サイドストーリー.1-4
振り下ろされた氷の巨斧を、レオンは刀剣と鉈で受け止めた。
「ッ……」
重い。ただただ重い。
ルシファーの背後で冷気が集い、集束され、多数の氷柱となってレオンに放たれる。
それを、ライカが影を操り壁を作って防いだ。右手の大鎌をルシファーの胴体へ向け、横合いに振るう。
ルシファーは後方へ跳んで、避けた。
「思ってたより強くないな、お前」
ライカが挑発気味に言う。
ルシファーは表情一つ変えず、
「お前も、まだ本調子とは言えなさそうだが」
「お前を殺すのには十分だ」
「……」
レオンには、ライカが活き活きしてるように見えた。微笑を浮かべ、鉈を逆手に持ち替える。
「ルシファー。お前に、ここで死ぬ気はないはずだろう。退け。見逃してやる」
レオンの言葉に、ルシファーだけでなくライカまで驚いた。
「はぁ? 何言ってんだよレオン! ここで始末しておかないと……」
「今は、涼風達のことを優先する。それに、多分俺達では勝てないぞ」
「どうして……?」
ライカは何かに気付き、天井を見上げた。
何か黒い物が天井を犇いた。
亡者の魂だ。
「奴は魂を喰らって力を得ている。今の俺達が本気を出せば、勝つ可能性もあるだろう。だが、奴を追い込んだら何をするか分からない。涼風達のことを考えれば、退いた方が賢明だ」
「……チッ」
ライカは悔しげに舌打ちし、ルシファーを睨みつけた。
ルシファーはライカからレオンに視線を移した。
「俺がお前達を逃すのではなく、お前達が俺を逃してくれると? 余程、俺は下に見られているらしいな」
レオンはため息を吐き、
「……なら、ここで殺すまでだ。ライカ、分かってるな」
ライカは頷いて、数歩下がった。
それを確認してレオンが、
「容赦する義理はない」
彼の左肩に、翼に似た形の蜃気楼なようなものが現れ、すぐに消えた。
すると、彼の両手にある刀剣と鉈の刃が白い光に包まれた。
得物を構え、駆け出す。
ルシファーが氷の斧を、横へ薙ぎ払うように振ってくる。
レオンはそれを跳んで避けると、斧へと刀剣を振り下ろした。
刃を包む光の正体は、魂。自身の魂で刃を塗り固めたのだ。ごく僅かな存在にしか破壊できない魂で包んだ刃は、氷など最も簡単に粉砕できる。
「ッ」
苦し紛れといった様子で、ルシファーが冷気を宿した左手を突き出してくる。右手には、すで新たな巨斧を作り出すべく冷気が集束しつつあった。
そうはさせない。
左手の鉈を順手に持ち替え、ルシファーの左手首から下を切断する。
地面に足を着け、足に力を込めてバネのように跳ねる。
右手の刀剣で、一閃する。
「ぐぁッ……」
ルシファーの胸から血が溢れ出す。
ルシファーの背後で、レオンは、
「俺の腕も、まだ錆ついちゃいないようだ」
二本の得物から光が消えた。
ルシファーが倒れる。
彼の生きねの根を止めたのを確認した直後の事だった。
頭上。
レオンは上を向き、頭上から迫ってきた者の一撃を、光を失った刀剣を振り上げて防いだ。
ルシファーには劣るが、その一撃はそれなりに重みがあった。
刀剣を振って、何者かを弾き飛ばした。
そいつは上手く着地し、赤い瞳でこちらを睨みつけた。
「……黒希」
そいつ、黒希は、何処から持ってきたのか右手に刀剣を、さらに腰のベルトに刀剣を二本提げ、背中には大剣が一つ装備されていた。持てる物は全て持ってきた、といった感じだ。
剣の切っ先をレオンに向け、黒希は言う。
「リベンジマッチだ。付き合ってもらうぞ」




