10-1
僕の隣には、クラスメイトのみいちゃんが居る。今日も一緒に帰り道を歩いていた。
「ねえ、今日も良い?」
「うん」
ここのところの会話の決まり。僕は静かに頷く。
みいちゃんを歩道側へ寄せて歩いていく。行きも帰りも同じ道。家に帰れば家族が待っている。
「懐ちゃん。大丈夫だよ」
みいちゃんが手を握ってくる。その手は僕を安心させてくれる。とてもとても柔らかい手。その手に包まれながら、僕は家に着いた。
※ ※ ※
「ただいま!」
「おじゃまします」
靴を脱いでランドセルを置く。そのまま、比良姉の部屋に向かった。
「比良姉、入るよ?」
ノックをしてから入っていく。いつもと変わらない部屋。いつもと変わらない比良姉の姿。
「やあ。おかえり」
「ただいまなんじゃ。大丈夫だったか?」
「ああ。誰も来なかったし、何も届かなかった。静かなものだったよ」
静かに微笑む比良姉。けど、少し違う。その微笑みは、僕に向けているけど違う。弟に対してというより、年下の男の子に向けている様だ。
「懐流君。わたしのケータイを弄っていたら、こんな写真があったんだけど……知らないかな?」
比良姉がケータイの画面を見せてきた。楽しそうに話す様子を撮ったようだ。撮ったのは……二戸さんだろう。
「彼女はわたしの友人なのか? ならば会いたいな。同じ制服だから同じ学校だろう?」
「……うん。今は訳あって会えないんじゃよ。きっと目処がついたら会いに来るのじゃ」
「そっか。自分の事なのに分からないなんて……わたしは情けないな」
比良姉は髪を弄る。写真に映る自分は髪が長い。けれど、今の自分は髪が短い。そのことを気にしているのだろう。
「また、伸ばせばいいのじゃ!」
「そうだね。うん、そうするよ」
眼鏡も……ポニーテールも……友人も……そして、記憶も。比良姉は、この一ヶ月で色んなものを失ってしまった。僕の憧れた比良姉はもういない。
「比良姉、おやつ食べる?」
「うん。ありがとう」
けれど、僕の大好きな比良姉は居る。今度は僕が比良姉を護る番だ。大丈夫、僕には傍で協力してくれる人がいるんじゃ。
「大丈夫だよ、懐ちゃん」
「うん!」
みいちゃんの言葉が、僕に勇気をくれた。




