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「ワタシ達は待っているのが賢明よ。事実、これといって出来ることは少ないのだもの」
キイラが、書類を見ながら、あたし達に話し掛ける。そんなこと言ったって聞かないのは承知だろうに。
「キイラは、サイバー犯罪課の支援だろ。漢達よりも出来ることがあるじゃないか」
「それだけでしょ? 実際に〈自由軍〉の連中と接触するのは警察だもの。分かって?」
「え……? 漢達、付いてっちゃ駄目か!?」
「当たり前でしょ! 民間人を事件現場に居合わせてどうするの。緋達はあくまでもワタシの協力者なんだから」
「……ちぇ。そんな心配無用なのによ」
この緋という男。あたしの気のせいじゃなければ、〈自由軍〉と戦いたがってるのか? 進んで首を突っ込んでいくタイプなのかも。
「と・に・か・く! ワタシが指示をするまでは待機していてよ」
「たくっ。相変わらずキッツいぜ」
緋とキイラの会話は、まるで痴話喧嘩のようだ。もしかして付き合ってんのかねぇ。
あたし達を残してキイラは行ってしまった。
「なあ、お前とキイラって……」
「うん? 漢とキイラ? ……友達だぜ」
「いや。あたし、まだそこまで訊いてない」
「あ……。よく言われるからな。キイラはキイラで相手が居るんだぜ? 本人は否定してるけど」
「お前はいるのかい?」
「おう。素直じゃないんだが、あれはあれで可愛げがあるんだぜ。……何で?」
「いや……あんまり深い意味はないっての」
ただそういう感じに見えたから訊いただけなんだがねえ。まさか突っ込まれるとは思わなかった。
「っうし! じゃあ、漢は漢で動くぜ! ジッとしてるのは性に合わない」
緋は、グイッと伸びをすると歩き出した。
「なんか心当たりでもあるのか」
「いんや。ただ、漢の山勘なんだけどよ、〈自由軍〉の狙いは「貴族」なんじゃないか。だったら、この辺りの「貴族」の所に行くのはどうかと思ってよ」
成る程ねえ。灯可里が連れ去られたことも考慮すりゃ、その勘、いい線いってるかもねぇ。
「それじゃあ……平衡家に行くか」
「はい?」
あたしの言葉に、緋は首を傾げた。




