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収容所11

 取り急ぎヴァルファーの説明が行われ、さらにルキウスが言う。


『君は知るまい。驚くがいい。外は今や宇宙人だらけで、奇抜な植物が生態系の基礎となり、日々新たな魔物が出没している。そもそも世界は常に陰謀によって動かされているのだ。しかし、私の町にくれば超安心。そこそこは安全。このままいけば超発展。帝国とも超友好する予定』


 ハエが偉そうなポーズをとる。


「人間にもどってから言ってほしいもんだ。それに宇宙人がいるならあんたらだ」


 セオはまともに受け取らなかった。彼の目の前にいるのは、はっきりと形状を見ることもできない小さなハエだ。


『まあ、みんな宇宙人だし』

「その言い回し、魔道諸国なら魔を宿す者だと聞いたがな。こっちの偉ぶった魔法使いは、宇宙に選ばれた超越者を自負するが、あんたらは全員が本物の神霊者級か」


 セオは一同の気配を感じながら話している。サンティーの気配ですら以前のものではない。


『苦労して迎えに来たんだ。出ていくしかない。今なら豪華な食事、発掘品以上の装備、役職だって選び放題だぞ』

「流れに乗るのはいいさ。ここの洞窟コオロギはなかなかいけるんだぜ」

「コオロギはうまいものな」


 サンティーの意識は坑道の先へ向いていた。


「その能天気、変わったのか、変わっていないのか」


 セオはあきれていた。


「それで、そのブンダの瞳だが」


 発言の機会を待っていたのはゴーンだ。


「心当たりが?」ヴァルファーが興味をもつ。


「最近掘り出したのだろ、ほら、あの玉」


 ゴーンがセオに目配せした。


「新入りの革命屋か。たしかにハエみたいなのが出たな」


 セオが思案する。


「防衛装置の一種だと思っていましたが、最近出たと?」


 ソワラが意外そうに言う。


「つい最近だ」


「ならば、あれは管理されていなかった? かなり危険物だが」


 ヴァルファーもやや意外そうな顔。


「囚人に危険物を発掘させることも目的ってことだねえ」


 アブラヘルが言う。そこいらの壁から何が出てもおかしくない状況だ。


「だろうな」セオが言った。「ここで出た物は、係が封印と梱包をして上に送る。発見者は報酬をいただける。食事の差し入れ、本、個室なんかだが。中流以上の生活だ」


「まずは、それに参りましょう」ヴァルファーが言った。


「了解だ」セオが立ち上がった。「任務をやればいいんだろ。なら管理室と保管室を確認する」


「あなたが行くのですか?」


 ソワラはセオを警戒している。


「白服なら入れる場所だ。ひとりでいい。そうはかからん……がここはどこだ?」


「私も行くよ」アブラヘルが言った。「完全に化ければわからないでしょうし、情報収集にもいい」


「私も行きましょうか?」ソワラが言った。


「あんた、緊急用の分まで触媒を使っちまったでしょ」

「まったくだ」


 ヴァルファーもあきれている。ソワラは押し黙った。完全に予算オーバーで戦闘に支障がある。


「ルキウス様はこれで、あんたはぶっ放した挙句に虫を蹴散らして魔力枯渇。私しかいない」


 ソワラが酸をぶちまけたので、付近の坑道の壁面はただれている。

 アブラヘルが魔法を発動し、どこかで土に埋もれているだろうキハーダの姿になった。


「あの男の頭髪と血をいただいておいたからね」


 セオとアブラヘルが壊れていない坑道から生活区に向かった。それを見送るソワラの表情は険しかった。


