9-9
緋からの電話とは通話中。スピーカー状態で助手席に放置しつつ聞き耳を立てる。耳から得る音がワタシのハンドル捌きを狂わせる。
「なんだっていうの!? まったく! 人の言うことなんか聞きやしないわ。独断行動なんて簡単に予測出来た筈なのに……ワタシの馬鹿!」
思わずクラクションを鳴らしてしまった。焦りは禁物だと思いつつも、やはり気持ちは先走るもの。
「着いた……わよね?」
住宅街からは離れているからこその豪邸。そんな豪邸の敷地内は異様に満ちていた。沢山の人間が血だらけで倒れている。傍らに拳銃もある。頭の傷から見て、おそらくは自殺なのかも。
「え……ちょっと!?」
地面に刀が突き刺さっていた。〈自由軍〉が持っていたものでしょう。問題は別にあった。血に染まり倒れている少女。比良と来蘭だ。来蘭の方は、もう手遅れなのは一目瞭然だった。比良の方は、気を失っているだけみたい。
「……時代錯誤もいいところだわ……」
おそらく、刀で切り落とされたのだろう。頭が無惨にも転がっていた。〈自由軍〉の格好の首なしが、傍で倒れている様子からして彼も〈自由軍〉だったのね。抵抗した様子はない……仲間が介錯したのね。
「悪いけれど、武士の情けは通用しないわ」
彼の頭に布を掛けた。犯罪を犯したとはいえ、死者である以上、弔いは必要でしょう。
「優しいんだな」
「無事でよかったわ。まったく、気が気じゃないわよ!」
「漢はいいんだ。問題は彼女。目の前で人が死にすぎた。目が覚めたら地獄を見るぜ」
「二戸も来蘭も比良の友人よ。その地獄は計り知れないわ」
パトカーのサイレンが近付いてきた。最悪の幕切れだったわね。わたしのケータイが鳴る。どうやら、灯可里ちゃんを無事に救出したみたい。
「比良に付き添ってあげて。救急車で病院送りよ、あの怪我は」
「漢に出来ることはそれくらいだな。分かったぜ」
「任せたわ。ワタシも後で向かうから」
〈自由軍〉の目的は、真意は、闇の中。後味が悪い幕切れ。結局、肝心なときは無力なのね……人間って。




