デウス・EX・マキナ
*天導境界
ここは後に、空と成る地である。
今は、魔神と人神を隔てる境界線であり、歪みが地を結び空の果てへと続いている。
ここを越えられる者は、下記の選ばれし者たちのみ。
魔神に生まれし者は魔王と、人神に生まれし者は勇者と名付けられた。
彼らはこの世に生まれし時、天によって選定される。
その数は一人に限られておらず、魔王と勇者との対決は宿命とされた。
その宿命から逃れることはできない。
彼らは戦うために生まれ、戦いの果てに命を散らす。
その輪廻は、今日も繰り返されるのであった。
魔王「貴様が勇者か」
歪みの向こうから問う。
勇者「そうだ。魔王」
歪みの向こうへと答える。
魔王「私は貴様と殺し合うべく生まれてきた。その目的だけに生きている」
勇者「それは私も同じ。疑問を抱いたこともない」
魔王「しかし」
魔王が歪みに手を伸ばすと。
勇者「違和感を感じている」
勇者はその手に自分の手を重ねた。
魔王「だが、今もその正体は見えぬ」
勇者「ああ。今、ハッキリと見えるのは」
魔王「宿敵」
勇者「魔王!」
魔王「勇者!」
二人は歪みを境に、互いに引くことなく、一進一退の攻防を繰り返す。
相手の世界へと侵攻することで、自身の力が増すためだ。
魔王「ぐあっ!」
やがて、激しい戦いの末に魔王が倒れた。
だがその時。
勝利した勇者を、巨大な影が覆う。
勇者「何……だ?」
それは突然に現れた、一機の、巨大な円盤による影であった。
見上げそれを発見した勇者は、ただ呆然と立ち尽くす。
宇宙神「おめでたーーーい、だろ?勝利した勇者っ!!」拍手!
その円盤から、魔神とも人神とも違う、五体を持つ灰色の生物が、ゆっくりと降りてきて着地した。
勇者「胸が疼く……お前は一体何者だ!」
宇宙神「我々は!宇宙ーーー神っ!!の一つ、だろ?」
勇者「宇宙神?」
宇宙神「そそ。我々はねーえ、勝利したあーたに、褒美を与えに来た、だろ?」
勇者「褒美だと?なぜお前が」
宇宙神「なぜってーの?だってさー、このゲーーーム作ったは我々、だろ?」
勇者「ゲーム?わかるように説明しろ!」
宇宙神「だからさあーーーあっ!我々宇宙神のー暇潰しのー余興のー娯楽のー、一つとしてやってもらってんの、だろ?」
勇者「私達の戦いは、宿命は、お前達の仕組んだ遊びであり。勇者と魔王は、そのコマであるというのか」
宇宙神「だろ!?」ビシッ!
勇者「違和感の正体は、これだったのか……。くそっ!私は!私達はっ!!」
宇宙神「んじゃまっ!そろそろ褒美としてー、ボーナスステーーージあげちゃう、だろ?」
勇者「ボーナスステージ?」
間もなく。
勇者の周りに次々と、奇怪な姿の化け物が召喚される。
勇者「何だこの生物は!」
宇宙神「エイリアーーーン!!だろ?」ウィンク!
その言葉を最後に、宇宙神も円盤も、勇者の意識から消え去った。
勇者「これはどうしたものか……」
剣を強く握り、敵の動きを伺う勇者。
その背に、大きな背中が立つ。
魔王「数が多いな」
勇者「魔王っ!生きていたか!」
魔王「話は全て聞いた。勇者よ、共に奴等と戦い、くだらぬ宿命を終わらせるぞ!」
勇者「承知した!ゆくぞ!!」
ここは後に、空と成る地である。




