」


「運よく味方が増えた。ヴァルファー、さっさと動くぞ」


 ルキウスが早々ときりだした。


「まさか今すぐですか?」

「いや、だが帝国軍のタイミングでは遅い」


「圧倒的迎撃火力に少数で突撃することになるでしょう。協力を確約している集団は竜王ぐらい。半島は微妙で、巻き込むにしても緊急に動員できない」

「まずは空陸で敵を削るという話だ」


「帝国の広域で散発的な戦闘が続いていますが、いまのところ敵は無尽蔵です」


 危険なだけで無意味なのはルキウスにもわかる。


「揺さぶれればいい。こちらの戦力を大きく見せる。増援と伏兵を警戒させれば、皿割りの時に迎撃を減らせる。半島の戦場にはゴンザを追加してやれ。甲冑姿なら混ざれる」

「場合によっては死にます」


「自律兵器は戦士の頭部を狙わん。武器や腕だ。即死リスクは低い」


 言いつつ危険なのはわかっている。ゴンザエモンの使い道がほかにないだけだ。使わないと死に駒になる。


「そうなると……我々の突入はないということで?」

「ああ、何をやるにもまずは外からやる」

「どうしてもやると」

「どっちにしろ少数でしかけるんだ。なら少数でやれる作戦をやっておく。それで変化がある可能性はある」

「ならば少数パーティーで遊撃させますか? かなりリスキーですが、固まっていると小皿が来やすい」

「その方向で」

「皿割りの決行は?」

「……五日以内がいい」

「すぐですね。帝国はこれから装備を送っても使えないのでは?」

「かなり待ってる」


 スカーレットがボソッと言った。


「彼女のような戦力も追加された。帝国軍も統制をとりもどせば奮闘するかもしれないし、誰も知らない未知の戦力が合流してくる可能性もある。そこは知っていたようだが」


 そこ、にあたるレイアは笑いをこらえていた。会議前からずっとこらえている。


「我も知ってたぞ」


 これを言ったのは、ルキウスのイスの後ろで腹ばいになっているトラである。


「何が?」

「彼女がスカーレットなのは知ってた。聞いたからな」


 ルキウスが体の勢いで強引にイスを回転させた。


「お前は」息を吸いこみ「知るなよ! なぜ言わない!」

「主が相手をしてくれないものでな。言う機会もなかったし」

「裏切り者め!」

「あなたが長くほったらかしにするからよ」


 スカーレットが弁護した。


「こいつが休んでいるほうがいいと言ったんだ」

「わかってないのよ。限度ってものがあるんだから」


 言っているあいだにスカーレットがぐんぐん縮みだした。そしてイスに対して小さな幼女にもどった。


「もどっちゃった」

「薬はまだあるのか?」


 ルキウスは相棒への不満をどうにか飲みこんだ。


「八つある」

「あれはかなりレアだが」


 アトラスでは、〈幼児化〉に対するカウンターでしかない。


「前時代は使った。成長した姿を知るため」


「スンディでも製造可能だったはずです」ソワラが言った。


「それ飲ませて、化け物にでもすれば面白いな」

「また悪いの」


「そんな事より戦争の事です」


 ヴァルファーは真剣になっていた。


「帝国との連絡を密にして、準備を急かします。彼らは敗報を連続して聞いているはずですが、それは司令部にとどまる。将校の戦意を持たせないといけない」


「全部任せる。私は現地でイジャの習性を調べつつ減らす。それと、私に何かあった場合は、以後スカーレットに従うように」

「何かなどあっては困ります! 誰かつけてください」


 ヴァルファーが反射的に強弁した。


「イジャは単独のほうがやりやすい。慣れてきた」


「最悪の場合でも即時復活です。といいますか、私が付きますから」ソワラが言った。


「いつもの戦法が通用しない相手だ。全力で隠れることも多い。逃げた場合、地下とかに押し込められて、長く潜むはめになる場合もある。離脱に時間がかかる」


「遠めの援護があればいいでしょう」ヴァルファーが言った。

「これまで予備がいないのがおかしかったんだ。決めておくのが普通だ」

「それはそうですが」

「スカーレットはうちのサポートの性質をよく知ってる」

「そうね」スカーレットが言った。

「とにかく任せた」

「いいけど」


邪悪の森


「雑用であろう。そう思わんか?」


 巨大な白竜王の声が森に少し響く。


「我らにはそうだが、人間であれば踏み入れん場所よ」


 同じく巨体で木を避ける青竜王が言った。


「竜王の協力を得て、望むことが狩りの獲物とは」

「忘れるな。換金性の植物もだ」


 緑竜王は人型で、地面に注意していた。


「それがわかるのは緑だけだ。これも獲物だが」白竜王は木に擬態していた蟲をたやすく踏みつぶした。「これは肉に入るのか?」

「全部置いておけ、そろそろ取りにくる」


「共同での狩りもいい。これまでになかった記憶が増えた。しかしここの水は汚いな。油の匂いがする」


 青竜王は濁った川の水を操り、怪魚を陸に飛ばした。


「とにかく急げ、いくらでも肉は使うそうだからな。真面目にやらないと牙を折ると言われた」

「現実味がある言葉だ。やる自信があるのだ」


 青竜王が笑った。


「怖い怖い」

「とにかく急げ。イジャが終わるまで際限なく使うらしい」

「用途を聞くべきではないか?」

「言うだけいって消えおった」

「大皿に突撃するよりはいい。数を減らした我らでは、陽動にも不足よ」


 邪悪の森の一角で、竜王とその一族があらゆる獲物を追いまわすことになった。

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