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駆除せよ
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白髪の少年

本編、スタートです。

 リーゼが『白銀しろがねの弓矢』に入って、一か月が経った。現在彼女は、『白銀の弓矢』に支給されている小屋のような建物――フラックス郊外にある――で暮らしている。

 彼女がこの一か月で行ったことといえば、掃除や洗濯、料理などの雑用や剣術の訓練、そして何件かの任務である。依頼された任務は破壊された国営のマイアの研究所跡地の見張りのみであった――この任務は本来正規軍の兵士が行うものであるが、その兵士が土人形の襲撃によって足りなくなっており、小さな傭兵団をかき集めて人数の埋め合わせをしているのが現状である。

 彼女らは二・三日見張りを任されたが、破壊された施設の瓦礫を取り除くわけでもなく、夜盗の襲撃もなかった。眠い目をこすりながら、時にザウバーにどやされながら、リーゼは任務を着実に遂行した。

 報酬はそれぞれの口座に振り込まれ、引き出す際には中央政府の『兵糧部』を通して現金として渡される。リーゼは渡された報酬の八割をエウロペに仕送りとして送った。ちなみに一回の任務で彼女が稼いだ報酬は十万アール――『アール』とは、シューメルで通用する貨幣の単位である。シューメルにおける丸パンの値段の平均が一〇〇アール、鳥もも肉の値段の平均が八五アール、市販の蒸留酒の値段の平均が三〇〇〇アールである――だった。なお、ザウバーとコウは彼女の二倍以上の金額を受け取っている。



 『白銀の弓矢』は、本日は珍しく休暇中だった。晴れ渡った空の下、小鳥がさえずっている。

 しかし、建物の外では木と木を激しく打ちつける音が何度も聞こえる――リーゼがザウバーに剣術を叩きこまれているのだ。その様子をコウが一人で建物の壁に寄りかかりながら何の気なしに見ている。

 リーゼが腹の底から声を出し、ファルシオンに似せて作られた木製の模造剣をザウバーめがけて打ちつける。ザウバーはその一撃を涼しい顔をしながら、ロングソードを模した木製の剣で弾き飛ばした。

「まだまだ!」

 リーゼは諦めずにバックステップで下がりながら体勢を立て直し、武器を構え直した後一直線に走り出した。ザウバーも彼女を迎え撃たんと剣を目の前で構える。

 するとリーゼは、ザウバーの目の前で左に飛んだ。大地を蹴って、目の前の相手から消えようとする。ザウバーはその動きを目で追うだけでそれ以外は何もしようとしない。

 左に回り込んだリーゼは動かないザウバーに向かって模造のファルシオンを横に薙いだ。それをザウバーは難なく剣で受けて弾き、彼女の方へと急速に向きを変えてがら空きの身体に一撃を叩きこもうとする。

「……食らわない!」

 リーゼは後ろへと飛んで再び体勢を立て直そうとする。剣は彼女にぎりぎり当たらず、空気を切り裂いたような音が二人の耳に入るのみである。後ろに下がった彼女をザウバーは追おうともせず、その場で剣を構え直した。

 再びリーゼが走り出した。今度は細かく移動しようとせずに真っ直ぐに突っ込む。刃が当たる間合いまで詰めた彼女は、ザウバーの目の前で姿勢を低くし、武器を下から上へと振り上げる。狙いは相手の手首だ。

 ザウバーは彼女が放った一撃を剣で難なく受け止めた。それだけでなく、彼はリーゼの武器を叩き落そうと力を入れて押し始めた。それでもリーゼは歯を食いしばり、ザウバーの顔の前まで剣を持っていく。

 ザウバーがリーゼの刃を弾いた。乾いた音が短く響くと、リーゼはザウバーの胸元めがけて武器を振り始める。それでもザウバーは一撃一撃を涼しい顔で剣を器用に使って防いでいる。木と木を打ちつけ合う音のみが二人の周りを支配する。

