7-2
僕の意思とは関係なく物事は進んでいく。その流れに逆らおうとすれば、僕の心なんて簡単に砕けてしまう。ちっぽけな身体に、ちっぽけな心。僕の抗いなど、大したものじゃないのだ。
「聞いているの? 懐流」
母上が話を掛けてきている。だけど僕の耳には届かない。僕の意見に聞く耳を持たなかったくせに、どうして僕が耳を貸さないといけないのか。
「懐流は、慣れない場所に居たんだ。きっと疲れているんだろう。そっとしといてあげなさい」
父上が母上を説得している。僕のことを想っての発言だと思うだろうけど、それは違う。父上は面倒事を避けたいだけなんだ。
「それはそうだけど。懐流の気持ちを整理してあげないといけませんよ。懐流は、まだ七つなんですから」
「それならば、まずは君が落ち着きなさい。聞き手がそれじゃ、語り手は口を開かない」
両親の言い争い。互いが譲合いを知らないから、ぶつかるだけぶつかって壊れる。結論なんかない。言いたいことを言っているだけなんだから。
「降ろして。トイレに行きたくなった」
「我慢なさい。遠流路の人間がコンビニのトイレを使うなど言語道断です」
「無理」
「我慢も貴族の心構えです」
「無理……じゃ」
「え?」
「無理なんじゃ! 僕は貴族である前に、人間じゃよ! 何でもかんでも我慢は限界があるんじゃい!」
「懐流!」
僕の頬に痛みが走る。また叩かれた。反論するたびに叩かれるのがお決まりになっていた。
「貴族の人間が、なんて口の利き方をするんです! 貴族なら、口の利き方には気を付けなさい!」
「そうやって自分の理想を押し付けて! 僕は操り人形じゃないんじゃ!」
「母さん。いいじゃないか。我慢は毒だ」
父上からの許可が降りた瞬間、僕はシートベルトを外してコンビニに駆けた。後ろで爆音がしたが、トイレに行くことのほうに集中していたため、僕は事の大きさに気付いていなかった。




