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色とりどりの黙示録  作者: owen
序章
46/97

サイドストーリー.1-3

 

 青空の下の平原。

「なぁ、レオン。この戦いが終わったら、どうする気なんだ?」

 横に並んで歩く若い女が、そう尋ねてくる。

「そうだな…………いや、思い付かない。他の生活は考えた事もなかったからな」

「なら、私と一緒に暮らさないか?」

 少し照れたように、女は言った。

「一緒に、暮らす?」

 思わず足を止め、首を傾げる。

 女も足を止めると、こちらを見て、

「な、何だよ……」

「お前と一緒に、二人だけで暮らすってことか?」

 それは、契りを結ぶ、という事なのだろうか。

「それ以外に何があるってんだよ」

 女は照れたのか、頬を赤く染めて言った。

「……そうだな」

 あの時は、こう答えたんだっけ。

「ああ。一緒に暮らそう」



 赤い空の下の荒野。

「……すっかり幼子になったな、ライカ」

 死の騎士、レオンの前に、突如として十歳くらいのゴスロリ衣装の少女が現れた。彼女の表情は、緊張していた。

 少女、ライカは大鎌をこちらに向け、

「お前は……レオン、なのか」

 震える声で訊いてくる。

 ライカは戸惑っているようだった。何を信じるべきか、迷っている。

「……」

 レオンは、腰に提げた鞘から刀剣を引き抜いた。

 敵対心はない。彼女の迷いを振り払うには、この方法が一番なのだ。

 ライカが姿を消す。

 真上。レオンは見るよりも先に剣を振り上げた。

 強力な一撃がのしかかる。足元の地面が砕けた。

 上に目を向ける。

 ライカと目が合う。

「……また同じ目をしているな、お前」

 そう言うと、

「ッ」

 ライカの瞳が揺れた。戦う者とは思えないほど、愛らしい目つきになった。

 ライカは上段から叩きつけた大鎌を消し、レオンの刀剣の腹を踏み台に高く跳躍し、一回転して地面へ頭を向ける体勢になる。唇が動く。何かを詠唱したようだ。

 ライカの足の周りの空気が、煌めいた。

 ドンッと重い音がする。

 右手に大鎌を出現させたライカが、矢の如く迫ってくる。

 その音速を超えた一撃を、レオンは見切り、刀剣を巧く使って受け流した。

 ライカは着地し、また地面を蹴って跳んだ。

 空気を固体化し足場にして、素早く、不規則で強烈な連撃を繰り出す。

 レオンは、それを躱し、防ぎ、受け流した。

 そして。

 真正面からライカが仕掛けてくる。

 レオンは受け止めようと身構えた。

 だが、彼女の手から大鎌が消えた。

 咄嗟に、レオンも刃を下げた。

「んっ」

 ライカと激突し、地面に倒れてしまう。

 ライカはレオンの体に腕を回し、彼の胸に顔を埋めていた。

「生きてるんだったら、生きてるって連絡ぐらいしろよ……バカ」

 震えた声で、彼女は言った。

 レオンはライカの頭を優しく撫でてやり、

「すまない」

「何がすまないだ。一生許さん」

「……すまない」

 その言葉を繰り返すしかなかった。


 ライカを落ち着かせ、屋敷に転移するための術式を刀剣で地面に彫る。

「涼風に身を守る方法を教えてくれとハイガミに頼まれてな。その時に、お前が黒希の教育係になると聞かされた」

 レオンに近くにチョコンと座るライカは、

「……どうしてハイガミは私に、お前が生きていることを言わなかった」

「俺が言うなと口止めをしたからな」

「どうして」

 レオンは言いづらそうにして、

「……俺のことを恨んでいると思っていた。お前との約束を破り、独りでノアと戦わせたからな」

「そんなこと……」

 ライカの言葉を遮って、レオンは、

「どうでもよくない。お前は普通の生活を送ることを夢見ていた。それなのに、お前は肉体を失い、仲間を失った。全て俺のせいだ。神になどならなければよかった」

「……私は、そうは思わない」

 その言葉を聞いて、レオンはライカに視線を向けた。

 怒ってはいたが、あれは生きていると知らせなかったから怒っているのだ。恨みのある怒りではなかった。

「神になれたから、お前と会えた。それだけで、私は……その……幸せ、だった」

 照れたように、ライカは言う。

「それにな。私の体は、まだあの世界に残ってるんだぞ。今は訳あって、魂を核とした幽体だが」

「俺もだ。体は、もうないがな。今は涼風を依代としている」

 そこで、ライカは何かを思い出したように、

「……ん、待てよ。つまり、私が初めて涼風と会った十年前から、お前はアイツに憑いていたのか?」

「ああ、そうだが」

「ふーん……」

 意味ありげな視線をレオンに向ける。

 レオンは術式を彫る手を動かし始め、

「悪かった。その、何だ……その服似合ってるな」

 少し前、涼風に着せられるところを見ていたのだが。

「誤魔化すな。でも……ありがと」

 まんざらでもない様子のライカ。

「出来た」

「よし。行くか」

 と立ち上がるライカを、レオンは片手で制した。

「黒希はどうした」

「……置いてきた。お前の方が大事だ」

「それは嬉しいが、アイツも大事だ」

「殺そうとしたくせに……」

 ライカがボソッと呟く。

「仕方ないだろ。力を試せと言われていた。本気でやるのが当然だ。それに、お前が憑いていたから死なないと推測した」

「大胆だな」

「黒希をどうするつもりだ。ハイガミが言うには、見込みがあるそうだな。俺はそうは思えないが」

「ハイガミは、アイツは『後継者』の中で一番強くなれる可能性があるとも言っていただろ」

「……呪いを力に変換する体質か」

「それだけじゃないぞ」

「何だっていい。今のアイツは、弱い。熾天使にだって勝てないぞ」

「魂と『刻印』を特殊な壁で分けているからな。能力値は、あれが限界だ」

「今は何割くらい?」

「二割」

「二割か……」

 興味深そうに、レオンは繰り返した。

「話は後にしよう。ここじゃ落ち着かない」

「……そうだな」

 地面に彫った術式の上に立ち、魔術を発動する。

 屋敷に転移する。

 室内は、シーンと静まり返っていた。

「……妙だな。誰もいない」

 いつもなら、涼風曰く『萌えボイス』とやらが屋敷内にガンガン響いて騒々しいのだが。

 ライカが玄関の方を見て、

「転移系の魔術を使った痕跡があるぞ」

 レオンとライカは玄関の方へ歩いて行くと、跡を辿って転移魔術を行使した。








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