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魔王と勇者の出逢い方  作者: 行方不明
29/39

珈琲と愛は熱い時が一番である

*ハレバレー書店


勇者「この谷全てが書店かあ……目眩がするなー」


てくてく。


勇者「んー……どこを探せば……あれれ?」


書物検索陣。


勇者「まあ!文字が浮かび上がって、探したい本が探せるじゃない!」


ままーあのひっくちゅん!

しっ、見ちゃいけまっくしゅん!


勇者「ほほう、腕に所在記号が。これは助かりますな」


てくてく。


勇者「と、ここかな。記号も消えたし、間違いないよね」


『イラストで学ぶ宿敵の倒し方』


勇者「あった」


一つの本に二つの手。

重なるハンド高まるハート。


魔王「おや」


勇者「えと?あー……魔王さん?」


魔王「貴様は勇者だな」


勇者「何よ、この本を読む気?」クスクス


魔王「笑える立場か?」


勇者「私はこちらを取ろうとして、間違えたんです」プンプクー


『イラストで学ぶ春菊の炒め方』


魔王「ほう」ニヤニヤ


勇者「わ!私は春菊が好きなの!」アセアセ


魔王「そうか。では、この本は私が頂こう」


『イラストで学ぶ趣味の選び方』


魔王「間違えた」


勇者「何をはじめるんですかあ?」ニヤニヤ


魔王「最近、ガーデニングを楽しんでいる」


勇者「!?」


魔王「春菊もあるぞ」


勇者「いりません。そもそも、魔王が何をやっているのよ」


魔王「私はカッフィが大好きでな。王都を、カッフィが育つ土地へ移したほどだ」


勇者「だから、和気あいあいとした集合写真と、新しい王都への地図がしっかりと置いてあったのね」


魔王「そう言うことだ。ちなみに、カッフィの専門書を買うために、ここからすぐ近いぞ」


勇者「知ってる」


魔王「では話を戻して。それから私は、数年前に王都全土にカッフィの木を植えたんだ。それが最近、ようやく収穫が可能になってな」


勇者「へー」


魔王「手間をかけて豆を仕上げ、心を込めて淹れたカッフィは、とてもとても美味かった。それは悪魔のように黒く、地獄のように熱く、天使のように純粋で、愛のように甘い、最上のカッフィだった。私はそれを、ハッピィカッフィと名付け、国の特産品とした」


勇者「ふーん」


魔王「言うな。貴様へのもてなしも、きちんと準備が出来ている」フッ


勇者「そ」


魔王「さあ、共にカッフィを飲みにゆこう!」


勇者「結構です」プイ


魔王「遠慮するな。繊細な砂糖も、濃厚なミィルクも用意している」


勇者「私、カッフィ苦手なんです」


魔王「案ずるな。そんなこともあろうかと私は、アイスにエスプレッソをかけるスウィーツ、アフォガードを学んだ。それにフルーツやナッツを添えて、いかがかな?」


勇者「やだなにそれ、美味しそう」ジュルリ


魔王「必ず御気に召すはずだ」


勇者「んじゃあ……いこっかな!」


魔王「ああ、共に参ろう!」


パパーあの人。

私の偽物か……放っておけ。

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