 すると、ザウバーが動いた。精神を研ぎ澄ましたようなオーラをリーゼは感じ、一瞬動きを止めてしまった。目が合うだけで相手を射殺さんばかりの威圧感を覚える。

「隙有り」


 乾いた音。それがリーゼの耳に入ると同時に、彼女は右手にジンとした痛みを感じた。

 彼女の模造剣が、ザウバーの一撃によって弾き飛ばされて宙を舞う。大きな弧を描き、数秒後、剣は彼女の後方に乾いた音を立てて落ちた。


 暫し呆然としていたリーゼは目の前の事実に気付くと、力なく座り込んだ。そこにザウバーが近づいてくる。

「……また負けた」

「君は馬鹿正直に突っ込み過ぎだ。もっと相手の死角を突くとか、フェイントをかけるとか……やりようはあるはずだが」

「やってるもん……」

 リーゼは『白銀の弓矢』に入って以降、模擬戦で二人に勝ったことが無い。コウには何もさせてもらえないほど容赦なくやられ、ザウバーにも一方的にやられている。実際に彼女はザウバーに死角を突く戦法やフェイントのかけ方を教わってはいるが、それを模擬戦で通用させることができていない。

「でも、始めにやった時に比べると、筋力はついてきたと思う。俺が力を入れても自力で返せたからな」

 しょげたままのリーゼに対して、ザウバーは隣に座って笑いかけた。それを見たリーゼはふくれっ面になり、その後ため息をついた。

「ザウバー……ずっと思ってたんだけど、貴方も剣の方がいいいんじゃないの? 絶対そっちの方が強いって」

「俺は銃の方がいい。コウと役割が被るってこともあるし、何よりこっちの方が扱いやすい」

 ザウバーがホルスターを指でつついて示す。


 今やリーゼはザウバーにため口で接することができるほどに距離が近づいていた。ため口は、ザウバー側が同じチーム同士で距離を作らないように提案したのである。その結果、リーゼはザウバーとはすぐに馴染むことができた。

 しかし、コウとは仲が良くなるどころか一切口をきいていなかった。リーゼが話しかけても一切無言を通し、コウの方から話しかけてくることは皆無だった。彼女はコミュニケーションを取ろうとしないコウに苛立ちを募らせて度々怒声を彼にぶつけていたが、彼は表情一つ変えずに謝罪の言葉をぽつりと言うのみであった。そのようなこともあり、コウの印象は彼女にとってすこぶる悪い。


 ザウバーはリーゼに自身の二挺拳銃を見せた。鈍い銀色が太陽光を反射して眩しく見える。

「この銃は他のものと比べると少し特殊だ」

「どの辺が?」

 ザウバーが自身の銃を見せて語りだす。

「これは『装具そうぐ』と言って、普通の武器とは違う」

「装具? どこが違うの?」

「こいつは『マイア』の力を使って攻撃するんだ。こいつの場合は、弾倉があるところに『マイアス』を埋め込んでる」

 そう言うと、ザウバーは銃から弾倉を抜き取ってリーゼに見せた。そこには、透明な石のような塊が弾の代わりに詰められている。光を反射し、まるで宝石の類のように輝いている。これがマイアスなのか――彼女がその綺麗さに見惚れていると、ザウバーは慣れた手つきで弾倉を銃に戻した。

「装具というのは、マイアが引き起こす様々な力を利用して相手を攻撃したり、自分を守ったりすることができる。装具の中には、マイアで自分の身体を強化させることができるのもある。どれも一般の武器よりも強い力を発揮する」

 リーゼが理解したという風に頷く。

「ただ、装具を扱うにはリスクもある」

「どんなのがあるの?」

「マイアを操るには、持ち主に相応の力が必要となる。装具を使いすぎて体力を消耗して倒れる場合もあるし、逆に自分を傷付けてしまう場合もある。扱うにはそれなりに力をつけないといけない」

