7-1
「いきなり訪ねて来るなり、『息子を返せ』だなんて。まったく随分なご身分じゃねえじゃないかい」
無人島から帰ってきた翌日の朝っぱらから、懐流の両親が家を訪ねてきた。昨日、懐流が学校を休んだのが気に入らなかったらしい。すぐ迎えに来なかったくせに、随分と偉そうにガツガツと来やがって。あれが、評判がた落ちな遠流路の今か……。
「さあ、懐流。帰りますよ」
「母上! その手を離してください」
「何を言っているの!? いつまでもこんなところに居てはいけません! 高貴な身体を汚すだけです」
「僕は、まだ帰らない! 遠流路が心を変えるまで!」
「いい加減になさいな! そういうワガママをいつまでも黙って聞いているわけにはいきません!」
パチン! という音が、懐流の頬に響く。懐流の白い肌が赤くなってしまった。
「うっ……!?」
懐流の目がジワジワと潤んでいく。自分の意見をまったく聞き入れてもらえない現実が余程悔しかったんだろう。痛ければ、痛いと声をあげるもの。それをせずに涙を流して悔しがるだけというのは、七歳の子供がするには似つかわしくない気もする。けど、懐流が貴族のことを大事に思っていることも知っているから、別に意外とは思わなかった。
「叩いて納得するなら、サツなんかいらねえっての。寧ろ、根性を叩き直さなきゃなんねえのはアンタらの方じゃないのかい!」
「貴女も五月蝿いですよ。遠流路の問題にノコノコと入り込まないでくれません? ハッキリ言って迷惑です!」
懐流の母親が無理矢理に懐流の腕を引っ張った。力なく、懐流は抗えず連れ出された。
「それではこれで」
懐流の父親が軽く頭を下げて背を向けた。
あたしとは、もう話すことはないというこった。
「それと……もう一つだけ」
「あん?」
「天道家の秘宝ですが、あれは遠流路の家宝と思われます。平衡家には一切の繋がりはありません。それでは」
懐流の母親は、言うだけ言うと車に乗り込んでしまう。あたしは、車が走っていくのを黙って見ていることしかできなかった。
「なんで懐流の両親が、天道の秘宝のことを知っているんだ? 昨日の今日だぞ!? 灯可里が話すとは思えねえし、懐流が言うなんて思えねえ……」
とにかく、納得できねえっての。懐流のことも、秘宝のことも! あたしの執拗さをみせてやるっての。




