縦の糸は私、横の糸は君
※魔王城
魔王「よく来たな勇者」
勇者「魔王!」ザッ!
魔王「ここまで辿りつくとは、死をもって労ってやらねばな」スクッ
勇者「まさか、世界の終着点。そこにある滝の底に裏の世界が在るとは思いもしなかった」
魔王「世界とは表裏あり。認識叶わぬ糸によって、数多き理を巡り紡がれたモノ」
勇者「しかしそれを知り、ひとり、傲慢にも表の世界を手にしようと図らう魔王よ」チャキ
魔王「ふぅ……」
勇者「こちらこそ。死をもって労ってやろう」
魔王「人ごときが生意気な」
勇者「なに?」
魔王「何故、私が世界の仕組みを知りえたと考える」
勇者「私と同じく。世界を巡り、果てに辿り着いた」
魔王「偶然と言うか、しかしそれは間違いだ。なぜなら、私こそ糸であるからだ!偶然に知った貴様とは違い、私は初めから世界のつくりを認識し、常識としていたのだ!そして裏の世界の理を結び」
勇者「はんっ」
魔王「何を笑う」
勇者「お前が先に言ったように、世界とは認識叶わぬ糸によって、数多き理を巡り紡がれたモノ。つまりだ」
魔王「……まさか、貴様っ!!」
勇者「そうさ」
魔王「貴様はあっ!!」
勇者「私も糸だ」
魔王「同じくとはそういうことか!」
勇者「そう。私は表の世界を巡り、理を紡いできた。その後、ここへ来た」
魔王「本当の目的は何だ!答えろ!」
勇者「世界を支配するのではなく、一つにする。分かたれた理を一つにし、表裏の均衡を破壊して、公平と太平の世界を築く」
魔王「世界そのものを変える。何が起こるかはわからんぞ」
勇者「それがどうした」
魔王「恐るべき天災が、いや、破滅が世界を襲うやもしれぬぞ」
勇者「魔王が世界の心配など、もはや笑う気も失せる」
魔王「っ!私は何も破滅を望んでいるわけではない!私の望みは支配、それだけだ!」
勇者「はぁ……幼稚な戯言もほどほどにしてくれ」ノビー
魔王「それこそ。貴様が守ってきた命が」
勇者「守ったこと?ないない」
魔王「貴様っ……!!」ゾクッ!
勇者「どうせ、何やっても認識されないしさ」
魔王「っ!まずは貴様を粛清する!!」タタッ!
勇者「お前も世界も……一度滅べ!」タッ!