「心配するなよ。俺が聞いてる」


 ゴーンがリラックスして言った。彼はオペラでも聞いているようだ。


「あなたも似たようなものでしょう」とヴァルファー。

『そいつは趣味の人だから心配しなくていい。脱獄しかないんだし』


「アブラヘルが空ぶったらどうされますか?」


 ソワラがルキウスにたずねた。


『ここにブンダの瞳が無いなら、すぐに上に行く』

「彼らを獄に繋ぐ縛りを除去し、また刻印を書かねばならない。余計な出費ですが」


 ヴァルファーが言った。


『増援が来るらしいし、早く離脱したい』

「警戒されていれば、エルディンでも落とせませんからね」

『どちらにせよ離脱だ。目標は達した』

「ハエのままじゃ帰れませんよ」


 アブラヘルとセオは二十分かからず帰ってきた。ソワラが地下を派手に破壊したおかげでおおいに混乱しており、彼らが注目されることはなかった。

 結果はセオが告げた。


「すでに上に送られていた」


 彼らはすぐに動いた。二人の記憶を縛る輪とふみつけを治療用の短杖ワンドで除去する。その背信を知られては不都合だ。うまくやれば、いっきに上の管理棟を強襲できる。だからひそかに動く。


 出入口には限られた白服しか近づけないが、場所はわかっている。比較的近い人気の少ない区画に移動し、そこから穴を掘った。幻術でその入口を隠し掘り進む。


 出入口近辺は、金属の壁で補強されていたが、ゴンザエモンが地形破壊用の大刀で何度か叩くと割れ目ができた。そこからさらに掘るとコンクリートの壁があり、破壊すると大きなスロープがある広い空間に出た。


 ここは管理棟の中心部の下になる。

 敵戦力がまったくいないことは肩透かしだった。もちろんゴーンは音がないことを告げている。


 警戒して周囲を探っても、やはり誰もいない。出入口の警備はいたが、ここにはいないのだ。不自然だが、進むべき。彼らは長いスロープを上がり始めた。


 そこを半分ほどまで来た時、セオの体中から細い糸が噴き出した。それは黄色の点となり、立体的に膨張していく。


「ぐあ!」


 セオが顔を押さえてしゃがみこんだ。体中から黄色で平たい物体がにょきにょきとはえてくる。セオの頭はそれだらけで、人間かわからなくなった。


「引き返せ!」


 ヴァルファーがセオを引きずって階段を下がった。


「こいつは、俺たちの主食のきのこだ」


 ゴーンが言った。セオからはえたの彼らが食べ慣れたきのこだ。


「痛みは?」


 アブラヘルが横たわったセオを抱えた。


「全部だ。尻まで痛い。どうなってる?」


 テオが険しい顔で身を起こそうとしたが、途中でやめた。


「きのこまみれで内側から肉が裂けている」アブラヘルが言った。「中から出てるなら、臓器もやられてるけど」


「そこまで血流は乱れていない。表層だけだ」


 ゴーンは自分の手のきのこを振り払うようにしつつ、セオの音を聞いていた。彼は左手にきのこがはえただけだ。


「これはWOだ」ヴァルファーが言った。「【爛れ執す双子キノコ】、栄養豊富だが食べると呪われる。十中八九逃走防止」


 クエストで用途と同じ登場だ。あれはカルトに支配された村落から、秘密裏に一家族を脱出させるクエストだった。


「除去できないのか?」


 サンティーがセオを心配していると、アブラヘルがちゅうちょなくそのきのこをむしり取った。


「はえたのは剥がすしかない。それは普通の魔法でいい。これは近い二か所に出現するキノコの群落の片方だけを食べている。両方を食べれば、戒めは解けるが、それまでは食べていないほうのきのこから遠くに行けない」


