子供は大人と関わりながら成長するらしい
R指定と残酷な描写ありは保険です。
森に囲まれた寂しい塔の最上階。
そこが私の家だ。
とある貴族の妾だった母は正妻に大層嫌われていたらしく、嫌がらせから身を守るためにと、本邸を出てこの離れの塔に移ったそうだ。
そこで私が生まれ、私と母は塔の上でひっそりと暮らしていた。
どうやら、母はこの塔から出ることを許されていなかったようで、私が産まれるまでは一人でお父様が来るのを待っていたのだという。
かく言う私も、はじめは隠れるように塔で過ごし、17年間、この中でのみ私は自由に行動できた。
自分から外に出たことは一度もない。
母と二人で住んでいた時も、母が出ていき一人になってからも、やっていたことは基本的に変わらなくて、私には小さな頃からずっと魔法だけだった。
子供の頃は“魔法で遊ぶ”だったのが、成長するにつれて、“魔法を勉強する”に変わっただけ。
気まぐれにふわりと現れる精霊さんたちが、色々教えてくれた。
母は、私が四歳の時に出ていったが、その間お世話をしてくれたり、お話を聞かせてくれたり、魔法の練習に付き合ってくれたりしたのもその精霊さんたちだ。
精霊さん曰く、私には魔法の才能があるらしい。
「せいれいおうざもらのかご」がどうのっていう話は当時の私には全く理解できない話だったが、
まあ要するに「精霊さんの王さまなんだね」ってことで落ち着いた。
屋敷の使用人が忙しなく働いているのを窓から眺めながら、沢山本を読んで、いろいろな魔法を試した。
父に見つかるまではそれなりに充実してたと思う。
それなりに成長すると、幼い頃に理解出来なかった精霊さんの言葉を理解できるようになった。
やけに優しいと思っていた精霊さんたちは、どうやら私の魔力が大好物だったとか、実は人間からは見えないという事とか、必要な量の魔力を与えれば精霊魔法を使えるとか。
精霊魔法ってのはすごく惹かれる。
私も使える?って聞いたら、余裕で使えるけど与える魔力を調節する練習をしないと、この塔破壊しちゃうよ、って言われた。そんなに強力なんだね。
そして、自分が結構やばいやつなんだってことも自覚した。
精霊王からの贈り物なるものが私にはあるらしく、それはどうやら珍しい力だから、他の人にバレたら鎖に繋がれて監禁なんてこともあり得るらしいので絶対にバレないようにしようと誓った。
どんな能力なのかは、結構頻繁に来てくれたお兄さんが教えてくれた。
厳しいけど、すごく優しくてかっこいい精霊さんだ。
多くの精霊さんたちは手のひらに乗るくらい小さいのに、お兄さんは人間の大人と同じくらいの身長だから不思議だなーとは思っていたが、彼は超強い精霊さんなのだとか。
名前は13歳になったら教えてあげると言われた。
一人暮らしではあったけど、精霊さんという話し相手がいたし、寂しいと思ったことは無かった。
気まぐれに訪れる精霊さんは、まるで籠の中の鳥だとか、自由になりたくないのとか、よく聞いてきたけれど、私には便利な能力があって、それを使いこなせて、大好きな魔法を勉強出来て。
そして、精霊さんたちと仲良くできて。
……こんなに恵まれているのにこれ以上どう自由になればいいのだと首を傾げていた。
塔での一人暮らしが実質終わりを迎え、初めて、母や精霊さん以外の人間の大人に関わった時、私はやっと精霊さんたちの言葉の意味を理解した。
……私は、もう自由な魔族の子供でいられない。
縛られる、人間の貴族になるのだ。
もう少しはやく気づいていたら、こんなめんどくさくなる前に逃げ出していただろうに。
それでも耐えてこれたのは、
結局、私が恵まれていたからなんだけど
初投稿でした。
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