 ザウバーが言うと、リーゼは再び二挺の拳銃をまじまじと見つめた。このような武器を易々と使いこなしているザウバーを改めて腕の立つ傭兵だと認識した。

「……さて、飯にするか。食べたら訓練再開するぞ」

「分かった!」

 ザウバーに言われて、リーゼは立ち上がり、走って建物の方へと向かい始める。その様子を見てザウバーは静かに微笑んでいた。

「……まだまだ元気だな」

 これだけ剣術を行っても疲れた顔一つせずに走り回っていることに、ザウバーは感心していた。この体力をこれから活かせれば――そんなことを考えながら、彼は建物に向かって歩き始めた。



 昼食は、丸いパン一個、獣肉の甘辛ソテーに青菜を添えたもの、そして芋を煮込んだスープだ――ソテーとスープはリーゼが調理した――。三人は並べられた料理に舌鼓を打つ。とりわけ気にいっているのはコウで――彼の無表情からは読み取ることは難しいが――、リーゼの作った料理はいつも一番先に食べ終わっている。今回も例外ではなかった。

「ごちそうさま」

 木製の食器を台所まで運ぶコウ。そしてそのまま自分が使った食器を洗い始める。自分で使った食器は自身で洗うのがこの傭兵団のマナーとなっている。

「コウ、美味しかった? スープには特に自信があるんだけど」

「……」

 リーゼににこやかに質問されても、コウは黙々と食器を洗うのみである。少し待っても返事が来なかったので、彼女の表情は曇り、コウを睨むような目つきになった。

「……コウ?」

 あからさまに機嫌を悪くしても、コウは何一つリーゼに興味を示さずに部屋へ行ってしまった。苦笑しているザウバーを尻目に、リーゼはため息をついた。

「……どうしていつもこうなんだろう? 私、何か悪いことした?」

「まあまあ……。俺に対してもあいつはそうだ。いつか話してくれるさ」

 ザウバーがリーゼを宥めると、彼女が彼の方を向く。

「……コウのこと、分からない」

「実は俺もなんだ。あいつとは長い付き合いだけど、未だによく分からないところがある」

「……じゃあ、ザウバーはコウとどうやって知り合ったの?」

 リーゼが首をかしげると、ザウバーは真面目な表情に戻った。それにただならぬ雰囲気を感じたリーゼは姿勢を正す。

「……あれは、初めての襲撃の時だったな……」

「襲撃って……あの化け物たちの?」

「ああ。今から半年前のことだ」

 リーゼはあの時の土人形たちを思い出して身を震わせた。あの悪夢のような現実は今でも彼女の頭の中にべったりと張り付いて残っている。彼女は胸の辺りを強く握りしめる。

 ザウバーは、現在から半年前のことを語り始めた。



 ――半年前、ザウバーは既に傭兵として活動していた。

 その時の彼は、『べリアル山』というマイアスの鉱山に隣接しているマイアの研究所へと向かっていた。その研究所が、初めて土人形に襲撃されて崩壊した所である。既に敵影は消えていると伝えられており、彼に課せられた任務は研究所周辺と鉱山の護衛であった。

 そこの鉱山はシューメルでも指折りの規模の大きさを誇っており、そこのマイアスを国に供給できなければ国が傾きかねないとさえ言われている。そのことをザウバーは知っており、単なる護衛の任務でも細心の注意を払って臨まねばと意気込んでいた。

 ザウバーが現場に到着した時、彼は目を疑った。

 研究所はものの見事に廃墟と化しており、再建にはかなりの時間がかかることを予想させた。そこを守っていた兵士たちは一切見られず、全て死体になってしまい自身が来る前に全て処理されたのだろうと彼は察した。研究所の中は傭兵は立ち入る権限を持っていないので、調べることができなかった。しかし彼はその前に、べリアル山の周りを護衛するように命令された。彼は指示に従って研究所だったところを後にした。



 ザウバーはべリアル山を夜通し護衛していた。この世にはマイアスを盗んで闇市で売りさばいている悪徳商人が存在するので、彼らの手が及ばないように神経をとがらせて山中を駆け回った。