「地下収容所は複数あるようですから、別の区画かもしれません」とソワラ。


「別の区画にあるなら、俺の耳に入っている。だが上の施設は魔法で守られていてわからん。嫌な蓋だ。その周囲の音は聞けるんだが」


 ゴーンが言った。セオも同意する。彼はすでに痛みに対応しつつあった。


「俺が知ってるのは、部屋一面にぎっしりはえてるのだけだ。ほかにはない。地下は広いが移動しようと思えばできる。管理できるとは思えない」


 セオはすばやくきのこをむしられ、すでにポーションをかけらている。きのこがスロープに散乱していた。


『二つのきのこの群落はあまり離れられない。直上が怪しい』


 ルキウスが言った。ここでヴァルファーはここの状況を気にした。


「妙に敵が来ませんが、周囲の音はどうです?」


「後ろは混乱したまま。先はその位置だと邪魔だ。心臓止めるか、下がってくれ」


 彼の前にいる者はその後方に下がったが、ソワラはそのままだった。


「止めるのかよ……」


 すました顔のソワラにゴーンが驚愕するも、すぐに耳を展開した。


「近くに話し声は見つからない。施設から多く足音が遠ざかっている。車両は向かってきているが途中までだ。どうも、施設から少し距離をとっている。三百は離れているな」


「どういうことでしょう?」

「施設を放棄したか、もしくは危険物でも逃げたか」

「このままで行けません」


 ヴァルファーがルキウスに決定を求めた。


『ソワラは残れ、魔力の回復に時間が要る。私はほかの誰かが持て。WOの判別役が必要だ』

「しかし」


 ソワラが口ごもった。彼女も無理なことはわかっている。


『体を持っていれば戻った時にわかる。ゴンザもここだ。敵が来たら斬れ』

「任せとけ」


 ゴンザエモンが嬉々として答えた。

 アブラヘルがルキウスを持ち、大きなスロープを上がった。


 彼らは非常に慎重にスロープの先へ顔を出した。車両が入れる広い空間だ。ここにも誰もいない。


 サンティーが中への扉に近づき、壁に電磁波を放って中の様子を探った。そこにルキウスが言った。


『彼は空白だな。真水で満たされている、のほうが適切か』

「何が?」


 サンティーが不思議そうに言った。


『君の友人のセオ・カット氏だ』

「意味はわからないが、柔軟だからお前の話でも聞いてくれるぞ」

『そうかもな。知り合いにはいない種類だ』

「面倒見もいいし、賢いし、強いし、うそもつかない。お前と違って」

『何も恐れていない。死に対しても鈍い。楽しいことも望んでいないようだ』

「え? 嫌いなの?」

『いや、難しいだけだ』


 ルキウスが離脱を急いだのは、セオの意思を計りかねたせいだ。


 セオは孤児院出身だ。帝国にとって超能力者は社会の重要インフラで、常に探している。国営の畑である孤児は、才能を発見されやすい。逆に幼少の頃から精神鍛錬を受けた富裕層も多い。


 そのどちらでもないサンティー、電気に思い入れなしで力を発現させたことからして、かなりの資質。しかし前向きではなかった。その訓練生活で、特に親しかったのがセオだ。最初は彼女の先達として導き、数度の軍務に出てからは、能力検査、再訓練中に指導教官になっている。


