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あたし達は、歩いて二十分の学校へと来た。懐琉も一緒だ。本人たっての希望でね。説得する時間も惜しかったし。それにしても、校門の前には救急車、消防車にパトカーと。揃いも揃ってただ事じゃなさそうだね。
「ねえ! あたしら、ここの生徒なんだけど!」
「今日は元々休校だろう。私服で高校に登校かい? 日曜日に。野次馬は帰った帰った!」
サツのヤロウ! 星をあげたくて仕方ないのはわかるが、ちったあ事情話せよ。
「忘れ物を取りに来たんです。どうしても今日じゃないと駄目なんですが……」
ナイスだ二戸。顔面値は高いらしいお前が頼み込めば効果覿面だぜい!
「明日もこの調子では休校だ。兎に角、部外者は立ち入り禁止だよ」
「あの~、何があったんですか?」
来蘭ちゃんの萌え萌えボイスが炸裂したああ!
どんな野郎でも瞬殺してしまう魅惑の声だ!
これなら流石のサツも口を割るだろう。
「……この学校の敷地内で私服の生徒が倒れていると連絡があったんだ。通報してきたのは、ここの校長だ。……その校長も校内で倒れていたが」
「倒れていたのは何人だよ?」
「生徒と教師を合わせて五十人程だ。休みでも校庭やら開放しているみたいだったから不思議ではない」
「……で、消防車がいる意味が分からん。火事なら原因は一酸化炭酸中毒だろうけど、水を撒いた様子はないから火事じゃねえだろ?」
「妙に察しが良いが?」
「あたしを怪しむかい。悪いけど、あたしには校長に危害を加える動機なんかねえ。大体誰が好き好んで、休みの学校に来るんだあ? あ!」
疑われるのはシャクだし面倒だ。あたしの言いたいことを言ってずらかるか。
「この態勢は妙だっての。爆発処理班だってチラホラ居やがるし。……爆弾、か?」
「ああそうだ。この学校の敷地内に爆発物を仕掛けたと、匿名の電話があったんだ。そのあとに校長からの通報があり、駆け付けてみたらご覧の有り様だ」
「校長も倒れていたってことは、校舎には簡単に入れたんだな。てーこった、あとは爆発物のみってこったねぇ」
「なかなかに鋭い観察力だ。余程に優秀な生徒なんだな」
「あたしが? お笑い草だよ。あたしが優秀なら、教師なんざ不要になっちまうっての」
あたしのご機嫌取りのつもりだったんだろうが甘かったね。そんなもんじゃ、あたしのヨイショは務まんぜ。さーて、二戸の血相が変わっていた原因は分かったし、サツの邪魔になると五月蝿いからズラかるか。
「比良姉、あれ!?」
懐琉が校舎に向かって指を差している。
あたしがその指の方向に視線をやると、不規則に色味を変えるものが見えた。
「サツのあんちゃんよ。あそこに見えんの……火事じゃねえか」
「なっ!? 出火などさっきまで無かった筈なのに」
二階のあそこは……ああ、あたしらの教室だ。
教室で火事とはね。放火以外のなにものでもない。
教室に向かえば、放火犯と一戦交えれるってか。
「比良。どうしたんだ? 喜んで」
認めたくはないが、あたしの幼なじみだけある。
あたしの表情を見て、喜んでいると見抜いたよ。
「二戸。来蘭ちゃんと懐琉を頼んだっての!」
「あっ!? ま、待ちなさい!」
消防車を入れようと門を開けたところを見逃しはしなかった。火事と消防車に現場が意識を向けている隙をついて猛ダッシュ! もう、あたしは止められないっての!




