眠れない夢だから、眠ったらサヨナラ
*王城の秘密病室
魔王「貴様が勇者か!」バーン!
勇者「人に名を訪ねる前に、まずは自分が名乗れ。そもそもここへ、どうやって入った!」
魔王「俺は魔王だ。侵入など、ちょちょいのちょいやで」
勇者「魔王、だと?」
魔王「もう一度問う。貴様が勇者か!」ババーン!
勇者「ああそうだ、私は勇者だ。王を護る、決して折れぬ剣であり、決して砕けぬ盾だ」
魔王「ほー。その病魔に蝕まれた体で、王をどう護るの?」
勇者「こうして護る!」
魔王「…………」マガオ
勇者「魔法が使えない!?」
魔王「ふんっ」クルリ
勇者「おい!逃がさぬぞ!」
魔王「追えるものなら追ってこい。小さな兎さんよ」
勇者「くそっ!待てっ!!」
…………。
魔王「よう」
勇者「また来たか。一体何を企んでいる」
魔王「俺はお前の死を見届けた後、この国を焼き尽くすつもりだ」キリッ
勇者「き、さまあ!」
魔王「はっはっはっ!どうした?体を動かすこともできんか?」
勇者「あ!待て!」
魔王「待たんよ。帰る」テヲフリフリ
…………。
勇者「嫌がらせもほどほどにしろ」
魔王「そう怒るなよ」
勇者「くそっ!なんと惨めな!」
魔王「悔しいか?なら倒してみろ、さあさあさあ!!」バッ
勇者「くう……!」グッ
魔王「そうだ、こい!」
勇者「っあ!はぁ……はぁ……」
魔王「ちっ、小娘が」ボソッ
勇者「何を!」
魔王「帰る」クルリ
…………。
魔王「今日は見舞いの品に、毒リンゴを持って来てやったぞ」トスッ
勇者「そうか」
魔王「なに、えらく元気ねーの」
勇者「それを食わせろ」
魔王「見ろ!お前と同じ、可愛い兎さんだぞ!はーはっはっ!」パカッ
勇者「あー」
魔王「よく噛んで味わえ」スッ
勇者「…………」しゃりしゃり
魔王「…………」ニヤニヤ
勇者「しょっぱい。それに皮は嫌いだ」
魔王「知るかよ」
勇者「というか毒はどうした」
魔王「あー、塩と間違えた」
勇者「馬鹿者が。気を付けろ」
…………。
魔王「ほーれ」ポイッ
勇者「……なに?」
魔王「花束だ。そろそろくたばりそうなんでな、わざわざ前もって見繕ってやったぞ」
勇者「めちゃくちゃな花束だな」
魔王「それがお前には丁度良い」ビシッ!
勇者「そう……」
魔王「えいっくしょい!」
勇者「っちゅん!」
魔王「…………」ズズ…
勇者「…………」ズズ…
魔王「よし燃やす」
勇者「駄目」ぎゅ
…………。
魔王「今日もまだ生きてるかー。あちゃー、中々しぶといねえ」
勇者「…………」
魔王「今日は兎さんを連れてきましたよ。はい」ヨイショ
勇者「…………」
魔王「可愛いでちゅねー!良かったでちゅねー!」
勇者「……黒い」なでなで
魔王「そいつは多分死神だ、うん。だから連れてきたんだよ。一人であの世は寂しいでしょー?」
勇者「うん、寂しい」
魔王「まだまだ小娘だよ、お前は」
…………。
魔王「生きてる?ねえ生きてる?」ひょこっ
勇者「…………」
魔王「ようやくお前の墓が決まったぞ!だから下見に行くぞ!テンションあがるぞ!」
勇者「…………」
魔王「聞いてる?ねえ聞いてる?」
勇者「…………」
魔王「ま、返事はなくとも、無理矢理連れて行くけどねん」
勇者「…………」
魔王「軽っ!お前間もなく死ぬんじゃねーの?!やったね!」ダッコ
勇者「…………」
魔王「よし、じゃあ行くぞ!」
シュワッチ!
魔王「からの着地。かーらーの到着!」
勇者「嘘つき……」
魔王「は?嘘ついてねーし!あれ満月だし!」
勇者「この嘘つき……!」グスッ
魔王「あーのーつーきーが、お前の墓!兎さんに許可はもらったから、そこは安心してね!」
勇者「もう……」ゴシゴシ
魔王「なに?泣いてんの?え、ちょマジで!?」クスクス
勇者「降ろせ」
魔王「おーこわっ」
勇者「…………」スワリンコ
魔王「俺は寝転ぶ!」ネコロビー
勇者「…………」フラ…
魔王「なに?お前も寝んの?じゃ俺座る」スワリンチョ
勇者「…………」トテン
魔王「ついでに膝枕しちゃう。屈辱的だろ?」
勇者「…………」
魔王「てか喋れよ!!つまんねーだろ!!俺、おまっ、ただの危ない奴じゃねーか!!」アタフタ
勇者「…………」
魔王「お前は王を護る、決して折れない剣であり、決して砕けない盾なんだろ」
勇者「…………」
魔王「折れてんじゃねーよ」
勇者「…………」
魔王「砕けてんじゃねーよ」
勇者「…………」
魔王「生きろっ!!」
勇者「!」
魔王「城に攻めても、お前がいなきゃ退屈するだろう」なでなで
勇者「魔王……」
魔王「よっこいしょういちろう、と……んー!」ノビー
勇者「待ってくれ!」
魔王「え、やだ帰る」
勇者「魔王!」
魔王「小娘は寝る時間だ。おやすみ」テヲフリフリ
…………。
勇者「んっ……んん……」
王ちゃん「おお、目を覚ましたか」
勇者「魔王……は?」
王ちゃん「魔王か、そのことなら安心しろ。奴は、なんと失踪した!」
勇者「え?」
王ちゃん「それよりも勇者よ。お前は三日も眠っていたぞ。体は平気か?」
勇者「……あれ?」カラダオコシ
王ちゃん「おお、どうだ」
勇者「全然苦しくないし……あ!足が動きます!」アシパタパタ!
王ちゃん「良かった良かった、それは何よりだ!」
勇者「……私、とても長い夢を見ていました」
王ちゃん「長い夢?」
勇者「あ、庭に兎……」
王ちゃん「おや、黒とは珍しい。どこからか迷い込んだか」
勇者「突然すみませんが、私お腹が空きましたので、今から食事を致します!そして体を鍛え、早期に任務復帰致します!」ヨロ…
王ちゃん「お、おい!いきなり立つのは危険だぞ!それに食事ならここで」
勇者「平気です!はやく元気になって、魔王を探しに行かねば!」ヨタヨタ
王ちゃん「どこへ探しに行くと言う。お前の任務は、わしを護ることだろう」
勇者「すみません、作戦変更です!私は月を目指します!では失礼!!」ヨタヨタ
王ちゃん「は!?月とな!?」
勇者「待ってろよ魔王!」ヨタヨタ
王ちゃん「まったく……」タメイキ
うおー!私は兎跳びで食堂に行くぞー!
王ちゃん「そんなところにいるわけねーだろ。馬鹿者が」




