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マイアミ国際空港内の喫茶店。
「次」
と、海留が。
「次」
と、黒希が。
「チェック」
と、海留が。
「……チッ」
黒希は舌打ちする。
そんな黒希に追い討ちをかけるように、
「これで、チェックメイト。勝負ありです」
「あぁ、クソ……」
黒希と海留の二人は、一つのテーブルに向かい合わせに座って海留のスマートフォンでチェスをしていた。
勝負は海留の勝ち。かなり接戦だったと、横から見ていた素人の咲でも分かった。
「これでまた、僕の無敗記録に新たな戦歴が刻まれました。感謝しますよ、リーダー」
嫌味っぽく海留は言った。
「ふん」
黒希は不満そうに鼻で息を鳴らし、ブラックコーヒーを口にして、
「苦……」
と顔を歪めて言って、無料サービスの砂糖を三袋も投入する。スプーンでかき混ぜながら、
「店ごとに味が違うってのも考えもんだな」
「カフェラテでも注文したらどうです?」
「これから仕事。しかも、夜中だ。時差ボケ対策に眠らないようにしないと」
それによってら黒希以外の三人の前にも苦味の強いブラックコーヒーが置かれていた。
マイアミは夜。日本との時差は、確か十二時間はあったはずだ。
「ねぇ黒希」
テーブルを挟んだ斜め前の席に座る叶が声を掛けてきた。
「ん」
「私達、本当に待機でいいの?」
叶には、咲と待機しろという指示を出していた。
「お前らはバックアップだ。海留、仕事場所は地下だったよな? 無線を使ってでの地上との交信は可能か?」
「地下にいる者同士なら可能ですが、地上と地下は難しいでしょうね。何せ、極秘施設って言うもんですから、外部への電波の遮断、及びその逆の仕掛けが施されてる可能性が高い」
海留の説明に、ただ一人咲が首を傾げた。他二人は、それに気付きもしなかった。
「なら仕方ない。地下までお前らも同行して適当な場所で待機」
黒希の指示に、叶と咲は頷いた。
海留が腕時計を見て、
「そろそろ時間です。出ましょう」