第24話 迷い込んだ場所は
連れて来られた場所に、史華は唖然とした。
レースたっぷり、フリルたっぷり。パステルカラーのものや、ビビットカラーのもの、アニマル柄。布面積の少ないきわどい物を見つけて、史華は素早く視線を外した。
「なんで下着売り場なんですか!」
悠のジャケットの裾を引っ張りながら小声で抗議する。
下着の専門店を利用したことはない。どことなく恥ずかしくて近付けないのだ。なので、普段は最寄りの量販店で適当に買った物を身につけている。誰かに見せる予定もないので、機能していればそれで充分なのだが。
「だって、史華ちゃん、自分の身体に合った下着がわかっていないみたいだから。さすがに皆藤のところでも下着は調達しないし」
からかっているのではなく、本気で下着を買うつもりらしい。声が深刻そうだ。
「いや、でも、こういうのは……」
たとえ悠が彼氏であったとしても、二人で下着を買いに来るなんてことは世の中的にあることなのか。
ってか、普通は洋服を買うでしょ! なんで誰も見ない下着なんかを⁉︎
最近読んだ小説で洋服を買うシチュエーションは幾つか見かけた。エグゼクティブである彼氏がパーティに参加するから、それに合わせたドレスを買うという話が多く、次いで見かけたのはデートでショッピングをするという話だ。いずれも、パーティや買い物のあとに官能的なシーンがあるわけだけど――。
いやいや。
作品の引用ではなく、自分で妄想しかけてしまった。史華は小さく頭を振る。
「史華ちゃん、何を想像したのかな?」
現実に意識が戻ってくるなり、悠の愉快げなクスクスという笑い声が耳に入った。
羞恥で真っ赤になっているのだろう。史華は自分の顔が火照っているのを意識する。
「そっちこそ、どういう下心ですか!」
「下心もなにも、あからさまでしょ?」
確かに隠していない。そんな悠に対して史華は絶句し小さく膨れる。
「ちなみに、ウチと提携した商品もあるんだ。史華ちゃんに合うサイズは作らなかったと思うけど」
「……それって、あたしが太っているってことですか?」
睨むように悠に視線を向けると、彼は不思議そうな表情を浮かべた。
「史華ちゃんは太っているんじゃなくて、グラマーなんだと思うけど」
悠がどうしてそんな表情でそんな台詞を告げるのかわからない。見上げていると、悠は苦笑した。
「君は自分自身のことをもっと知ることが必要だね。ここは俺に任せて、ついておいで」
拒否するつもりだったのに、不意をつかれて引っ張られ店内に足を踏み入れる。




