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第0話 赤く染まる街

イッコク王国の城下町を、満月の灯りが照らしていた。

星の姿はなく、闇夜に月だけがくっきりと浮かび上がっている。

そこへ、炭のように真っ黒なコウモリが一匹、どこからともなく飛んできて、城下の街に影を落とすかのようにゆっくりと一巡した。

それは、不吉な何かを暗示しているようだった。

その刹那。

地面からヒトの首が飛び出した。それも、一体や二体ではない。それはまるでモグラが顔を出すかのように街のあちこちで土が盛り上がっている。

地面からのっそりと這い出てきたのは、一見してヒトのようだったが、オレンジ色の肌、につり上がった目、口からはみ出る鬼のような牙をもつ人型の怪物だった。

怪物達の手にはたいまつが握られており、人々が就寝している家屋に対してちゅうちょすることなく、持っていたたいまつを放った。

闇色の空が赤色に変わり、街人達の悲鳴が上がる。

怪物達は素手で家の壁を殴り壊した。そして、次々と街を破壊していき、就寝していた人々に手をかけた。

泣きわめく子どもを鉄拳で容赦なく殴り殺し、虐殺された子どもを目の当たりにして錯乱した母親を返り血だらけの赤黒い拳でさらに殴り潰す。

スコップで殴りかかってきた若い男の頭を鷲掴みにすると、レンガ造りの塀に叩きつける。何度も、何度も。やがて赤く染まった壁が崩れてしまうと、男を地面に叩きつけて踏み潰す。男は、ピクリとも動かない。それを見た怪物は返り血だらけの顔でニヤリと笑う。

そんな状況が街のあちこちで起きていた。

平和だったこの街で、怪物が襲ってきた歴史はない。平和ボケしたこの街で戦えるのは、せいぜい城の兵士くらいだった。

非現実的な光景を目の当たりにして、人々は逃げ惑い、怪物に囚われては虐殺された。

怪物達は、ただ考えなしに建物を破壊しているわけではなさそうだった。破壊された建物は一本の線のように規則正しく並んでいたのだ。

その先にはひときわ大きくて豪勢な建物ーーーイッコク城が建っているのであった。



街を襲撃する怪物達を見守る影があった。

男は、街から離れた丘の上から燃え上がる街を見て、愉快そうに歯をのぞかせる。

そばには人間よりも大きなトカゲがいて、男と同じように街を見下ろしていた。

「いよいよだ、ヒトには消えてもらう」

男は、甘えるようにほおをすり寄せてくるとかげのあごの下をなでながら、目を細める。

「復讐だ」

街に上がる炎のように、男の瞳には焔が燃えあがっていた。


はじめまして、最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。

次話でようやく主人公が登場します。



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