虹を見つけた日
*帝都レイニーポピー
男「この街は、雨がなかなか止まないな……」
女「年に数えるほどしか、お日様は見れません」
男「あ、すみません。勝手に雨宿りしてしまって」
女「ううん。構いませんよ」
男「ここ、素敵な花屋敷ですね」
女「花屋敷だなんて、そんなこと言われたの初めてです。ここはただのお花屋さんですよ」
男「ただの花屋さんだなんて。お店の中に木が生えているの、他に見たことないですよ」
女「あれはね。お婆様が好きだったお花の木なの」
男「あの花の名前、なんて言うんですか?」
女「カルミア、ていうの。名前も姿も可愛いでしょう?」
男「はい。僕も今、好きになりました」
女「ふふっ。本当?」
男「ええ、本当です」
女「ありがとう。きっとお婆様も喜んでいるわ」
男「……あの」
女「はい?」
男「あなたの好きな花は、何ですか?」
女「ひまわり。お日様みたいで大好きなの」
男「この街では見かけませんね。たくさん、花屋さんがあるのに」
女「この街にお花屋さんが多いのはね。お花が虹を描いてくれるからよ」
男「あー、なるほど」
女「この街の人達は、きっと、みんなが虹を愛していると思うわ」
男「虹、はやく見れるといいなー」
女「うん。そうですね」
男「……あ!雨が止んできましたよ!」
女「本当だ!」
男「早く早く止んでくれ!」おねがいー
女「お日様、お願いします!」おねがいー
男「あれ!あれ見てください!」
女「わぁ……!綺麗な虹ー!」
男「この街で見れて良かった……」
女「どうして?」
男「どこよりも綺麗だからです」
女「ふふっ。本当に?」
男「ええ、本当です」
女「そう言われると、私、何だか嬉しいです」
男「嬉しい、ですか?」
女「うん。虹は、昔からこの街にとって、私にとってもかけがえのないものだから」
男「そっか……」
女「お日様も素敵……」
男「僕、そろそろ行きますね。雨もそんなに降っていないし」
女「あ、ちょっと待ってて」
とととっ。
女「はい。これ持って行って」
男「傘……いいんですか?」
女「うん!私とあなたの出逢いの記念に」
男「ありがとうございます。いつか必ず、ちゃんとお返ししますね」てれ
女「返さなくて構いませんよ」
男「いえ、いつか必ずお返しします。ひまわりをたくさん添えて」
女「あら……」てれ
男「では、失礼します」
女「はい。お気をつけて」
男「…………やっぱり、最後に。ひとつ聞いていいですか?」
女「はい?」
男「あなたは、魔王様ですよね」
魔王「はい」
男「隠さないんですね」
魔王「隠すことはありませんから。勇者様」
勇者「……今。僕の中の空にも、虹が見えました」
魔王「きっと、なによりも色鮮やかな虹ね」
勇者「はい。もし良かったら、いつか一緒に見てくれませんか?」
魔王「ええ喜んで」にこっ
勇者「では、それまで」ぺこり
魔王「うん!またね!」てをふりふり




