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1-3

「ぐひひひぃぃ~」


 あたしの目の前で来蘭ちゃんがヨダレを垂らしている。しかも、テーブルに置かれたパフェを見てではない。来蘭ちゃんは、他のテーブルに座る女子に見とれているのだ。


「来蘭ちゃん。かえってこーい!」


「ぐひひひぃぃ~。かわいー! 女の子が選り取り見取りだよ~」


 性別が男なら事態は深刻だろう。が、目の前でヨダレを垂らす変態天使は女子高生だ。百合っ子であることを除けば、超天然だけど可愛い女の子。他の女子を見ながらヨダレを垂らすくらい大目に見てあげて。


「お待たせしました。ご注文の〈激甘生クリームパフェ〉になります。ごゆっくりどうぞ」


 キタキター!! 通常の三倍の量の生クリームにハチミツと黒蜜と練乳がドバドバーなパフェ!!


「いっただっきまーす!」


 お上品にご丁寧に優雅に少しずつ……だなんてしてられん! お下品に大雑把に大量にかっこんでやる。


「ちっ」


 小さく舌打ちが聞こえたので来蘭ちゃんの方を向くと、アキバを睨んだときと同じ目をしている。そして、やけ食いの如くパフェを食べ始めた。


「来蘭ちゃん?」


「どストライクの娘が居たんだけど……もれなく男性が付いていたの」


 可愛らしくスプーンをくわえる姿は画になる。

 あたしには不可能な状態だ。


「残念だねぇ。来蘭ちゃん、これで何連敗?」


「八十八だよ。ふふふ」


 数えていたよ、この子。そのうち藁人形に釘を打ち付けるかもしれん。そのせいで誰かが呪い殺されても知らん。


「ま、頑張って」


 あたしは無心にパフェをかっこむ。ビターなチョコを忘れるために。忘れなければならない。しかし、食べるたびにパフェが減っていく。当たり前なんだが受け入れがたい現実。生クリームで染まっていた器が、どんどん本来の透明な器に戻っていく……しまう。


「比良ちゃん。わたしのパフェも食べて。全部は食べきれなくて」


「本当に! ありがとー来蘭ちゃん!」


 空になった器を端に避けて、来蘭ちゃんの残したパフェを食べる。カスタードのパフェを頼んだあたり、来蘭ちゃんは彩りだけで決めたに違いない。

 生クリームよりも卵の分重くなっているカスタードのパフェを食べきるのは、見た目よりも気が滅入るのだろう。あたしには関係ないけど。


「比良ちゃん……なんだか眠くなっちゃった」


「んー。抜け出した分、終礼には顔出さないとだねー。面倒だけど仕方ない」


 来蘭ちゃんが食べ残したパフェを難なく食べ終えて立ち上がる。流石に身が重くなった気がするが、糖分摂取で身体が満足しているに違いない。


「わたしが払うよ。この間のお返し」


 あー、そういえば。あたしは来蘭ちゃんに五百円を貸したんだった。どうしても欲しい雑誌だったらしく、某大手通販では瞬く間にプレミア価額になってしまっていて、ようやく書店で見つけレジへ向かったところ財布を持ってきていないことに気付いた来蘭ちゃんの泣き顔は忘れられない。代わりにあたしが出してあげたんだった。


「ありがとー!」


 来蘭ちゃんが会計を済ましたから外へ出る。

 満足してしまって身体がうまく動かない。普段なら暴れたくて仕方ないあたしも流石に眠くなった。


「比良ちゃん。ねえ? あれ」


「うん?」


 来蘭ちゃんが何かを見つけた。眠い目を堪えて見てみると、なんだか不審な動きに見えてきた。来蘭ちゃんが確認のために歩く……が、あっという間に引き返した。その顔は青ざめている。


「だ、男性が居たよ~!」


 そりゃあ地球上に存在してるよ。居なきゃ繁栄しないっしょ? と言ったところで来蘭ちゃんの顔色が悪くなるだけだ。にしても、あの男怪しい。物陰に隠れて一点に集中している。まるで張り込みでもしているかのようだねぇ。


「早く行こ!」


「分かったよ、来蘭ちゃん」


 気にはなるが関係ない。関わったら面倒になるだろうし。あたしは面倒な事は御免だ。さっさと学校に戻ろう。

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