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第14話 不可抗力ってやつですかね?

 ひんやりとしたものが頭に乗せられたのに気付いて、史華は意識を取り戻した。


 何があったんだっけ……?


 記憶が曖昧でぼんやりと霞んでいる。状況の確認のため、まずは目は閉じたままで辺りの気配を探る。


 幸福感を感じるバラの香りに包まれていた。素肌に当たる柔らかな毛布がくすぐったい。どうやら、ほどよくスプリングの効いたベッドに寝かされているらしい。


 確か入浴していたはずだった。ベッドに入るまでのことを覚えていない。


 史華は咄嗟に記憶を遡る。コーヒーを零してしまって浴室に連れられ、風呂に入っていたことまでは覚えている。


 身体が怠くてもう少し眠っていたいが、現場を確認することが必要だ。史華はそっと目を開けた。


「やっと気が付いたみたいだね。気分はどうだい?」


「悠さん……あたし……」


 優しく微笑む悠の顔を見て、何故かすごくほっとした。思わず微笑むと、彼は史華の頭を撫でる。


「そんな顔をして見つめたら、襲いたくなる」


 言われて、自分がどんな格好をしているのかに気付いた。裸にシャツ一枚という姿らしい。


「あの……どうしてあたし、ベッドに寝かされているんでしょうか?」


 気を許しすぎたと、頭を撫でる悠の手を掴んで史華は問う。すると彼は首を傾げた。


「覚えていないの?」


「は、はい」


 意外そうに言われては、素直に頷くしかない。


「まったく……」


 悠はやれやれといった様子で目を伏せて首を小さく横に振ると、口を開いた。


「君は入浴中に逆上のぼせてしまったんだよ。不自然に浴室が静かだったから声をかけたんだけど反応がなかったから開けさせてもらった」


「って、裸見たんですかっ⁉︎」


 がばっと上半身を起こす。額に乗せられていたタオルが落下して受け止め、そのついでに毛布を引っ張り上げる。シャツに胸の膨らみが浮かぶのが恥ずかしかった。


「仕方がないでしょう。救助なんだから。嫌だったのなら、そうならないように注意すべきじゃないかな」


 史華の非難する声に、悠は少々きつめの口調で返す。悠の言い分にはもっともらしさを感じたが、史華は確認のために続ける。


「ほ、本当に救助だけですか……?」


「というと?」


 彼はけろっとしていた。そして、不思議そうな表情を浮かべる。


「その……。え、エッチなこと、してないですよね?」


「例えば?」


「あ、いえっ。何もなかったならそれで良いんですっ!」


 まさか具体例を求められるとは思っていなかった。ふと、読みかけだった小説の一部が浮かびそうになるのを必死に堪える。


 すると、ベッドが軋む音がした。

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