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色とりどりの黙示録  作者: owen
第2章 開幕
55/97

 

 黒い雨が止む。


 空間に亀裂が生じた、壊れかけの世界。

 天に一番近い、ガラスで構築されたタワーの最上階に、『俺』は倒れていた。傍らには刃が砕け使い物にならなくなった刀剣が二本転がっている。

 体は、もう動かない。体中の深い傷のせいでピクリとも動かず、絶えず血が流れ出ているせいで意識は朦朧としている。

「……」

 だが、これでよかった。

 世界は壊した。これで、ツキネは死なずに済む。彼女を死から逃すことができた。

 リセットされたら、どうなるんだろう。

 母さんと父さんも生き返るのか? もしそうだとしても、殺された相手に会おうとは思わないはずだ。

 結局、一人か。

『家族って呼んじゃだめ?』

 ふと思い出すツキネの言葉。

 彼女なら、受け入れてくれる。彼女自身がそう言った。

 これからは、メーティスの家であいつらと暮らすのか。

 ………………………それも、悪くないか。

 ゆっくりと瞼を下ろす。


「やあ」

 聞き覚えのない声に、目を開いた。まだ真っ黒な空が見える。

 目を、声のした方に動かす。

 横に屈んでいる、ツキネと同じ十歳くらいの少女がいた。背丈は歳相応。黒のワンピースのみを着ていて、裸足。黒い長髪に、黄色い瞳。泣いていたのか、目元が赤く腫れていた。

「……誰だ」

 見知らぬ顔に警戒するが、二本の刀剣は近くにないため、なす術はない。

 彼女の顔を観察すると、目元が赤く腫れていることに気付いた。泣いていたのだろうか。

「君と同じで名前がないから、名乗れないよ」

『俺』は目を細めた。

「あ。でも、君にはあの子から貰った名前があったね」

「……ツキネを知ってるのか?」

「さっき会ったよ。お腹に傷があった」

「……え?」

 聞き間違いであって欲しかった。

「最後まで幸せそうだった。でも、悔やんでた。家族と一緒にいられなかったって」

「最後までって……アイツは、死んだのか?」

 これじゃあ、世界を壊した意味がない。

「うん。残念だったね」

「……」

 本音だろう。何故、彼女の死を悲しむのか知らないが。

「まだ、救いたい?」

「……ああ」

 何処の誰とも知らない少女に、『俺』は感情的になっていた。

「じゃあチャンスを上げる。代わりに、一つお願いしたいことがあるんだ」

「アイツを救えるなら、何でも聞いてやる」

 犠牲など厭わない。己の命を捨てたって構いやしない。

「いつか、私を殺しに来て」

 その願いに疑問が湧いた。だが、質問はしなかった。

『俺』は小さく頷いた。

「分かった」

「よし。チャンスの話なんだけど、今の君には与えないよ。死人同然だからね」

「じゃあどうすればいい」

 少女は『俺』の頬を撫でた。

「今は、死に体を委ねるの。そしたらいつか目が醒める時が来る。目が醒めても、君は君じゃなくなってるかもしれない。だけど安心して。また彼女が君を導いてくれる」

「……信じていいのか」

「うん。彼女を守れるかどうかは、君の実力次第だけど」

「……守る。今度こそ、絶対に」

 目の奥が熱くなるのを感じた。

 泣くのは久しぶりだ。人前だがどうせ死ぬんだ。気にしない。

 少女は『俺』の涙を拭い、安心させるためか笑って見せた。

「君なら守れるよ。だって貴方には……」


 何でも殺せる力があるんだから。











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