 日が暮れたころ、あらかた調べ尽くしたザウバーは採掘場へと向かった。既に人影は無く、採掘のための道具や瓦礫がそこら中に散乱している。彼が土を踏みしめる音しか周りには響いていない。周りに血痕が残っていないことや荒らされた形跡がないことを確認したザウバーは、鉱山には踏み入れられていないことを察した。

「……これで終わってくれればありがたいんだが」

 ザウバーはため息をついて近くにあった大きめの瓦礫に腰を下ろした。彼の目の前には、ぽっかりと空いた洞窟がある。その入り口は木の柵で封鎖されており、傭兵の立ち入りはできないと彼は事前に警告されている。制約が多すぎると彼は心中で思っていたが、任務を遂行することを優先させた。

 兵士たちがここに着くまで見張っていよう――そう思っていた矢先だった。


 洞窟の方から、誰かが歩いてくる音がした。よく響き、ザウバーの耳を刺激する。


 ザウバーは反射的にホルスターから拳銃を抜いて洞窟の方へと銃口を向けた。周りが暗いので、どこまで近づいているのか、そもそも近づいてくるものが何なのかが分かりづらい。彼は生唾を呑みこみ、目の前に迫ってくる何かに全神経を集中させた。

 すると、おぼろげながら人型の何かが近づいてくるのが彼の目に見えた。銃を握る力が強くなる。

――……盗賊か? 生き残りの兵士か? それとも……。


 すると、柵の前で何かが音を立てて倒れた。


 ザウバーはハッとした顔で柵の前まで走り寄った。勿論、銃は構えたままで警戒は怠っていない。

「……誰だ?」

 ザウバーが目の前に倒れている『人』を覗き込んだ。

 彼は呆然としてそれを見た。


 腰布一枚しか身に付けていない痩せこけた少年が、そこに倒れていた。髪は真っ白で、体躯も病的なほどに白い。不思議なことに、その少年は鞘に収まった剣を一本抱えていた。

「おい! 君、大丈夫かっ」

 ザウバーが呼び掛けるが、少年は返事をしない。うつ伏せになっている彼を仰向けにすると、目を閉じて苦しそうに息をしていた。

「今運んで――」

 ザウバーが少年を背負おうとした時、彼の身に強烈な身震いが起こった。心拍数が上昇し、呼吸が苦しくなるのを感じた。今まで経験したことのない気持ちの悪さが彼を襲う。まるで生ぬるく粘性のある液体で毛穴の一つ一つまで包み込まれているような感覚である。ザウバーは少年から後ずさり、息を荒げながら尻餅をついた。

「何だ……この感触は……」

 ザウバーはこの気持ち悪さで暫く動くことができなかった。何が原因なのか――彼は冷や汗をかきながら思案する。

 ふと彼は、少年が持っているブロードソードに目をやった。気味の悪さはそこから感じる――ザウバーは断定した。この剣が何なのか、そもそもこの少年は何者なのかは、現時点では分からない。

 彼は気持ちの悪さを抑えて立ち上がり、少年を剣ごと運び始めた。剣の重さを合わせても、少年は軽かった。それでも謎の気味の悪さによって、彼は鉄の塊を背負っているかのような重圧を感じていた。

 ザウバーはベースキャンプまで彼を背負って運び、そこへ戻ると少年と一緒に倒れて眠ってしまった。兵士たちが驚愕して駆けつけたのは言うまでもない。



 ザウバーはベースキャンプのテントで目を覚ました。彼は飛び起きると真っ先に外に出て、あの少年がどこにいるのかを兵士たちに尋ねて回った。話を聞くと、あの少年はベースキャンプに留まっている馬車の中で未だに眠っているという。彼はすぐにそこへと向かった。

 兵士たちに要件を言って通してもらい、ザウバーは馬車の扉を開けた。そこには薄い毛布をかけられて眠っている少年の姿があった。彼が毛布をめくると、あの剣も少年の隣にきちんとある。

