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海岸沿いの高台に建つ、見ているだけで今にも倒れるんじゃないかと不安になるほどボロボロのアパート。
その一室の狭い玄関スペースで、
「叶、早くしないと遅れちゃうよ?」
奥の部屋で慌ただしく動く人影に声を掛けたのは、咲。十二歳くらいの少女だ。身長は、約百三十一センチ。白いワンピース姿に麦わら帽子。雪のように真っ白な肌に、肌同様に真っ白な長い髪。人間とは思えないほど可愛らしい顔に、宝石のような青い瞳が二つ。
「遅れるも何も、あのクソメガネから連絡来たの数分前じゃんか!」
と、不満を洩らしつつ奥の部屋から出てきたのは、矢島叶。十八歳の少女だ。身長は百六十九センチ。黒のパーカーにジーンズ姿で、黒の帽子を被っている。とにかく黒尽くめだ。ツヤのある黒髪ロングで、男口調から想像できないほどの美人。咲とは正反対の赤い瞳を持つ。
「外暑いって天気予報のお姉さんが言ってたよ?」
叶の暑苦しい服装を見ると、咲は苦笑しながら言った。
叶は黒色のリュックサックを背負い、
「いいんだよ。気にすんな」
「うん……倒れないでね?」
外に出ると、夏の熱気に襲われた。
早速、叶はパーカーの袖を捲り、腕で額の汗を拭った。
ボロボロのドアに鍵をかけ、アパートを後にした。