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栄一と合流し、地上に戻った。
海留は調べたいことがあると言って、地下の施設に留まっている。
「今回の件だが、どうやら嵌められたらしい」
運転席に座る栄一が、タブレットを見て言った。
「ついさっき、NSAのサーバーに何者かの侵入が確認された。偽の情報を流して、まんまと誘き寄せられたわけだ。すまない。不注意だった」
「そう思うなら給料増やせ。休みを増やせ」
と、後部座席で不貞寝する黒希が言う。両手には包帯が巻かれている。
「給料はともかく、休みは十分過ぎるほど与えられていると思うが」
「ニートには足りない」
そう言った黒希の表情は、至って真顔。
「……たまに、お前のリーダーとしての素質を疑う時があるよ」
ため息混じりに栄一が言った。
それに、中部座席に座る叶がムッとした表情で、
「おい栄一」
「……悪かった。謝るよ。ところで黒希、実はお前に話が……」
栄一の言葉の途中で、
「断る」
「……まだ何も言ってないが」
「もう一つ仕事、だろ。断る。そんな気分じゃないし、疲れた」
黒希の力は、文字通り人並み外れている。
その内である超人的な身体能力は、一分行使し続けるだけで体力が尽きてしまう。まぁ、単に黒希自身の体力の限界値が低いだけなのだが。
「気分じゃないって……人が死ぬかもしれないんだぞ。それでも構わないのか?」
情に訴えかける言葉。
黒希はイラついたように目元を僅かに動かし、そして言った。
「人はみんな死ぬもんだ。一々気にしてちゃ生きていけねぇよ」
そこで叶が、
「代わりに私が受けるよ」
「だが……」
「何? 私じゃ不満だっての?」
「……分かった。海留は必ず同行させる。今回は彼のスキルが不可欠だ」
栄一の言葉で、黒希と叶はどんな仕事かを看破した。
「もしかして、『アウトサイダー』絡み?」
叶が訊くと、栄一は頷いた。
「手掛かりを掴めたそうだ。ここ、マイアミに奴がいる」
「偶然にしては、出来過ぎてるな」
叶は顎に手を当て、考え始めた。
『アウトサイダー』とは、とあるハッカーの名だ。『シーカー』の仕事の邪魔ばかりしてくる、非常に迷惑な奴だ。度々、海留が対処するようだが、今まで尻尾を掴めずにいた。
性別、年齢すら判らない状況なので、僅かな手掛かりでも重要になる。例え罠でも、そこに向かうしかなくなる。
「黒希はどうするんだ」
栄一が問うと、
「帰る。ジェット機用意してくれ」
「……分かった」
それから数分して、海留が戻ってきた。
こうして、一つの仕事が、後味の悪い終わり方をした。




