悠刻
*魔王城(タワーマンションタイプ)
勇者「魔王や。ようやく見つけたわい」
魔王「あー?」
勇者「魔王や。ほれ、見えとるかね」
魔王「あーなんだって?」
勇者「勇者だよ。勇者」
魔王「夕飯?あーそうかい」
勇者「今は…………まだ、あー?その時計、小さくて見え辛いのう。あー……まだ昼前じゃ」
魔王「ええ?」
勇者「まだ昼前ですよー!」
魔王「あーそう」
勇者「っせいおぅ……。ここ、座らせてもらうよー」
魔王「あー?あんた誰だい?」
勇者「だから勇者だよ」
魔王「夕飯?おお、もうそんな時間かい」
勇者「ゆーうーしゃー」
魔王「あー……おお!勇者かい!」
勇者「そうだよ。互いに年をとったもんだね」
魔王「あー……いつぶりだ?」
勇者「はじめましてだよ」
魔王「おお……もう夕飯かー」
勇者「何だい。腹減ってんのかい?」
魔王「えー?何だって?」
勇者「腹が減ってるのかね!!」
魔王「あー。はいはい、何か食うかい」
勇者「あーもう、そうするかい」
魔王「えー……あー。あんた誰だい」
勇者「ゆーーーしゃーーー」
魔王「おお!そうかい!」
勇者「飯はいつも、どうしてんだい?」
魔王「飯はのー。あー……夕飯かい?」
勇者「夕飯好きだねえ」
魔王「ああ、ああ」にこにこ
プルルル。
勇者「おや。電話だよ」
魔王「えーあ、あいあ……」オロオロ
ガチャ。もしもし?
勇者「勝手に繋がるたあ、便利になったもんだねえ」
魔王「もしもし?」
おなごだよ!今日、仕事もうないから!久しぶりにお昼一緒に食べようね!役所には連絡したから!
魔王「そうかいそうかい」
じゃ!もう着くから!
ピッ!
勇者「えらく若い声だね。誰だい?」
魔王「ゆうしゃー……だってさあ」
勇者「あんた……。そうか、わしより歳上じゃもんなあ」
魔王「あんた誰だい?」
ただいまー!
おなご「誰!?」ビクッ!
魔王「お帰り」にこにこ
勇者「はじめまして。勇者です」これ紋章
おなご「へえ……勇者って本当にいるんだ……」
勇者「もうじいさんだけどねえ。ほほほ」ぺこり
おなご「私は妻のおなごです。ようこそ、勇者様」
勇者「うぇ!?つはっ!?」すぽん!
おなご「入れ歯がー!」びっくり!
勇者「ほほ、失礼。……しかし、ずいぶんと若いねえ。いくつだい?」
おなご「え?ああ、それは内緒です!」うぃんく!
勇者「ほ……ほーそうかい。うらやましいねえ……」ボソッ
おなご「さて。一緒に、お昼召し上がりますか?」
勇者「いいのかい?」
おなご「はい、せっかくですし!それに、いつもは。日暮れに二人だけで寂しいので」
魔王「…………」スヤ…
勇者「んー……んにゃ、おいとまするよ」
おなご「でも、せっかくいらしたのに」
勇者「わしは毎日、徘徊に忙しいんじゃ。ではの」
おなご「はぁ……」スクッ
勇者「あ!見送らんでいい見送らんでいい!では、元気でな!」
おなご「ええ、お気をつけて!」
……バタン。
おなご「あなた」ユサユサ
魔王「んー?ああ……おなごかい」
おなご「ご飯にしましょう。おかず、もらってきましたから」
魔王「もう夕飯かい?」
おなご「いいえ、お昼ですよ!」にこっ
魔王「そうかい。お昼かい」にこにこ




