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色とりどりの黙示録  作者: owen
第2章 開幕
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透明の章 第4節

 

「今日から、俺の家で暮らしてもらう」


 血塗られた人生は、ここで大きく変わった。


「私は華凪っていうの。君は?」


 君に会えて、変わった。


「……どうして泣いてるの?」


 君のことが好きなのか、それとも、嫌いなのか。

 分からないんだ。

 でも、心が落ち着くのは感じる。

 この場所だけは、『黒』じゃない。

 命を奪うことをせずに済む。

 両手を血で汚さなくてもいい。

 悲痛な叫びを聞かなくてもいい。

『白』が全てを洗い流してくれる。

 痛みから守ってくれる。


 君は、いつも側にいてくれる。


 これからもずっと、側にいて。



 それは、幼い子供みたいな、甘えた言葉。

 でも、私のじゃない。

 これは………………………?


「…………ぅ」

 目を開けた。

「お。起きたか」

 ロキの声がした。

「ロキ……?」

 傍にロキが座っていた。フードを外していて、心配そうにこちらを見ている。

 ここは、現在の住居であるボロアパートの部屋だった。

 あの後、男を殴った後の記憶がない。ただ、激痛だけは覚えていた。それはまだ、体に残っている。

「ねぇ、私……」

「まだ寝てた方がいいぞ。傷はないけど、力を使ったせいで痛覚が刺激されてる。まだ、かなり痛むだろ?」

「……ん。それよりも……あの……」

「ん? 何だ?」

「あの時言ってた、理想を現実にする力って、どんなものなの?」

「読んで字の如し。そのまんまの意味だよ。例えばだな。お前は黒希に憧れてるだろ? アイツみたいになりたいと思ってる。俺の力を持ってすれば、それが叶うってわけだ。ただな」

「……何?」

「誰かになりたいっていう理想は、記憶とか感情まで受け継いじまうんだ」

「……」

 じゃあやっぱり、あれは夢じゃなくて黒希の記憶と感情なんだ。

「なんか見たのか?」

「……うん」

「……なぁ、叶」

 ロキが改まって名を呼んでくる。

「黒希から離れるわけにはいかないか?」

 その言葉に、叶は思わず起き上がって、

「どうして?」

「……お前のためだ。もう、アイツのことは忘れた方がいい」

「……理由を話してよ」

「お前、俺の力で何を願った」

「黒希みたいになりたいって……」

 答えると、ロキは小さく息を吐いて、

「やっぱりな」

「……何よ」

「すぐに解るって答えたいけど、解る時には、多分もう手遅れだからな。キツイこと言いたくないけど許してくれよ」

「……」

 あまり聞きたくないが、頷く。

「黒希はな、周りの人間を不幸にする。最悪、お前は死んじまう」

「どういう意味?」

「ライカとレオンの話、覚えてるよな」

「え……うん」

「ライカは『死の神』に、レオンは『生の神』に選ばれた『後継者』って話は?」

「うん……でもそれ、おとぎ話じゃ……」

「あれは実話。俺が見た限りの、正真正銘アイツらの生涯だ」

 叶は呆然とした。幼い頃から聞いていたおとぎ話だと思っていた話が、現実?

「……それが、黒希とどんな関係があるの?」

「アイツらの物語の結末は世界の崩壊と『後継者』の死。それが、ここでも起きる」

「……」

 嫌な予感がした。叶は、次にロキが何を言うのかが何となく分かった。

「今回の『死の神』の『後継者』は黒希なんだ。今までは、どうやってたのか知らないが力を抑えていて、周りの奴らから気配を隠していたが、アイツは昨日、『後継者』としての力を解放した。だから、アイツは近いうちに死ぬ」

「……それは、どうしてなの?」

「『後継者』に恨み嫉みを持っている奴は多い。主に神が狙いに来るはずだ。もし、それを躱せたとしても、自身の力に殺される。あの力は寿命っていう代償を伴うんだ」

「……」

 だから、黒希と同じになった時に体中が痛んだのだろうか。

 いや、それよりも。

 力を使う度に、黒希はあんな激痛を感じているのか。

「……嫌だ」

「ん?」

 叶は布団を握り締め、言った。

「黒希が力を使う度に死に近づいてるって聞いておいて、放っておくなんてできない」

 枕元のスマートフォンを手に取り、黒希に電話をかける。

「どうする気だ?」

「今の話を黒希にする。知らないとしたら教えておかないと」

「やめとけ。それ知ったら、アイツのことだ。一人で姿消しちまうぞ」

「あ……」

 ロキにそう言われ、電話を切ろうとした時、

『叶? どうかしたか』

 黒希の声がした。

 叶は口をパクパクして、

「え、あ、その……昨日、連絡取れなかったから、大丈夫かなと思って……」

『あぁ……心配かけて悪かったな。そうだ。ついでだし、今時間あるか?』

「あるけど……」

『じゃあ、漁港近くのコンビニまで来てくれ』

 そこで、通話は切れた。

 叶は立ち上がって、ロキがいるにも拘らず着替えを始めた。

「アンタが私を心配してくれるのは嬉しいけど、黒希には恩がある。それに……」

 着替えを終え、玄関へ向かう。

「……私の居場所は、あそこしかないんだ」

 部屋を出る。

 ロキはしばらく黙って、

「……居場所を作るのが怖いだけなんだろ」

 誰かを想うように呟き、煙のように姿を消した。


 怖いから、お前は誰かが作った輪の中に留まることしか考えないんだ。








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