8-1
「すみません。お呼び立ていたしまして」
あたしの向かいに灯可里が座っている。
いつもながら綺麗な着物だこと。
「いいっての。秘宝の件だろう?」
「はい。あれから色々と調べてみました。その結果、判明したことがあります」
「何が判ったんだい?」
「これは、天道家の物でも、ましてや遠流路家の物でもありませんでした。これは……平衡家の物だったのです」
灯可里は、風呂敷を広げて秘宝を見せる。
あたしから言わせれば、やっぱり只の石だ。
「だったら、何で天道家の島に有ったんだ?」
「分かりません。それよりも疑問は、何故、遠流路の方が秘宝のことを知っていたのかということです」
「さあねえ。そもそもその石、そんなに貴重なのか?」
「貴重と言うより不思議なんです。特定の人物が触れると不思議なことが起きるみたいなんです。そして、その人物というのは……平衡家なんです」
「はーん。平衡家恐るべしだねぇ。てこったあ、あたしがこの石を触ればなんか起きんのかねえ?」
「触ります? 私も興味がありますから」
灯可里が秘宝を差し出してくる。躊躇なんかしないっての。こういうのは躊躇っちゃ駄目なんだぜい。
※ ※ ※
五分後。
「灯可里。あたし、どっか変わってるか?」
「いいえ。特に変化はありません」
「そっかー」
「比良さんには効果ないのでしょうか」
「……となると……お父? お祖父?」
「分かりません。ですが、若いのは比良さんですから、一番変化が見られると思ったのですが」
「うーん」
実は、あたし達が居る場所は図書館だ。派手に立ち回るわけにはいかない。それでも、確かめる方法はある。
「灯可里、そこに積んである本、いいか?」
「別に構いませんが?」
辞書並みの厚さの本が十冊積まれている。普通なら両手でも一遍に運ぶのは困難だ。
「物は試し、てねぇ」
あたしは、十冊の本を片手で持ち上げてみせた。
どうやら、外見には表れないが、確実に力が増してるみたいだねぇ。
「す、凄いです! これが秘宝の力」
「みたいだねえ。けど複雑だよ。天道家の家宝だと思っていたもんが、まさか平衡家のもんだったとは」
「いえ。ハッキリと持ち主が分かって安心しています。不思議なことも判りましたから」
「そうかい。そいつは良かった」
本に囲まれるのも悪くないかも。読む気はしないけど。ウーン! なんだかスッキリしたっての。




