表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
48/48

10-2

 わたしの名前は、平衡比良……らしい。わたしには記憶がない。自分自身のことも、家族や友達のことも。


「どう? 調子は」


 金髪が綺麗なお姉さんが、わたしに問い掛けてくる。わたしのことを以前から知っているみたい。けど、わたしにはその記憶も無い。


「元気は元気です。記憶が無いので確証はないですけど」


「そう。まあ元気ならいいわ。食欲もあるみたいだし、心配は不要ね」


「キイラさん。比良姉の記憶は戻るのじゃろか」


「戻る可能性は低いらしいわ。日常生活には支障ないのだけれど、記憶を失っていることに不安はあるはずだわ」


「そう、なのか。残念じゃ。比良姉の記憶が戻ってくれれば、僕は嬉しいのじゃ」


 わたしのことを自分のことのように想ってくれている男の子。わたしの弟なんだけど、とてもしっかりしていて頼りになるんだ。あまり似てないけど。


「元気がありゃあ心配ないぜ。人間、食って寝てればなんとかなるってな」


 赤髪の男性が励ましてくれている。その人の言葉は不思議と安心感を与えてくれる。


「あの……何かすみません。わたしのことを心配してくれているみたいで。わたし、皆さんとの記憶がないものだから、なんだか申し訳なくって」


「貴女が気を使うことなんてないわ。皆、貴女のことを純粋に想っているのだから、ね?」


「……はい。ありがとうございます!」


「さて。そろそろ帰りましょうか、緋。比良の様子を見に来ただけですし」


「おう。また来るからな! あんまり考え込むなよ? 身体に毒だからな。じゃな」


「はい。わざわざありがとうございました」


「懐ちゃん。みいちゃんも帰るね。お姉ちゃん、またね」


「うん。気を付けてね」


 懐流くんが送っていくと言って一緒に出ていった。

 気付けば、家に居るのはわたしだけになった。


「静かだ……静かな家だ。記憶の戻りは感じられない……焦りは禁物、か」


 両親が帰ってくるまで時間はまだある。懐流くんも直ぐには帰ってこないかな? 友達とはなかなか離れたくないだろうから。


「……友達……か。わたしの友達はどうしてるかな?」


 ケータイの写真のわたし。このわたしに戻ることは出来るのだろうか。でも何だろう? 写真を見ていると、胸が苦しくなる。どうしてか解らない。


「頑張ろう。わたしに出来ることから」


 睡魔が襲ってきた。静かな家に居るからかな。少しだけ寝よう。脳が記憶を整理してくれるかもしれない。


※ ※ ※


「うーん! 比良の奴、何とかなるかな?」


「さっきも言ったけれど、記憶が戻るのは難しいわ。……そのほうが幸せでしょうけれど……」


「そうか? オレ、記憶が突然無くなったら嫌だぜ? 自分だけが、自分のことを知らないなんてよ」


「確かにそれは一理あるわ。けれど……忘れていたほうがいい記憶もあるわよ」


「やりきれないぜ。……非力だな、オレ達」


「非力なら非力なりに、しがみつくだけだわ。彼女のこと、出来るだけ支えていくだけよ」


「だな。結局のところ、比良がどうしたいかだもんな。オレ達がどうこう言うことじゃないぜ」


「そうね。さあ、着いたわよ。大分付き合わせちゃったわね。色々と助かったわ」


「遠慮すんなって。友達だろ」


「そうね。これからも頼りにしてるわ」


 クラクションを鳴らして走り出す。今、ワタシ達が出来ることには限りがある。だけど、何も出来ない訳じゃない。出来ることからやっていけば、必ず道は開く筈だもの。


「平衡比良。大丈夫だわ、貴女なら!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