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あの不幸から数日が経った。炎上する車に乗っていた懐流の両親と運転手は、焼死体となって車内より発見された。遺体の損傷は激しく、見た目では性別の判断すら難しい程だった。だが、この不幸は事故ではなく、事件となった。遺体から銃弾が発見されたのだ。銃弾の種類から、ライフルのような銃で遠距離から撃たれたものだと考えられるらしい。
「懐流。食わないと、もたないっての」
「……うん」
遠流路の親戚は懐流を引き受けるのを断った。
親戚は遠流路と距離を取りたいらしく、その為、懐流を引き取るのを拒んだわけだ。
「懐流……大丈夫かい」
「……うん」
懐流の返答はこんな感じだ。憔悴しきっており、心なしか痩せたような気がする。どんなに反抗していても、両親が目の前で焼死した現実を七歳の子供が受け入れることなど簡単な筈がない。
「……比良姉……ごめん。僕、迷惑だよね」
「何言ってんだ。そんなわけあるかい。迷惑なら泊めたりしないっての」
「姉上も僕を必要としてない。厄介者扱いじゃ。そもそも僕と姉上は、歳が離れているから会話をほとんどしたことがなかった。僕を弟と認識してるのかも怪しいもんじゃよ。親戚にも見放されてしまった。もう僕には未来がないんじゃ……。もう……」
どこで覚えたのか、懐流は手首を眺めて言葉を止めた。七歳が、そこまで追い込まれることが異常なのに、周囲は手を差し伸ばそうとしない。否、だからこそ追い込まれてしまっているのか。
「懐流。話があるんだけどよ」
「……なんじゃよ?……」
お父もお母も、お祖父も同意見。あたしよりも先に提案してきた。勿論、生半可な覚悟で決めていい事じゃないし、決められる事じゃない。それでも、あたし達の決心は変わらなかった。
「あたしの弟にならないか?」
「なん……じゃと!?」
暗くなっていた懐流の表情に変化があった。
明るくなったというより驚いたというほうが正しいだろう。それでも、暗くなられているより余程マシだ。
「あとは懐流自身が決めることだから」
「……僕と比良姉が姉弟になる……じゃと!?」
無理もない。〈遠流路〉から〈平衡〉の人間にならないか? と言われて即答できる七歳がいたら怖いよ。あたしは沈黙する懐流の反応に安堵している。
「うーん! たまには身体を動かしてくるかねえ!」
あたしまで一緒になって暗くなっているより、適度に助け船を出してやる位が丁度いいだろう。
「比良姉!」
「うん?」
「……僕、一生懸命頑張るんじゃ! 生きていくんじゃ! だから……だから……こんな僕で良ければ、お世話になりたいんじゃ!」
その目は真っ赤になっていた。涙が頬を伝い、声は震えている。それでも充分に懐流の気持ちは伝わった。その場の勢いなんかじゃなく、懐流の本気の気持ちが。




