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色とりどりの黙示録  作者: owen
序章
21/97

16

 

 黒希を空港で下ろした後、車はビーチ付近のホテルの前に停まっていた。

「『アウトサイダー』が使う端末のIPアドレスを辿って、ようやく突き止めたのがこの場所だ」

「なら、期待はできませんね」

 助手席に座る海留が、拳銃の弾倉をチェックしながら言った。

「まぁ、他に手掛かりが無い以上、行く他ありませんが」

 拳銃を腰の後ろに挟み、車を降りる。

 叶も、それに続く。

 栄一と咲は、車で待機する。

 ホテルに入る。

 海留は、栄一から渡された手元のタブレットを見て、階段に向かった。

「それで、何かあったんですか?」

 急に、海留が訊いてきた。

「何が?」

「リーダーですよ。不機嫌だったようですが」

「……」

 叶の脳裏に、あの光景が浮かぶ。

 あんな黒希は初めて見た。何度か怒ったところを見たことはあるが、ただ怒りをぶつけるような怒り方は初めて見た。

 黒希とあの白衣姿の男と、何かあるのだろうか。

 あったとしても関係ない、のだろうか。

 黒希のためなら、何でもするのに。

 頼りにしてくてもいいのに。

 少しは振り向いて欲しいものだ。

 これじゃあ、何のために強くなったのか、分からなくなる。

「……」

「叶さん?」

 海留の声で我に返った。

「え? あ、何だっけ」

「リーダーのことですよ」

「……本人に直接訊けば」

 ああいったことを、本人に無断で話すのは気がひける。

「僕が訊いたところで、彼はきっと真実を答えませんよ」

「……前から気になってたんだけどさ。アンタってアレなの?」

「アレとは?」

「その……同性愛者」

 すると、海留は笑った。

「はは。僕がゲイじゃないかと貴女は疑っていたんですか?」

「だって……アンタが『シーカー』にいる理由ってさ……」

「確かに、リーダーの黒希という男を知るためですよ。でも、そういう意味じゃありません。同性愛に偏見はありませんが、僕は違いますよ。そもそも、恋という機能は僕には無用の長物です」

「……」

 海留がこちらに顔を向け、微笑を見せた。

「貴女は違うようですが」

「ッ。何を……」

 叶が何かを言いかけたところで、海留は片手を上げてそれを制した。

「この階です」

 海留がドアを僅かに開け、隙間から廊下を覗く。

 早朝なので、人通りはない。

「行きますよ」

 叶は小さく頷いた。

 廊下に出る。

 自然を装って歩く。信号が発せられている部屋に向かう。

 部屋にの前に着くと、二人は腰の後ろから拳銃を取り出し、顔を見合わせた。

 海留が手信号ハンドシグナルで、突入を指示する。

 海留、叶の順で部屋に入る。拳銃を構える。

 部屋は無人だった。

 海留が、叶に浴槽を確認するよう指示を出す。海留は部屋の奥、ベランダに出る。

 やはり、誰もいない。

 手元のタブレットを見るが、信号の発信源は確かにこの部屋にあった。

 部屋の中に戻り、ベッドの下を見る。

 何かあった。

 手を伸ばし、それを引っ張り出す。

 アタッシュケースだった。開けると、キーボードとディスプレイが中に取り付けてあった。

 ラップトップだ。信号の発信源はこれらしい。

 バスルームから叶が出てくる。

「誰もいない。けど、さっきまで人がいたみたい。ここに来たのバレたのかな」

「……」

 違うと海留は思った。

 ここに誰かが来ると知っていたのなら、何故ラップトップを隠すだけで、持って逃げなかった。何かあるはずだ。

「ここを出ましょう。もう用はない」

 ラップトップを持って部屋を出る。

 廊下を曲がると、階段から若い白人男性が二人出てくるのが見えた。シャツにジーンズといった、どちらも至って普通の格好をしている。

 だが、海留と叶は男の顔を見て足を止めた。

 二人の男の顔に、仮面のような半透明の不気味な顔が貼り付いていた。

 人間ではないモノが、男達に憑いていた。

 二人は一度目を合わせ、踵を返して走り出した。

 後ろから追ってくる男一人に海留は狙いを定め、引き金を引いた。

 右肩に命中する。傷口から黒煙が上がる。男の顔に貼り付いた顔が、苦痛に歪む。しかしそれだけ。動きまでは止まらない。

「どうして悪魔がここにいるんだよ!」

 叶が言う。

 悪魔。醜く、卑しい人間の成れの果て。それが、男達にとり憑くモノの正体。

「考えるのは後です! 早く幻術を!」

 非常階段の手前、叶は立ち止まって悪魔の方を振り向き、パチンと指を鳴らした。

 廊下に、奇妙な風が吹いた。

 衣服を通り抜け、直接肌に当たり、さらに体内にまで浸透する風。

 悪魔の動きが止まった。

 叶の力、幻術。名の通り幻を見せる力だ。

 二人は非常階段を駆け下りる。

 逃げるしか手段がないわけじゃない。悪魔に対抗するために、二人が持つ拳銃には銀の弾が込められている。

 だが、今の目的はラップトップの回収と生還。危険を冒さず逃げるのが、この状況においては賢明な判断と言える。

 外に出て、車に乗り込む。

「出してください!」

 海留が叫ぶと、栄一はアクセルを踏んで車を発進させた。

 ホテルから十分に離れると、

「何があった?」

 栄一が訊いてくる。

 それに海留が答える。

「悪魔がいました」

「悪魔が? 何故だ」

「知りませんよ。悪魔はともかく、ラップトップを見つけました。『アウトサイダー』に関する情報が得られるかもしれません」

「よし、よくやった。ラップトップはこちらで分析する」

「それなら、僕も一緒に本部に行きます」

「分かった。今日はご苦労だったな」

 不可解な事もあったが、何はともあれ、本日の業務は終了した。




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