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色とりどりの黙示録  作者: owen
序章
24/97

18

 

 夜。

 ボロボロのアパートがある高台の下。今は使われていない海岸沿いの休憩所に咲はいた。

 この休憩所は、昔使われていた集会所の建物の裏にあるため、地元の人でも存在自体知らない者が多い。

 車の走行音が聞こえないほど、静かな夜だ。

 そんな夜に、咲は一人でベンチに腰掛けていた。

 足をパタパタと動かし、満天の星空を仰ぎ見る。

 星空の一点で、星が動いた。正確には、星に見える光だ。夜間飛行ではない。その青い光は少しずつ大きくなり、そして、青い光が入った小瓶を糸で首に提げる青い小鳥が、手摺に停まった。

「おいで」

 小鳥を、膝の上に誘う。

 すると、小鳥は何の躊躇もなく羽ばたき、咲の膝の上に移った。

 小鳥を撫でる。

『咲、調子はどう?』

 小鳥から若い女性の声がする。声が発せられたのは、小鳥の首に提げられた小瓶からだった。

 青い光が話す。

「大丈夫だよ、お母さん。この世界は少し息苦しいけど、もう慣れたよ」

『そう……ごめんなさいね。貴女に辛い思いをさせてしまって』

 申し訳なさそうな声に、咲は首を横に振る。

「ううん、いいの。このくらい耐えなきゃ、地獄はもっと息苦しいだろうから」

『本当に、貴女一人で行くの?』

「うん。黒希には頼れないよ。あの人も、自分の事で精一杯みたいだから……」

『……そう。お母さんね、本当は貴女を行かせたくないの。でも、貴女は止めても行くんでしょう?』

「うん。決めたから。安心してよ、お母さん。ちゃんと光助こうすけを連れて帰ってみせるから」

 声は少し黙り、やがて、

『……咲、貴女の無事を心から祈っているわ』

「いつかきっと、光助と一緒にお母さんも助け出すから。そしたらまた、三人で暮らそ?」

『ええ。待ってる』

 青い小鳥が、再び手摺に移った。小鳥は、ジッと咲を見つめていた。

 その小鳥の思考を見透かしたように咲は微笑み、

「私なら大丈夫。お母さんの元にお行き」

 と言うと、小鳥は夜空に飛び立った。その姿が見えなくなるまで、見つめる。

「……帰らなきゃ」

 立ち上がると、海からの風に白い髪が揺れた。

 何か、胸騒ぎがした。

 八月六日。その日を境に、何かが変わるような予感がする。

「……」

 それらを振り切るように、咲は駆け出した。

 早く帰らなければ、叶に家を抜け出したことがバレてしまう。





序章は以上になります

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