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魔王と勇者の出逢い方  作者: 行方不明
37/39

<命>

*星物愛護センター シンシア


魔王「あの」


勇者「こんにちは!」


魔王「アクスナイトという者なんですけど」


勇者「はい!お待ちしておりました!」


美人「勇者さん!ケルベロスの散歩行って来ますね!」


勇者「行ってらっしゃい!お気をつけて!」


魔王「ケルベロス!?」


勇者「はは、あだ名ですよ」


魔王「……あの、それと」


勇者「はい?どうされました?」


魔王「勇者さん、というのは?」


勇者「ああ、あだ名じゃなくて間違いなく本人ですよ!これも僕の仕事の一つなんです。ボランティアといいますか」


魔王「あ、そうなんですか」


勇者「ええ。では、さっそくわんこに会いに行きましょうか」


魔王「はい!」


お外なのよ。


勇者「何だこの牛車!」ビックリ


魔王「メルセデスバイソンです。馬より速いんですよ」


勇者「メルセデスバイソン?あれ?確かそいつ、魔族領土にしかいないはず……」


魔王「あわあわ……」


勇者「お客様。大変、申し訳ございませんが、今から別の所へ参りましょうか!」にこっ


魔王「私は魔王だ」


勇者「お前だったのか」


魔王「暇をもて余した、魔王の物見遊山」


勇者「ま、なおさら行くところ行こうか」ガシッ


魔王「断る」ザッ!


勇者「ここで雌雄を決するか?」スッ…


魔王「私は戦いに来たのではない!」


勇者「……」


魔王「わんこに会いに来たのだ!!」


勇者「何だか疲れてきた」


魔王「さ、案内してくれ」


勇者「わんこって、そっちにいないけど、一緒に暮らしたことはあるのか?」


魔王「断じてない!」


勇者「いい迷惑だよ。というか、そうだ。持ち込み禁止じゃないか」


魔王「良い!」


勇者「こっちが良くない」


魔王「頼む!私達の仲に免じて!」


勇者「ええー。初対面だしーラスボスだしー口臭うしー」


魔王「にゃんこと取引だ」


勇者「よし。国にかけあおう」


ほーほけきょ。


勇者「いいって」


魔王「ありがどう勇者ー!」号泣


勇者「おっちゃんが気持ちの悪い!離れろ!」


魔王「さ。私のわんこに会わせてくれ」


勇者「飼育用品は?」


魔王「は?」


勇者「わんこのこと、何知ってる?」


魔王「可愛い」


勇者「よし。帰れ」


魔王「なぜだ!なぜなんだ!!」


勇者「こい」


とてとて。


魔王「この機械は何だ?」


勇者「今、べびーわんこを殺しているところ」


魔王「何だと!?貴様おごるなよ!これはどういうことだあああ!!」グワシッ!


勇者「片手で……首を……やめ……ろっ!!」スタッ!


魔王「話す気になったか?」


勇者「まずは聞く気になれ!いっぺんぶちのめすぞ!!」ブチギレマンボウ


魔王「ごめんなさい……」シュン…


勇者「さて、いいか。少し覚悟しろよ」


魔王「その木箱は?」


勇者「ここにこうやって、べびーわんこを詰めているんだ。で、それの後に殺される」ぱかっ


魔王「スヤスヤと可愛い……しかしなぜ殺す必要がある」ツンツン


勇者「身勝手な人間に棄てられたんだよ。望まぬ命だと」


魔王「そんな……」


勇者「そして居場所がないから、こうするしかないんだ」


魔王「居場所が?」


勇者「今、わんこ舎も里親もいっぱいいっぱいなんだ。それに、大きくなると世話が大変だし、それぞれ一匹分のスペースを必要とする。あとは働く人間の数も含めて、とにかく色々と限りがあるんだよ」


魔王「殺さずとも野生に」


勇者「それは無理。人間社会の一部となってしまったからな」


魔王「そうか。複雑な事情が多くあるのだな……」


勇者「私が魔王にこの現実を見せたのは、命の重さを知ってほしかったからなんだ。こんなのを見せて、本当にすまない」


魔王「いや、ありがとう。改めて覚悟ができた。それで、私はどうすればいい?」


勇者「一緒に暮らすための専門書を買って、あと飼育用品も買い揃える。さ!行くぞ!」


*イッツ商店街


勇者「この噴水広場で休憩にしよう」


魔王「このバニラソフトとやら、ワームミルクソフトよりうまいな」ペロペロ


勇者「普段、そんなゲテモノ食ってるのか?人間で良かったー」


魔王「はふー……」タメイキ


勇者「ちょいちょい気持ち悪いの挟むな。金を返してもらうぞ」


魔王「なぁ、勇者。私はわんこと幸せに暮らせるだろうか?」


勇者「ああ、今の優しい魔王なら」


魔王「ふにゅう……」


勇者「初めてわんこと暮らした人が残した、こんな言葉がある」


命。

この心象文字は、この星に生きとし生ける星物の、逢愛傘を表したように私は思う。

この星に生きる命は巡り逢い、共に愛し合うことで、その輝きと価値を増す。

それは空に浮かぶ太陽よりも眩く、月よりも美しい。


魔王「では、私達も……」ぽっ


勇者「はい台無死ね!」


魔王「勇者よ。私は努力するとここで約束しよう!必ず、わんこを幸せにしてみせる!!」


勇者「じゃ、今日は私と同じ宿に泊まるといい。色々と教えてやろう」


魔王「ありがとう、友よ」


勇者「敵だ敵。そこは間違えるな」


魔王「はっぷっぷー」プクー


勇者「…………」無視


*ラブ宿


勇者「ふーん。そっちには星物が家族になるという概念はないのか」


魔王「ああ。そもそも敵対するものは星物であれ同じ人であれ、皆敵という考えだ」


勇者「うわー……こっわ」


魔王「しかし私は先代達と違い、命とは尊いものではないかと疑問に感じた。なのでそこに関して、世治しをしているところでな。その一貫として、初めに、私がわんこと暮らすことを決めたんだ」


勇者「えらいえらい。というか、にゃんこじゃなくてわんこ?」


魔王「にゃんこはとても気まぐれでな。それに比べて、私の聞いた話では、わんこには知恵があって、人の気持ちまで理解するらしいじゃないか」


勇者「まるでスパイから聞いた情報みたいだな」ジトー


魔王「さー勉強勉強」ふむふむ


勇者「ま、頑張れよ。おやすみ」


*翌日、シンシア


勇者「この赤毛のわんこと、一番相性が良かったのか」


魔王「ざくろ!よーしよし!私も会いたかったぞ!」なでなで


勇者「ざくろ……」


魔王「可哀想なことに。この子、虐待を受けていた子なのだろう?」


勇者「だから人が苦手なはずなんだけど……あ、人に思われていないのか」


魔王「勇者、それはひどいぞ!」プンッ!


勇者「はいはい。もういいから、さっさと帰ってくれ」


魔王「今度は、貴様が私に会いに来いよ。にゃんこを渡さねばならぬからな」


勇者「いいけど。ワームミルクソフトとか、ゲテモノでもてなすのは止めてくれよ」


魔王「ははは!約束しよう!」


勇者「ざくろ。幸せになるんだぞ」なでなで


ざくろ「かぷり」


勇者「あ」


魔王「ふふん」ドヤア

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