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色とりどりの黙示録  作者: owen
第2章 開幕
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透明の章 第6節

 

 黒希の武器を複製コピーするにあたって、武器の仕組みを理解する必要があった。

 理解にはさほど苦労はなかった。何故か、自分のことのように解ったのだ。

 その大鎌は命を刈り魂を斬り裂く凶器。

『死の神の刻印』を継ぐ者にしか扱えない。

 その『刻印』こそが大鎌となるからだ。

 本来なら『後継者』ではない、そもそも『刻印』すら持たない叶に大鎌を扱えるはずがないのだが、ロキの理想を現実にする力をもってそれが叶えられたわけである。

 そんな御大層な力があるなら、この謎の美少年を消し去って欲しいのだが、ロキ曰く、

『そんなことしたら、世界軸がブレッブレになって空から紫色の隕石が降ってくるかもしれんぞ。そしてその隕石から未知のウィルスが溢れ出してあっという間に世界に蔓延し、生ける屍共が現代社会を破壊してしまう!』

 ということらしい。何処から本気で何処から冗談なのか。

 とにかく、光助が一瞬で倒されてしまい咲が危険な状況にあると、考えてる時間もなかったのでほぼ咄嗟に事を進め、今に至る。

「その鎌は……もしや貴女が」

 その少年の声には感情が含まれておらず、ただ一定の音程が響いているようだった。

「なんの話か分からないね」

 事実、コイツとは初対面だ。

「『後継者』ではないのですか」

「違う……?」

 それは黒希のことだろう。何故、それを私に?

「見え透いた嘘を」

 押さえ込んでいた光の矢が炸裂した。

「ッ」

 目眩がした。

 頭上で風を切る音。

 その音めがけ、両手で握った大鎌を振り上げる。

 確かな手応えと、耳に反響する大きな音が大鎌の行く末がどうなったかを物語った。

 真っ白な視界に確かな景色が戻ってくる。

 矢を受け止める大鎌。絶えず火花を散らし、叶の方が力負けしているため、大鎌はやや押され気味。

『叶、もう限界だ』

 頭の中で響くロキの声。

「まだだ。このままじゃ咲が……」

 殺される。聞かずとも、彼の目的は咲の抹殺だと判った。先ほどの光助との会話の流れからして明白だ。どういう理由でかは知らないが、それだけ知っていればどう動くかは決められた。

『身内は守れ』と、黒希は言った。

 だから、そうする。

 何を投げ打ってでも、守り切ってみせる。

 その想いで、大鎌を振るう。

 少年が放つ光速の矢を斬り砕く。

 一つでも逃せば、咲に当たる。

 だが、光速の矢は際限なく、数秒の間もなく、

「……ぁ」

 叶の、大鎌を持つ右腕の内部に亀裂が生じた。激痛に顔を顰める。

「……クソッ……」

 自身の肉体内部を黒希に近い構造に組み替えたがやはりボロは出るもの。

 右腕がダメなら左腕に。

 そうしようと意識を切り替える時。

 ほんの数秒だけ、叶の挙動は人間らしい速度に低下した。

 複数の光速の矢が飛んでくる。

 それはもう、今の叶が目で追える速度ではなく、

「ッ」

 複数の光の矢が体を貫く死の光景が、脳裏をよぎった。

 しかし、それは起きなかった。

 幸い、と胸を撫で下ろすこともなかった。

「アンタ……何してんの……」

 叶の視線の先には、光助の姿があった。

 体の至る所から矢の先端が飛び出している、串刺しに近い状態だ。

 彼は引きつった笑いを見せて、

「盾ぐらいには、なれる」

「光助‼︎」

 咲が横を通過して、崩れ落ちる光助を華奢な体躯で受け止めた。

「……正気かよ」

 傷は治ると彼は言ったが、痛覚がないとまでは聞いていない。あの苦悶の表情から察するに、痛覚はあるはずだ。

 激痛を覚悟の上で、アイツは盾となった。正気を疑われても当然だ。

『いや、相当なマゾヒストって線も……』

 と、こんな状況なのにロキが戯言を口にする。

「式とやらは完成したの?」

『ああ。今が使い時らしいけど、どうする?』

 どうするも何も、聞き手の右腕が使い物にならなくなり、光助が倒れた今、満足に戦える者はこの場にいない。

 街を襲った災害も、ケルベロスとナイトメアが死んだ今、解決したはず。

 あの少年が何者であれ、この現象を彼が引き継ぐのならその時は、黒希も連れて対処すればいい。彼なら、あんな奴簡単に捻り潰せるだろう。

「やって」

『了解』

 転移魔術の式が、叶の腕を伝い、指先から空気へ流れ出る。赤い糸のようなそれは、三人を囲う一つの円となった。

 少年が動き出す前に、式は作動した。







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