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異世界で、片付けられない魔術師様の使い魔になりました!  作者: 林 ちい
異世界で、片付けられない魔術師様の使い魔になったみたいです。
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 御主人様に断捨離をーーーー"要る要らない”をしてもらう前に。

 あたしにはすべきことがあった。


 彼を知り、己を知れば、百戦して危うからずーー。


 有名な孫子の言葉……。

 意味は、戦において敵と味方のことを熟知していれば、負ける心配はないということらしく……競馬にお小遣いの全額を惜しみなく注ぐ祖父の大好きな名言だ。

 祖父は『彼を知り=馬のデータ集め』の部分だけを実行し、『己を知れば』の部分をスルーしているので滅多に勝てない。

 そんな祖父を反面教師に、あたしはこの汚部屋との闘いに向け行動を開始した。

 あたしはこの汚部屋の、この家の情報が欲しい。

 今のあたしにはいつものように心強い仲間達(掃除家電、掃除用具、etc)がおらず孤立無援。

 己の置かれた状況で最善の戦いをするには"知る”ことは重要だもの!


「御主人様、この家の間取りを教えて下さい。各部屋の床面積の対比も分かるように、なるべく正確に紙に記入してもらいたいんです」


 ベッドで向かい合って座る御主人様に、そうお願いすると。


「この家の見取り図ってことかい? 良いけど……紙とペンが必要だね。用意するから、ちょっと待ってて」


 御主人様はポケットから小さな折りたたみナイフを取り出した。

 筆記用具ではなくナイフが出てきたことに、首を傾げた私の目の前で。


「はい、ありがとうござっ……なっ!? 何してるんですかっ!?」 


 御主人様は左手人差し指の先に躊躇なくナイフで傷付け、血の滴る指先で枕に円を書いた。

 するとその円が赤く発光し、御主人様はそこにズボッと左手を突っ込っこんだ。


「何って……紙とペンだけど?」


 引く抜くと、その手には万年筆と便せんが握られていた。

 役目を終えた血の円は急激に発光が弱まり消え……枕には染み一つなかった。


「なっ……」


 絶句するあたしに御主人様は、万年筆で便せんにすらすらと見取り図を書きながら言った。


「この散らかった部屋の中を探すより、魔術を使った方が早いし簡単で楽だからね。いつも必要な物は新しい物を買うか、買いに行く時間がない急ぎの時はこうやって取り出してるんだ」


 な、なんですってぇええ~!?


「ちょ、ちょっと手を見せて下さい!」

「え? もう血は止まっ……カノコ?」 


 強引に見せてもらった御主人様の手は。

 その指先は、よく見たら細かな傷だらけだった。

 古いものから新しいものまで……。


(…………探し出すより、自分を傷付ける方が簡単で楽っ!? そんなの、絶対に間違ってる!)


 御主人様が書いてくれた見取り図をガン見しながら、あたしは心の中で叫んだ。


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