 彼の社会は、かつてのサンティー以上に心覚軍の経験で構成されている。しかし、そこに強い仲間意識がない。軍人としては変わっている。


 偏りがない空白だ。ルキウスが相対して闘志を感じなかった。恐れも、興奮もない。あの若さで兵士として仕上がっている。とはいえ、戦闘機械でもない。


 それでも所属期間が長い分、心覚軍にうっすらとした愛着がありそうだ。

 非常に機械的で公平な天秤は、増援にサンティー以外の知人が二人以上いたら、秤が逆転しかねない。こちらへの敵意は確かになかった。早く帝国を出るべき。


 サンティーは探査を終え、壁から離れた。


「人が……ほふくでもしているのかな。しかし武器は構えていないような」


 彼らは扉を普通に開けた。徹底的に管理されていそうだったが、鍵はかかっていなかった。

 扉の大きさにあった広い通路だった。大きな物を搬入できるようにしてある。そこには二人の兵士が四つん這い。きっと近くにハエになって困ってる人間もいる。


「どうやら密封に失敗したようで」

「ついてるねえ」


 ヴァルファーとアブラヘルがほくそ笑む。


 広大な建物の廊下を進むが、ハエ人間しかいない。

 なんらかの異常を察して、シェルター的な小部屋に籠った気配もあったが、まずは無視した。部屋の表札は数字で、中身がわからない。


『狙撃警戒を怠るな。壁でも抜いてくる』


 彼らは部屋をのぞきつつ道なりに進み、上に上がっていくと、半分開いた部屋の前に、異様に太って腹が丸い人体が仰向けでバタバタしていた。ハエはこの巨体を使いこなせないらしい。


 サンティーが限界まで腹がふくれた制服を探ると、身分証があった。ここの所長である。


 つまりそこは所長室だ。中に入ると、その机の上に、お菓子がぎっしりと詰まった大箱があった。


『【レメリア嬢のお菓子詰め合わせ】、お菓子が無限に出てくるが、中毒になる。三日の断食で治るが』

「こらえられなかったようで、あれは醜い」


 アブラヘルがいやそうな表情だ。

 ルキウスは箱を持って帰れば食料にできるかと思ったが、ビラルウたちが無限に太りそうなのでやめた。


『食べるなよ!』


 ルキウスの強い呼びかけは、箱に手を伸ばしたサンティーへ。


「いや、何か隠されているかもと思って」


 サンティーはばつが悪そうに手を引いた。


『絶対うそだろ』


 アブラヘルとヴァルファーは罠を警戒しつつ、部屋の書類をめくり、片っ端からインベに格納している。

 必要なのは、発掘品のリストとこの施設の地図。これを短時間で判断するのは難しく、無数の書類との激戦となっている。

 これは、時間がかかるのを覚悟するか、手当たり次第に部屋を開けるしかない。


「特殊保管庫というのがありますが、どこかわからない。地図が欲しい」


 ヴァルファーがひたすら書類を広げていた。敵地であることが頭から抜けるほどに必死だ。


「分厚い金属がありそうな場所ならわかったぞ」


 サンティーはレーダーのように方向を変えつつ、集中的に電磁波を放って施設を探っていた。


 その区画は建物の北西にあった。かなり広い領域を占有している。


 入口の出入りを管理する門には、二人のハエ人間がいた。厳重な場所だ。

 そこを超えていくと、金属で強化された非常に頑丈な部屋が並んだ通路に出た。


 小窓で中が確認できる。中身は生物型のWOだ。表現しがたいきてれつな形状から、半分が機械のもの、そして見かけは普通の動物のものまである。しかし、性質が不明なものはすべて危険。


