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「どうして!? ……何でお前が〈自由軍〉なんかに!」
「今、話したことが全てさ。思い知らせるんだよ! 金だけじゃ解決できないことがあるってな!」
二戸が右手を空に掲げる。すると、自由軍の奴等が一斉に銃を向けてきた。あたし達を撃つ気か?
「比良よ。今なら引き返せる。大人しく身を退け」
「断るっての。あたしがこういう脅しなんかに屈しないの、知ってるだろう」
「……そうだったな。ならば……これならどうだ」
自由軍の奴等が数人がかりで何かを運んできた。
布に覆われていたが、その布はすぐに外された。
「どっ……どういう……こった!?」
「どうもこうもない。こういうことさ」
「……」
透明な容器に閉じ込められている女子。こんな争いとは無縁な筈の彼女が目の前でグッタリしていた。
「来蘭ちゃん!!」
「……」
「無駄だ。声は聞こえないようになっている。お互いにな」
「来蘭ちゃんは関係ねえだろうが!」
「言った筈だ、貴族に復讐をすると。殺すだけが復讐ではない。目の前で起こる悲劇に対する無力感を与えてやるのも、また復讐さ」
二戸の指が僅かに動いた。何の指示を出したんだ!?
「動けば撃つ。大人しくそこで見ていろ……悲劇を!」
透明の容器から音がしだした。瞬間、来蘭ちゃんの目が開く。だが何だか様子がおかしい。
「来蘭ちゃん!?」
瞳孔が開いている。そして、もがき苦しんでいる。あたしの姿に気付いたのか、手を伸ばしてきた。
「ちっ!」
「動けば撃つ! 比良に協力している以上、キミも対象だよ」
緋も身動きが取れず困っているみたいだ。金縛りなんか掛けられていないのに身体は動けずにいる。歯痒いってもんじゃない! 苦しいっての!
「やめろ二戸! 来蘭ちゃんは関係ないだろう!」
「貴族の血を引いていることを恨むことだ。……やれ」
二戸の声と共に透明の容器が赤く染まった。目の前で親友が無惨に殺されてしまった。受け入れたくなどない。けれど容赦なく現実が追い討ちを掛ける。
「見ろ」
容器が開かれた。血が流れてくる。そして、力尽きた親友の身体が現れた。目を背けたかった。だけど背けたくもなかった。
「来蘭……ちゃん」
あたしに関わったばかりに、来蘭ちゃんは殺されてしまった。あたしの存在が不幸を呼んだのか!?
「ふっ! 案外呆気なかった。さて、次の標的を狩りに向かいますか。そうだな~、遠流路の仕留め損ねた奴等を仕留めようか。確か男女の姉弟だったっけ」
「!?」
二戸の狙いは綺姫と懐流! ざけんな! 綺姫が殺されたら懐流が悲しむじゃねえか! 懐流が殺されたら、あたしが……そんなの御免だ! 殺させてたまるかっての! あたしが護るって懐流に誓ったんだ。もうこれ以上、あたしのせいで誰かが不幸になるのは御免だっての!!
「動いたら殺す。次はない」
「待てよ。二戸」
あたしの思考は停止していた。無心になっていた。身体は勝手に動くし、勝手に言葉が出た。
「比良!」
緋の言葉がすり抜けていく。効力はない。
「撃て」
二戸の指示で銃弾が放たれた。あたしの身体を弾丸が貫通していく。痛い。痛い筈なのに止まれなかった。それどころか、あたしの身体を熱さが包んでいた。高熱でも出したかのように熱い。だからなのか、傷みは次第に感じなくなっていた。
「驚いたよ、本当に。ここまでとは」
「今更あたしのことが恐くなったのか? さっきまでの威勢が消えてるっての。二戸、アンタは越えちゃいけない一線を越えちまったねえ。もう、後戻りは出来ない……分かってる?」
「比良から近付いてくれるなんて。夢のようだよ」
「夢なら良かったのにねえ。残念ながら現実だ。あたしもアンタも……もう終わりだ。二戸、さよならだ、大人しく死んでくれっての!!」
あたしの手刀が、二戸の腹部を貫通した。




