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中々の広さがある部屋に、横長のテーブルが縦に二列、横に三列、計六個並べられ、そのテーブル一つ一つに様々な機種のパソコンが三台ずつ置かれていた。
この部屋は、例えるならば学校のコンピューター室に似ていた。決定的に違うのは、壁一面に、映画館のスクリーン並みの大きなモニターがあるということ。そして、この部屋は地下にあるということ。
天井の蛍光灯が点く。
部屋に入ってきたのは十六歳ほどの少年。身長は、約百六十九センチ。白のワイシャツにジーンズ姿、黒髪。黒縁メガネをかけていて、青い瞳を持っている。
彼の名は、天沢海留。
海留は最寄りの椅子に腰掛けると、デスクトップパソコンの電源を入れ、起動させた。
慣れた手つきでパスワードを打ち込み、E-メールボックスを見る。新着のメールが二件もあった。
しかし、無視する。
次の仕事は、もう決まっている。
海留は地面を蹴って、椅子ごと体を横に動いた。
同じくデスクトップパソコンの電源を入れる。このパソコンには、様々な国の電子新聞が届くようになっている。
日本の新聞に目を通す。
『変わった事件』を探す。
しかし、今日も日本は平和なようで、夫婦の殺し合いや車の衝突事故といった、これと言って目を引くものはなかった。
次々と様々な言語の新聞を読破すること一時間。
突然、部屋中に耳障りなアラームが鳴り出した。
海留は席を立ち、二列先のノートパソコンの電源を入れた。
画面に映し出されたのは、監視カメラの映像。薄暗い通路を歩く二つの人影が見えた。
アラームを解除すると、天井の隅から地面を蹴る音がした。
「海留。来たぞ」
聞き覚えのある声だったので、天井の隅にあるハッチの電子ロックを解除した。
少し間を置いて、ハッチが開かれる。梯子で降りてきたのは、叶と咲だった。
「地下なら少しはマシだな」
「脱げばいいのに……あ、おはよう海留」
と、咲が朗らかな笑顔で朝の挨拶をしてくる。
一方の叶はというと、リュックサックを適当に下ろして、ソファに腰掛けた。
海留は愛想笑いを顔に貼り付けて、
「おはようございます、二人とも。リーダーは一緒じゃないんですか?」
咲は首を横に振って、
「ううん」
リュックサックを床に置き、叶の横に座った。
「んで、仕事の内容は?」
叶が訊いてくる。
海留は、この部屋に来て最初に座った椅子に座り、二人の方に向き直って言った。
「リーダーが来たら説明します」
そこで、開けっぱなしのハッチから何者かが入ってきた。梯子から降りてきた人物は、
「遅かったですね、リーダー」
リーダー。そう呼ばれた少年が、三人の方を振り返る。
相変わらずの寝ぼけた顔で、
「自営業で、俺がトップなんだ。どうしようと俺の勝手だろ」
赤い瞳を持つ少年、黒希。
秘密組織『シーカー』の、リーダーだ。