『ヴァルファー、あれがわかるか?』


 ルキウスはわざわざアブラヘルに虫かごをあげさせて中を見ていた。


「危険物に関わっている場合では」

『ウシのくせにあれがわからんのか』

「私は悪魔の性質であって、ウシでは」


 ヴァルファーが気を悪くして、中を覗いた。


 ベチャン。そんな音が隔絶された部屋の外からでも聞こえそうだった。

 部屋の中には、妊娠したウシがいて、それが出産したのだ。濡れた胎盤が床にねっとりとついた。


 そこから立ち上がる体は生まれたての子牛のものだ。しかし、もたげた首にある顔は、異様で、ウシにしては丸く、人のようにも見える。


「これはまさか……」


 ヴァルファーはその姿を知っている。


『攻撃はない。予言する人面のウシ、くだん


 ルキウスは放電直前のサンティーを止めた。


「あれは無敵ではありませんね」


 ヴァルファーが剣を抜き、扉を魔法で開けた。アブラヘルが後退する。

 くだんの予言は凶事が多く必中。不都合な可能性もある。


『聞いて行く』


 ルキウスの声でヴァルファーが剣を納めた。予言は益をもたらす場合もある。そして大きな物事を告げる。個人向けではない。

 震える足で立っているくだんから、しゃがれた声が吐き出される。それは途切れ途切れだが、最後まで続いた。


「最後の艦隊が……帰還する。すべては……望むようになる。女王は、寝起きぃーが悪ぃ」


 くだんはがくんと地に伏した。死んでいる。そして、塵となって消えていった。

 親ウシは何も起きていないようにたたずんでいた。あれもWOなら、またいつか出産するのだろう。


「曖昧な……わかられますか?」


 ヴァルファーが困惑した。必中の予言はある程度意味あるもの。あれでは備えようがない。


『特定しかねる。今は進もう』


 ヴァルファーが扉を閉めなおし、さっさと生物型の区画を抜ける。


「今のなんだったの?」


 サンティーはまったく状況が理解できていない。


『わからんが、願望かな……そう、予言とは概して願望なんだ』

「じゃあ船が来るんだな。森は見たし、今度は海が見たいな」

『長生きすれば見られるかもな……がんばって神になってくれ』

「難易度高いな」


 彼らが区画を移動するとお目当ての発掘品の保管庫だった。部屋が多くあり、どの部屋も大量の棚と箱がある。ここはWOだけではないはずだ。普通の魔道具もかなりあるのだろう。


 彼らはすぐに保管庫の中に入る。

 ヴァルファーがつかつかと部屋を進み、数歩引き返し、棚を覗いた。

 それはブンダの瞳ではなかったが、無視できない物だった。

 彼は棚にむき出しで保管された板を取り出した。そこには、文字の羅列があった。


「これはどこかのギルドの名簿版では?」


 ギルドホームのどこかに置かれていることが多く、ログイン状況や予定を示すのに使う。遠距離からでも操作可能だ。


『そうらしい。生きているか?』


「この型は見たことあるような」


 ヴァルファーが次々に様々な形と材質の板を取り出した。

 それらは制作したプレイヤーの言語に設定されている。ルキウスは近い一枚を見た。アルファベットだが、英語ではない。


 一番上に大きな文字でNord Korjaamo。


「ノード、ノール、ノルド コルヤーモ。知らないギルドだな、生産系か」


 その下に名前が続いている。


「イルマ・パーヴォライネン、ティオ・エリクドゥーネ、ソコゥ・ゴーダ……」


 大量にある名前はすべて灰色だ。


「全員ログインしていない。さもなくば、死んだか」


 倉庫の中を探ったが、埃をかぶっている場所にはないだろうし、ブンダの瞳は小棚に入るサイズでもない。そこでかなり場所を選んだが、倉庫が広すぎる。


 ただし、ハエの数でありそうかはわかる。

 にもかかわらず、ヴァルファーとアブラヘルはルキウスの魔道具探しに付き合わされた。いい物をゲットするなら、今しかないというわけだ。

 彼らは強い魔力を帯びた小物をいくつか得た。使い方はわからないがウリコに売れる。


 そのあいだに、魔道具がわからないサンティーはハエを探しており、きっちりハエが特別に多い通路を発見した。


 彼らはそこに行きいくつかの部屋を覗き、ある部屋に入った。

 そこは検査用の魔道具が多く置かれた部屋で誰もいなかった。通路から見た範囲にブンダの瞳は無いが、あきらかにハエが多い。

 おそらく、発掘品の性質を調べる部屋だ。ここで何かの不具合が生じた。ならば、この部屋の中にある。


 しかし異常の震源地ともなれば警戒しなければならない。危険なWOが野放しになった結果の異常かもしれないのだ。


「ルキウス様!」


 最大限警戒したが、アブラヘルが何事もなくブンダの瞳を発見した。それは普通の箱に入っていた。ハエが少しはついていたはずだが、きっと下が不衛生だからと気にしなかったのだ。検査員はそれなりの防護があったはずで、小さなハエを無害と判断したのだろう。事実、接触しなければ脅威ではない。


『なら、まずはもどらせてもらおうか』


 アブラヘルがブンダの瞳の上にルキウスを置いた。

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