「傭兵、こいつは何者なんだ?」

「……分からない。ただ、何故か鉱山の採掘場に現れて、目立った傷もなくこうして生きている」

「……あの剣の近くにいると気持ちが悪くなる。早く閉めてくれ」

 兵士に話を聞いてもう一つ分かったことは、少年が持っている剣に誰も手出しできていないことだ。剣に触れようとするとザウバーと同様に気味の悪さに襲われて誰も手出ししたがらないのだという。なのでこの剣は少年の傍に置いたままとなっている。

 ザウバーが兵士の一人と話していると、少年の瞼が僅かに動いた。それをザウバーは見逃さず、兵士を制止して少年に注目し始める。

 少年の目が、長い時間をかけてようやく開かれた。少年が毛布をどけて、上半身を起こす。痩せこけた半裸の上半身が露わになった。

「気が付いたか、少年」

 ザウバーは少年に微笑みながら接し始めた。少年は口を半開きにしてザウバーを凝視するのみである。

「君の名前を教えてくれないか?」

 呆けた顔で暫くザウバーを見つめる少年。笑顔を絶やさずに少年と向かい合うザウバー。彼らの間に、長い時間が流れた。

 すると少年が目を見開いた後、頭を抱えて苦しそうに呻き始めた。ザウバーが、大丈夫か、と声をかけて少年を落ち着かせようとするが、一向に落ち着く気配を見せない。ついには周りの兵士たちも武器を持って集まり始めた。

 しばらく経つと、少年が頭から手を降ろした。息は荒いが幾分か落ち着いたようである。ザウバーはホッと胸を撫で下ろすが、周囲の警戒は解けていない。

「よし、もう一度訊くよ。君の名前を教えてくれないか」

「……ゥ」

 少年が極々小さい声を出した。ザウバーは笑顔で、もう一度言うように諭した。


 すると、少年は今度はザウバーに聞こえるように声を出した。

「……コウ」


 これが、ザウバーとコウの出会いだった――



 リーゼはザウバーの話を興味津々に聴いていた。気が付くと、彼女の胸の痛みは取れて熱心にザウバーの方へと意識を集中させていた。

「……そんなことがあったんだ」

「ああ。俺も名前くらいしか分からない。どこから来たのか、いつからこの洞窟にいたのか、そもそもコウが何者なのかも未だに分からない」

 コウについてはザウバーすらも分かっていないことをリーゼは理解した。それを聞き、彼女はますますコウについて知りたいと欲するようになった。しかし、彼に訊いてもまともな答えは得られない。

 すると、リーゼが難しいことを考えているかのような顔をしているので、ザウバーが微笑んだ。

「まあ、いずれ話してくれるさ。俺はそう信じてる」

「……そうだといいんだけどね」

 リーゼはザウバーの笑顔につられて微笑んだ。時間はかかるかもしれないが、きっと分かりあえるだろう――彼女はザウバーの微笑みを見てそう思えるようになった。

「さて、私もごちそうさま」

 リーゼが食器を持って台所へ向かおうと席を立つ。いつの間にか、彼女の胸の中にコウへの怒りは消えていた。


 すると、玄関のドアがノックされた。リーゼとザウバーが一斉に其方に注目する。


 ザウバーが無言で席を立ち、ドアへと向かう。リーゼはその場で棒立ちになっている。

「どちら様?」

 ザウバーがドアの向こうの人物へと声をかける。彼の両手はホルスターに添えられており、警戒を怠っていない。

「兵糧部の者です。ドアを開けてください」

 その者の言葉を信じて、ザウバーがドアを慎重に開ける。

 そこには、正装した眼鏡をかけた男が立っていた。近くには馬車が停まっている。それを見たザウバーは警戒を解き、口角を上げた。

「任務か?」

「はい。依頼主様がお呼びでございます」

 その言葉を聞き、リーゼがコウを呼びに足を進めた。




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