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9-8

「どうして!? ……何でお前が〈自由軍〉なんかに!」


「今、話したことが全てさ。思い知らせるんだよ! 金だけじゃ解決できないことがあるってな!」


 二戸が右手を空に掲げる。すると、自由軍の奴等が一斉に銃を向けてきた。あたし達を撃つ気か?


「比良よ。今なら引き返せる。大人しく身を退け」


「断るっての。あたしがこういう脅しなんかに屈しないの、知ってるだろう」


「……そうだったな。ならば……これならどうだ」


 自由軍の奴等が数人がかりで何かを運んできた。

 布に覆われていたが、その布はすぐに外された。


「どっ……どういう……こった!?」


「どうもこうもない。こういうことさ」


「……」


 透明な容器に閉じ込められている女子。こんな争いとは無縁な筈の彼女が目の前でグッタリしていた。


「来蘭ちゃん!!」


「……」


「無駄だ。声は聞こえないようになっている。お互いにな」


「来蘭ちゃんは関係ねえだろうが!」


「言った筈だ、貴族に復讐をすると。殺すだけが復讐ではない。目の前で起こる悲劇に対する無力感を与えてやるのも、また復讐さ」


 二戸の指が僅かに動いた。何の指示を出したんだ!?


「動けば撃つ。大人しくそこで見ていろ……悲劇を!」


 透明の容器から音がしだした。瞬間、来蘭ちゃんの目が開く。だが何だか様子がおかしい。


「来蘭ちゃん!?」


 瞳孔が開いている。そして、もがき苦しんでいる。あたしの姿に気付いたのか、手を伸ばしてきた。


「ちっ!」


「動けば撃つ! 比良に協力している以上、キミも対象だよ」


 緋も身動きが取れず困っているみたいだ。金縛りなんか掛けられていないのに身体は動けずにいる。歯痒いってもんじゃない! 苦しいっての!


「やめろ二戸! 来蘭ちゃんは関係ないだろう!」


「貴族の血を引いていることを恨むことだ。……やれ」


 二戸の声と共に透明の容器が赤く染まった。目の前で親友が無惨に殺されてしまった。受け入れたくなどない。けれど容赦なく現実が追い討ちを掛ける。


「見ろ」


 容器が開かれた。血が流れてくる。そして、力尽きた親友の身体が現れた。目を背けたかった。だけど背けたくもなかった。


「来蘭……ちゃん」


 あたしに関わったばかりに、来蘭ちゃんは殺されてしまった。あたしの存在が不幸を呼んだのか!?


「ふっ! 案外呆気なかった。さて、次の標的を狩りに向かいますか。そうだな~、遠流路の仕留め損ねた奴等を仕留めようか。確か男女の姉弟だったっけ」


「!?」


 二戸の狙いは綺姫ジュリエと懐流! ざけんな! 綺姫ジュリエが殺されたら懐流が悲しむじゃねえか! 懐流が殺されたら、あたしが……そんなの御免だ! 殺させてたまるかっての! あたしが護るって懐流に誓ったんだ。もうこれ以上、あたしのせいで誰かが不幸になるのは御免だっての!!


「動いたら殺す。次はない」


「待てよ。二戸」


 あたしの思考は停止していた。無心になっていた。身体は勝手に動くし、勝手に言葉が出た。


「比良!」


 緋の言葉がすり抜けていく。効力はない。


「撃て」


 二戸の指示で銃弾が放たれた。あたしの身体を弾丸が貫通していく。痛い。痛い筈なのに止まれなかった。それどころか、あたしの身体を熱さが包んでいた。高熱でも出したかのように熱い。だからなのか、傷みは次第に感じなくなっていた。


「驚いたよ、本当に。ここまでとは」


「今更あたしのことが恐くなったのか? さっきまでの威勢が消えてるっての。二戸、アンタは越えちゃいけない一線を越えちまったねえ。もう、後戻りは出来ない……分かってる?」


「比良から近付いてくれるなんて。夢のようだよ」


「夢なら良かったのにねえ。残念ながら現実だ。あたしもアンタも……もう終わりだ。二戸、さよならだ、大人しく死んでくれっての!!」


 あたしの手刀が、二戸の腹部を貫通した。

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