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色とりどりの黙示録  作者: owen
序章
16/97

12

 

 眩しい光に包まれ、目を開けると、前にいたはずの栄一が消えていた。横にいた叶もいない。

 しかし、場所はさっきと変わっていないように見えた。

「何が何やら……」

 海留は頭を抱えたくなる衝動に駆られたが、思考を巡らせることに集中した。

 拳銃を握る右手を意識しながら、歩き出す。出口を探すための手掛かりを探す。


 通路の突き当たりに差し掛かった時、状況は動いた。

 複数の足音が聞こえた。

 海留は通路の角に張り付き、通路を覗いた。

 ライフルで武装した者が四人、列をなして歩いている。妙なことに、所属部署のロゴを身に付けていなかった。

 どうするか。そんなものは決まってる。

「そこで止まってください」

 角から出て、部隊に銃を向け言った。

 応えは、銃声で返ってきた。

 隊員達は振り返るや否や、急に撃ってきた。

 海留は転がるように、通路の角に身を潜めた。

 敵。そう認識する。

 急所以外を撃って無力化。

 海留の脳に、まるでパソコンのコマンドのようにその言葉が浮かんだ。

 青い瞳から、感情が消える。機械的な瞳になる。

 思考する速度が飛躍的に上がる。

 脳から体中に伝達される電気信号が加速する。

 腰の後ろに手を伸ばし、銀のナイフを抜き取ってから敵の前に身を晒す。

 敵が、各々のタイミングで引き金を引く。そのことを、海留は見逃さなかった。

 敵の武器、SCAR-H。

 SCAR-Hの情報。

 装弾数、30。

 発射速度、550-600発/分。多少のズレ有。

 銃口速度、714m/s。多少のズレ有。

 こちらの武器、M1911と照合、比較。

 性能、こちらの方が劣る。

 状況、圧倒的不利。

 一瞬で判断する。だから、退かない。

 勝利する答えを導き出した。

 左手に持っていた銀のナイフを、海留から見て十時の方向にいた隊員に向け投げた。

 ナイフは隊員の右肩に突き刺さった。

 一直線の通路の片隅に、ほんの一瞬の安全地帯ができる。そこで身を屈め、反撃した。

 隊員は四人。海留の拳銃から放たれた弾丸の数は四つ。一発も外さず、その上急所を外した。

 海留は立ち上がり、拳銃を構えたまま隊員達に歩み寄った。

 近付き、そして、異変に気付く。

 痛みに悶える隊員達の姿が、ブレた。

 屈み、隊員達に触れようと手を伸ばした。が、手は何にも触れず、通り抜けた。

 そこに隊員の体があるはずなのに、通り抜けた。

「これは……3D映像、ホログラムですか」

 そうなると、矛盾ができる。

 もし、この隊員達がホログラムだとすると、彼らが持つ銃から放たれた弾丸が壁を砕いたのは、どう説明する。こちらの弾丸が当たったのにはどう説明がつく。

 いや、だが、この隊員達は間違いなくホログラムだった。

 これらの疑問全てに説明がつく答えは、

「……まさか、この施設全体が立体映像だなんて突飛な話、ありませんよね」

 こちらの弾丸が当たった説明はつかないが、これなら納得できた。

 となると、これを仕組んだ何者かがいる。

 海留が考え込んでいると、背後で羽虫の羽音に似た音が聞こえた。

 慌てて振り返り、銃を向ける。

 まただ。さっきと全く同じ姿の隊員が二人いた。

 一体何処から現れた。やはりホログラムなのか。

 考えながら、撃つ。

 今度は胸を狙う。殺す。

 相手は生命体ではない。こればっかりは、リーダーも文句は言えまい。

 海留はポケットからスマートフォンを取り出すとBluetoothを作動させた。スティーブ・ジョブズ氏の偉大な発明品で、良い子は真似しちゃいけない法に触れるギリギリのことをする。

 この施設内で信号を発している端末を、一つ感知する。

 ここは地下。スマートフォンの電波など届きっこない。電話をしようとするバカもいない。

 つまり、施設内にある何かを操作するために施設内で端末を使用している者がいる。

 それが親玉。

 海留は信号だけを頼りに、歩き始めた。



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