宗教とは人を救い、時に人を争わせる
しばらく説明的でつまんないかもだけどサイドストーリで神様いっぱい出てくる予定。
このアルクイン王国は世界で一番大きな大陸の最西端に位置する。
大陸で一番大きい国は隣国のダウエル帝国だが、アルクインもそこそこ大きく力の強い国だ。
その強い国という条件には、もちろん軍事力、経済力、そして政治的な統制力というのは基本事項だが、魔法の研究の発展力と、技能の高さというのも重要な点だ。
竜が皇帝様をやってるダウエル帝国がある時点で、アルクインが一番になるのは不可能だ。
戦争しても勝ち目がない。
あちらはどこの国とも持ちつ持たれつで、あまり友好的な国ではない。
うちとは何とかうまくやっているようだが、コロコロと政権交代があるような安定しない国の中には無謀にも帝国に挑発を繰り返す国もあるようだ。
そんな例外もあるが、この大陸では一つ頭飛び出ている帝国を除いた、小さな小競り合いから戦争まで各国の争いは絶えない。
アルクインは帝国に次いで力の強い国のひとつなので巻き込まれることは稀だが、そんな争いの種というのは、案外小さいことであったりする。
土地が少ない国、土地が貧しく民が飢える国が、他国から奪ってでも国民を守りたいというなら、たとえ戦が原因で更に飢えさせてるとしても戦争の理由としては理解できる。
困っている訳では無いが現状に満足していない、鉱脈目当ての欲深い国、力を強くしたい国、戦いを好む王がいる国、これらの国は民のことをまるで考えていないことが多いので、大抵革命で滅んでいる。
……そして、何気に多いのが宗教戦争だ。
私からすればなんとも意味のわからない話だ、それぞそ信じたいものを信じればいいものを、他者に同じ神を強要してどうするのだか。
アルクインでも例に漏れず宗教は存在している。
アハル教という宗派で、七柱の神様を信仰している。
まず、神話は七兄弟の神様がこの世界を生み出し、神々から1つずつの贈り物を授かったことで人間は栄えた……って感じの冒頭から始まるが、それは結構どうでもよくて。
アハル教はこのアルクインの国教で、王族も貴族も、平民もこれを信仰している。
ダウエル帝国は、多種族国家なので国教がない。
そもそも世界の創造者を神と呼んで崇めているのは人間だけ。
実際には、彼らは神ではなくて精霊だ。
それぞれ、風、火、水、土、光、闇の精霊の王で、住んでいる場所も好みの食べ物も性格も、魔族や竜族なら知っていてもおかしくないってくらいには人間のいう神様感がない。
近くにいたら見えるし、明らかに他の精霊よりでかいし、精霊たちも王様って呼んでいるから確実だ。
意外と身近にいるもので、私も母がいない間は精霊王たちが遊びに来てくれたこともあった。
一番よく来てくれたのは、13歳になったら名前を教えてくれると約束したお兄さん。
風の精霊王で、アハル教では知恵と正義の神って呼ばれている、ライナグルだ。
私はライナって呼んでる。
それくらい本当に近い存在で、王たちは力が強いだけで、他は小さな精霊達と同じようなものだ。
移動できる場所が決まっている精霊も多くいるけど、基本的にあちこちふらふら飛び回っている。
だから私たちからは祈りを捧げる対象には見えないのだろう。
精霊王にはそれぞれの属性の精霊が仕えている。
仕えると言っても人間のような、利益が多い方に乗り換えるとか裏切りとか、事情によって変わるような主従関係ではなく、ただ力が強いものに従うという至ってシンプルなものだ。
当然、身分なんてものもない。
精霊たちは王にむかってもタメ口だけど、王はそれを気にしないし、むしろ王の性格によっては一緒になって遊んでいることもある。
精霊は、自由そのものと言っても過言ではない存在なのだ。
人間には、姿が見えないが故に、神の使いとして神聖視される精霊だけど、魔族や竜族からすると、精霊王同様、感謝や尊敬の対象であっても崇めたりはしない。
基本的には友達なのだ。
大陸全土の国々で、信仰されている神というのは、実は共通点がある。
違う宗派ではあるが、解釈が違うだけでもとの神話は同じなのだ。
なぜなら元ネタの精霊王がちゃんといるからね。
ライナ「私、なんだかんだで1話目から出てるんですね」
ジュリア「ライナが1番遊びに来てくれたしね〜」
ライナ「ザモス兄さんが先に目をつけてなければ私が加護を与えたかったのに……」
ジュリア「ライナに仕えるのも楽しそうだね〜」
次回も精霊さんの生態解説編です