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「比良!」
「比良ちゃん!」
「比良姉!」
門の外であたしを呼ぶ声。その声には必死さが混じっている。それもそうか。あたしの背後にはチェーンソーを振り回しながら鬼の形相で駆けてくる死神が居るのだから。
「平衡の血を垂れ流させてやるぞ!」
「正気かい! 目と鼻の先にはサツが構えてるんだぜい!?」
「警察風情、アッシが切り刻んでやるぞ!!」
目が血走ってる。もう正常な判断はできないようだよ。一人の女性を死神に豹変させてしまう平衡の血には呆れっちまうねぇ。
「このままじゃ埒が明かない。しゃーない……ちょいとぐらい大目に見てくれよ、校長!」
地面を蹴りあげ、空高く舞い上がる。空中で落下地点を見定め、呼吸を整える。そして、右拳に力を込めて気合いを入れる。もう手加減はできないっての!
「エンド……ナックル!」
拳が地面に接触した瞬間、地面に亀裂が入り、その場に立っていた女が体勢を崩してチェーンソーを落とす。チェーンソーは亀裂に入り込み、空しく地面を抉っていた。ふっ……よっしゃ。あたしの勝ち!
「ごんのー!!」
執念深いねえ。地を張ってるよ。そこまでの執念をほかに活かせないもんかねぇ。
「か、確保ぉー!」
門の外で待機していたサツ連中が一斉に女を取り押さえた。チェーンソーも動きを止められたよ。消防車による放水によって教室の炎は消えていく。けど、火事があった事実は消えない。机や椅子は黒焦げになってしまったし、被害者も出てしまってるし。
「君からも詳しく話を聞かせてもらうから」
「へーい。緩く頼むよ、サツのあんちゃん」
あたしは、言われるがままパトカーに乗せられた。
事情聴取なんかその場で済ませばいいのにねぇ。
あーあ、さっさと帰りたいっての。




