8-2
よく晴れた空は青い。その青空で輝いている太陽は眩しい。僕はそんな晴天の下、元気よく駆け回っている同級生を、ブランコに揺られながら眺めている。
「おーい! 懐流、一緒にサッカーやろう!」
僕は運動が苦手だ。それもこれも、家が良しとしなかった。貴族の人間が、庶民と土にまみれるなんて言語道断という考えだったから。
「僕は見てるだけでいい。構わずに楽しむんじゃよ」
満足に走り回ることも許されなかった。そのため、僕は身体があまり強くない。体力を使うかわりに勉強に精を出していた。
「ふー。いつまでもこうして揺らされているわけにもいかないんじゃ」
ひょいっとブランコを飛び降りる。地に足を付けるのは悪くない。自分の意思で歩ける足があるんだから、しっかり歩かなければ、足に申し訳が立たないんじゃい。
「懐ちゃん?」
「なんじゃい」
僕と同じクラスの女の子が話し掛けてきた。
くりくりとした黒い目が、とても綺麗に見える。
「皆と一緒に遊ばないの?」
「いいんじゃよ。見てるほうが気楽なんじゃい」
そう言ってその場をやり過ごす。クラスメイトの女の子にまで気にされる程、僕は寂しそうに映ったのだろうか。
「じゃあ……みいちゃんと遊ぼ」
向日葵の様に明るい笑顔を見せてくる。そして僕の左手を優しく掴むと、力一杯引っ張っていく。
「そんなに引っ張らなくても平気じゃよ」
「だって懐ちゃん、男の子だもん。男の子は力持ちなんでしょ? だから、みいちゃんも頑張って引っ張るの!」
みいちゃんが被っている帽子にはお花が飾ってある。だけど僕には、そのお花よりも、みいちゃんの笑顔のほうが眩しく見えた。
「しょうがないんじゃ」
みいちゃんに合わせるように駆けてみる。やっぱり、走ると気持ちがいい。僕の身体のあちこちが喜んでいる気がする。
「懐ちゃん、走るの速いよ。かけっこで一番なれるかも!」
「僕が? ムリじゃよ。皆、走るの速いんじゃよ」
「みいちゃんは、懐ちゃんが速いと思うよ! みいちゃんの思ったことは当たるんだから!」
手足を動かして力説するみいちゃんを見て、僕は可笑しくなってしまった。自分の事の様に話している姿が不思議だった。
「そうじゃろか? 僕には分からんのじゃよ」
「うん! みいちゃんを信じるの!」
そう言って、みいちゃんは胸を張ってみせた。
みいちゃんの堂堂とした姿が、僕には眩しかった。




